スーパーコンピューターに帰ってきた
CRAY Inc.
このRed Stormは、CRAY Inc.が日本で説明会を開催しており、幸いにも筆者はこれに参加していたので、以後はこの時の資料をベースに説明したい。
まず最初にCRAY Inc.の話をしよう。CRIがCRAY Y-MPまで開発しつつも資金繰りが苦しくなり、1996年にSGIに買収された話は連載第279回で書いたとおり。
ところが2000年、SGIはカナダのTera Computer Co.にCRI部門を丸ごと売却してしまった。ちなみに売却額は明確にされていないが、SGIが買収した際の7億5200万ドルより非常に少ない金額だったらしい。
理由もまた明確にされていないが、この後SGIはItaniumベースのシステムを市場に投入していることから、自前でプロセッサーから作るのではなく、インテルのプロセッサーを利用してシステムを作る方向に舵を切った結果として、CRI部門が丸ごと不要になったのだろう。
一方このCRI部門を買収したTera Computer Co.は、独自のTera MTA(後にCray MTAと改称)と呼ばれるアーキテクチャーをベースにシステムを提供していた。そのTera Computerは買収直後に社名をCRAY Inc.に改称して、改めてスーパーコンピュータービジネスに参入することになる。
Opteronをベースとした
超並列マシンを開発
さてそのCRAYだが、2003年の時点ではX1と呼ばれるマシンを出荷していたが、Red Storm向けにはまったく異なるマシンを開発することになる。
CRAYはSGIの時代にT3D/T3Eと呼ばれるマシンを開発していたが、これはDECのEV4(T3D)/EV56(T3E)を利用したMPP構成のマシンである。
またTera Computerが開発していたMTAアーキテクチャーは、128スレッドという広大なSMT(Simultaneous Multithreading:同時マルチスレッディング)構成のプロセッサーをさらに多数(MTA-2だと最大256個)並べ、それを3Dトーラス構造でつなぐという、SMT+MPPという非常にユニークなものである。
これらの開発により、実はCRAY Inc.はMPPに関して一定の経験を積んでいた。それもあり、Red Stormでは2004年時点で最速と考えられた、AMDのOpteronをベースとしたMPPマシンの構成になった。
Red Stormの設計目標は40TFLOPSである。これを実現するために2GHzのOpteronを1万368個(後に1万880個に増加)集積する構造を取った。これを108個のキャビネットに収める形だ。
システム性能としては、ASCI Redの7倍のアプリケーション性能と、ASCI Red向けアプリケーションを連続して50時間動かすことなどが挙げられている。
上の画像にあるBlackは一般に利用できるパーティション、Redは機密エリア(核兵器関連シミュレーションなどを主に実行)のパーティションで、比率は動的に変化させることができる。これにあわせてストレージなどは別々に、システムの両端に配される。
このRed Stormの肝は、唯一新規に作成するインターコネクトであるが、構造としては下図のような3次元メッシュ構造である。
→次のページヘ続く (CRAY独自のインターコネクトを搭載)
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