悩み抜いて生まれた「コワーキングスペースで呑みながらトーク」
呑みながら勉強?北九州に移って花開いた藤崎スタイル
2014年12月15日 09時00分更新
東京にいるときは誰かがやってくれると思っていた
呑みながら参加者同士がきちんとコミュニケーションをとり、仲良くなった人たちは以降、勉強会を手伝ってくれるようになったという。こうした仲間と共に、藤崎さんはさまざまなチャレンジを続ける。「8月の勉強会では秘密基地で知り合ったパティシエにガチのケーキを作ってもらった。セキュリティの勉強の合間に、こういうスイーツを楽しんだ」(藤崎さん)。
最近では、オープンデータやセンサーデバイス、IoTなども取り上げているし、ARを使った地図アプリで町おこしにもチャレンジしている。とにかく雑食だ。「どんなにクラウドで安くなるっていっても、サーバーって実感がないし、商売にはつながらない。だから、クラウドにつながる入り口も考える必要がある。実際、ものづくりまでいっちゃってもいいのかなと思う」(藤崎さん)とのことで、サービスをトータルで作るところまでテーマに据えていきたいという。
ここまで聞けばわかるとおり、藤崎さんは、とにかくアイデアマンだ。そしてこうした資質は、北九州という、ある意味孤軍奮闘を余儀なくされる場所だからこそ、花開いたように思えるのだ。「東京にいるときはこんなことをやると思わなかったし、誰かがやるだろうと思っていた。でも、北九州に来て、自分がやるしかないと状況に追い込まれ、第0回以降悩んだおかげで、自分のやりたいことが具体的になった」と藤崎さんは語る。
北九州のエンジニア同士でうまい酒が飲みたい!
硬軟を合わせ持つような、参加して楽しいイベントを作り、興味を持てるフックをいろいろ用意する。こうして、どちらかというと真面目な北九州のエンジニアをイベントに引き出し、横のつながりを作ってもらう。「組織内の縦のラインしかないと、自分が悪いのではないかと思い悩む人もいる。でもJAWS-UGのように横のラインができると、息抜きもできるし、視野も広がる。上の人の意見を絶対のものと捉えないで、きちんと受け流す余裕ができる。こうすればエンジニアはもっと生きやすくなるんじゃないかな」(藤崎さん)。
とはいえ、地方のコミュニティという観点では、現状は藤崎さんの目指す状況にはほど遠い。藤崎さんは、「日本でコミュニティに参加するエンジニアは10人に1人と言われているが、それはあくまで都会の数字。地方では1000人に1人、いや1万人に1人かもしれない」と危惧する。やはり出席は仕事の延長で平日に来る割合が高く、土日をつぶしてまで自主的に来る層はまだまだ多くないという。特に北九州は新日鉄系や安川情報システムなど何千人・何万人のシステムを手がける大手SIerのエンジニアがメインだが、こういう人たちはなかなか引っ張り出せていないという。
しかし、特効薬はない。自身でも勉強しながら、参加の興味を引くような楽しいイベントをひたすら続けていくのが藤崎さんの活動だ。「いろんなネタを肴にして、北九州のエンジニア同士でうまい酒が飲みたい。楽しんだものが勝ちですよ」とコミュニティ活動の理想を語る。
藤崎さんにとってのコミュニティは、あくまでエンジニア同士のつながり。一過性のつきあいだけではなく、継続的に信頼感を醸成することで、それは仕事につながるかもしれない。もちろん、つながらないかもしれないが、それはそれでいい。「この人との仕事だったら、失敗してもいいやと思える信頼関係がコミュニティの中で、できればいいなと思っています」(藤崎さん)。
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