このページの本文へ

前へ 1 2 次へ

日本のITを変える「AWS侍」に聞く第8回

悩み抜いて生まれた「コワーキングスペースで呑みながらトーク」

呑みながら勉強?北九州に移って花開いた藤崎スタイル

2014年12月15日 09時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp 写真●曽根田元

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

北九州のJAWS-UGを仕掛ける藤崎優さんは、日本のITの集積地である東京から北九州に移り、まさに孤軍奮闘で勉強会を立ち上げてきた。「呑みながら勉強」「楽しければOKな雑食性」「ケーキも楽しめるイベント」などさまざまなアイデアが生まれた背景を聞いた。

本連載は、日本のITを変えようとしているAWSのユーザーコミュニティ「JAWS-UG」のメンバーやAWS関係者に、自身の経験やクラウドビジネスへの目覚めを聞き、新しいエンジニア像を描いていきます。連載内では、AWSの普及に尽力した個人に送られる「AWS SAMURAI」という認定制度にちなみ、基本侍の衣装に身を包み、取材に臨んでもらっています。過去の記事目次はこちらになります。

両親の病気を機に東京から北九州に

 生まれも育ちも千葉県という藤崎さんのビジネスプロフィールは、大手SIerの業務SEからスタートする。2003年頃にWebシステム系の開発をすべく転職し、以降はWeb系のスタートアップの立ち上げに何社か携わることになる。「大学の時はCでしたが、仕事をし始めて6年くらいはVisual Basic。スタートアップの時期は、ASP(Active Server Pages)やOSSでシステムを手がけていました」(藤崎氏)。

JAWS-UG 北九州を仕掛ける藤崎優さん

 AWSとの出会いは、グリーやDeNAなどのソーシャルゲームが流行した時。藤崎氏は、「2010年頃、ソーシャルゲームを作る時、使い始めたのが最初。今まで何ヶ月もかかっていたインフラの構築がボタン1つでできる。普通にハードウェアを導入したら1000万円くらいするものが、負荷分散までできて、月10万円で使えるのに驚いた」と振り返る。しかし、初めてのクラウドはいろいろとまどいも多かったこともあり、JAWS-UGに参加する。とはいえ、当時は1人の参加者に過ぎず、自ら話すことも少なく、情報収集がメインだったという。

 転機が訪れたのは、2012年。両親が体を壊したのをきっかけに、両親がいた北九州に移住したのだ。「祖母も100歳を超えているし、両親の歳を考えたら、近くにいた方がよいと考えた。福岡市はITの面では発展しているので、行けばなんとかなるかなと思った」とのことで、北九州の地場SIerであるインフォメックスに転職。介護業務向けのプロダクトの開発やAWSを使った新しいビジネスを展開すべく、日々奔走している毎日だという。

0回目の勉強会の参加者は次から来なくなった

 とはいえ、オンプレミス前提で受託開発を続けてきた中堅SIerでいきなりクラウドビジネスを立ち上げるのは、簡単なことではない。AWSのアソシエーツも社内には藤崎さんを除くと1人しかおらず、新規ビジネスへの投資もなかなか理解が得られない。こうした経緯もあり、藤崎さんはJAWS-UG北九州の立ち上げに携わることになる。「きっかけは2013年の6月に福岡で行なわれたJAWS DAYSの打ち上げ。ADSJ(当時)の堀内さんに講演を依頼したら、北九州でもJAWS-UGを立ち上げてくださいとおねがいされ、やることになっちゃたんです」(藤崎さん)。

 こうして2013年の8月2日に第0回となるJAWS-UG北九州の勉強会が開催された。インフォメックス社内のホールで、ADSJの堀内さん、cloudpackの吉田さん、サーバーワークスの小室さんなど豪華な登壇者を集めたイベントだったが、背広組を中心とした参加者には“刺さらなかった”という。「第0回は社内の知り合いとかに来てもらったんですが、クラウドで儲ける話とか、小室さんの面白系の話とか、眉をひそめられた。普段こういう勉強会になかなか出てこない人たちを無理矢理集めても、難しいぞと思いました」(藤崎さん)。実際、この第0回の勉強会の参加者は、以降の勉強会にも参加しておらず、藤崎さんはいきなり壁に直面する。

「勉強会になかなか出てこない人たちを無理矢理集めても、難しいぞと思いました」

 豪華な登壇者を集めつつ、ある意味「失敗に終わった」ともいえる第0回。藤崎さんは次の活動になかなか移れなかったという。「次の活動どうしようと、3ヶ月間本当に悩んだ」(藤崎さん)。そんな中、福岡で開催された勉強会に参加した藤崎さんは、初心者向けのイベントを作ろうと思い立つ。「Kinesisとか、Hadoopの内容は正直自分にとっても難しすぎた。だから、まずはハンズオンで自らも勉強する立場になれる勉強会を11月から始めることにした」(藤崎さん)。そして、毎月なんかしらの勉強会をやろうと決め、実際に半年で5回もの勉強会を開催することになる。

やり続けて5回目の勉強会でようやく達成感

 勉強会を盛り上げるために、藤崎さんはさまざまな試行錯誤を行なった。まず取り組んだのは会場。「会社のセミナースペースはどうしても堅苦しい。だから、2回目以降はコワーキングスペースを使うようになった。4回目以降は、18時開始の乾杯から始める勉強会をやってみることにした」と藤崎さんは語る。セミナー形式もやめ、隣の人とまずは呑んで仲良くなりながら、いっしょに勉強する場を提供することにした。

「18時開始の乾杯から始める勉強会をやってみることにしました」

 コワーキングスペースを使うのは、堅苦しいイメージを払拭するだけではなく、人脈をミックスさせる意図もあるという。「最近、使わせてもらっている『秘密基地』という会場のコワーキングスペースは、IT系の人たちが1・2割しかいない。残りは料理作っている人、建築の人、漁師さん。そういう人たちと話をしながらイベントを作ろうと思った」と語る。藤崎さんが考えていた理想のイベントと、コワーキングスペースのコンセプトがマッチしていたというわけだ。

 人と人の垣根を取り去る会場。普段つきあえない人たちとの交流を意図した場作り。ベンダーの壁にこだわらず、エンジニアとして興味をそそるテーマ。こうした工夫を重ねることで、勉強会の参加者は徐々に増えていった。しかも単なる呑み会では終わらず、きちんと勉強会として機能しているのが興味深い。「参加者が一気に増えるわけではない。でも、友だちに紹介して、次の会に1人ずつ増えるといった感じ」(藤崎さん)。

 特に5回目となる2014年3月の勉強会は、大きな達成感が生まれたものになったという。この回では、Microsoft Azureのグループと共催し、AzureとAWSで同じことをやった場合の比較をやってみたという。「人数的にはたいしたことなかったけど、隣の人とワイワイやりながらも、勉強ができた。クラウドの話を遅くまで語り合えるという、JAWS-UG北九州ならではの勉強会の形ができた感じ」と藤崎さんは満足そうに語る。

(次ページ、東京にいるときは誰かがやってくれると思っていた)


 

前へ 1 2 次へ

この連載の記事