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myrmecoleonの「グラフで見るニコニコ動画」 第38回

じつは再生・マイリス共に多い、カラオケ向け字幕付き動画

ニコ動をツールとして使う「ニコニコカラオケDB」の世界

2014年11月20日 18時00分更新

文● myrmecoleon

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動画の大半はボカロ曲でアニソン・エロゲ・東方アレンジも人気
一方で最近は変化も

 「ニコニコカラオケDB」と共によくついている年毎のタグを調べるとグラフ2のようになります。

 一見して分かるとおり、ボカロ曲の「ボカロカラオケDB」の投稿が多いです。2007年はまだ「ゲーム」や「アニメ」より少なく、2008年は「東方ニコカラ」に負けていますが、2009年以降はボカロ曲のカラオケ動画が最も多いようです。

 「ニコニコカラオケDB」はカテゴリタグではないので、通常いずれかのカテゴリタグを付けて投稿されます。基本的には曲が関連するカテゴリか「音楽」ですが、初期は「音楽」カテゴリが多かったものの、ボカロ曲のカラオケ動画が増えた2010年以降は「VOCALOID」カテゴリでの投稿が多いようです。

 「ボカロカラオケDB」関連では、デュエット曲用の「ボカロデュエットカラオケDB」や原曲のアレンジ版を使った「ボカロ二次派生曲カラオケDB」などのタグもよく使われています。ちなみにこうしたボカロのカラオケ動画は初期は「ミクカラ」のタグで投稿されていましたが、このタグは現在ではあまり残っていません。

 またボカロPの名前を入れた「40㍍Pカラオケ動画リンク」「自然の敵Pカラオケ動画リンク」のようなタグもよく使われています。「ねじ式(火曜日P)」のようにP名をそのままカラオケ動画に入れた動画もありますが、ボカロP本人の投稿に誤解されるので代わりにこうしたタグを使っているのでしょう。これで見ると最近は「seleP」「ギガP」「ねじ式(火曜日P)」などの曲のカラオケ動画がよく投稿されているようです

 東方については「ニコニコカラオケDB」タグで投稿されていない動画が多いので後述。またアニメソングの「アニソンカラオケDB」やエロゲソングの「エロゲカラオケDB」も初期からよく投稿されているほか、2011年以降はUTAU曲の「UTAUカラオケDB」も投稿が多いです。

 平均投稿数が増加した2010年頃からは「よっかったらの人」など投稿数の多いユーザーの通称のタグが出てきています。カラオケ動画はあまりオリジナリティーを要求されないジャンルですが、この頃からこうした動画でも投稿者が意識されるようになっているようです。

 ちなみに「よっかったらの人」こと「らふどん」氏は、実はじん・ryo・ハチなどをおさえて、投稿した「VOCALOID」タグの動画の再生数・マイリスト登録数の合計がそれぞれ最も高いユーザーだったりもします(2013年11月時点)。

 他に面白いタグとしてはHD画質のカラオケ動画の「ニコカラHD」のタグが毎年投稿数を増やしています。カラオケ動画も高画質化の波が押し寄せているようです。

 ほか「JOYSOUND配信中」タグ(現時点で付いているタグなので配信時期と関係がない点注意)や、難易度の高い歌や高速化されたカラオケ動画およびそもそも歌じゃないものによく付けられる「歌ってみろ」タグなどもよく付けられているタグです。

2009年3月から2010年2月までの集計期間でよく視聴された「ボカロカラオケDB」動画のランキング動画。ちょうどこの後に「ボカロカラオケDB」動画が急増するため、その直前の時期の雰囲気とどんな曲が歌われていたかを知ることができる貴重な動画。残念ながら以降はこうしたランキング動画は作られていない。

各年の「ニコニコカラオケDB」タグの動画について多かったタグを順に並べたもの。システム関連のタグなど一部は除外。2014年は11月はじめまで。カテゴリタグは緑、楽曲のグループに関連のあるタグは青、曲のアーティストに関するタグは赤、投稿者の通称等のタグは黄色、その他のタグは灰色に塗ってある

 グラフ3では、カラオケ動画にされる楽曲の傾向の変化をグラフにしてみました。

 グラフは「ボカロカラオケDB」「東方ニコカラ」「アニメカラオケDB」「エロゲカラオケDB」の月別の投稿動画数について、「ニコニコカラオケDB」「ニコカラ」および代表的なカラオケ動画のタグのいずれかが付いている動画の月別の投稿数に対する比率の推移を示したものです。

 それぞれボカロ曲・東方関連曲・アニメソング・エロゲ曲に対応したタグで、その頃のニコ厨がカラオケなどで歌いたいと思っていた曲はどの系統なのかがある程度反映しているものと思われます。

 2007年頃はまだどのタグも付いていない動画が多く参考程度ですが、この頃はエロゲ曲のカラオケ動画(「エロゲカラオケDB」)が比較的多く、「きしめん」などに代表される当時のエロゲ曲人気・電波曲人気の傾向が伺えます。いつの頃からかエロゲーにはOPやEDに歌が入るのが通例になっていましたが、そういった曲はよほどメジャーにならないとあまりカラオケで配信されなかったため、カラオケ動画の需要があったのでしょう。

 こうしたエロゲ曲のカラオケ動画は2010年頃までは全体の5%から1割ほどを占めていましたが、以降はボカロ曲人気もあり比率を落とし、さらに実数としても近年投稿が減っており、現在はほとんど目立たなくなっています。

 「東方ニコカラ」は東方アレンジ曲のカラオケ動画、および「東方手書き劇場」などの関係で映像に東方シリーズ関連のイラストを使ったその他の曲のカラオケ動画にも付けられるタグです。

 カラオケ動画の投稿が増えるのに従って急激に投稿数を増やし、特に2008年の5~6月と2009年の3月はカラオケ動画全体の4割・5割を占めていました。これらの時期はちょうど「博霊神社例大祭」の開催前後のため、このとき発表された楽曲のカラオケ動画などが投稿されたものでしょう。

 ボカロ曲の投稿増加で見づらくなっていますが2010年以降もあまり投稿数は減っておらず、例大祭や東方紅楼夢の開催前後などに増加する傾向はその後も続いています。2013年から2014年はやや減り気味でしたが、2014年9月・10月と投稿が多く復活の傾向が見られます。

 ボカロ曲のカラオケ動画(「ボカロカラオケDB」)の比率は初音ミク発売以降じわじわ増加し続け、歌ってみたでボカロ曲が盛んに歌われるようになる2009年頃には全体の3割ほどを占めていました。これが2010年になって急激に投稿が増え、下半期に入る頃にはニコ動のカラオケ動画の過半数を占めるに至ります。グラフ1でこの時期に動画数が急増しているのがこうしたボカロカラオケDB動画急増の影響であるのは言うまでもありません。

 この後もカラオケ動画内のボカロ曲の比率は増し、2012年の終わり頃には8割まで達しますが、この少し前からカラオケ動画自体の投稿が減り始めており、時間差で「ボカロカラオケDB」動画の割合は落ち、すでに全体の半数を切っています(最近の動画ではタグが付いていないだけの可能性も高いため、実際の比率はもう少し高いと思います)。

 以前に歌ってみたのボカロ曲離れの話を紹介しましたが、カラオケ動画でも「ニコニコカラオケDB=ボカロカラオケDB」的な傾向は変わりつつあるようです。

 代わって比率が上がっているのがアニソン関係。「アニソンカラオケDB」タグの動画は実数でも2007年以来の増加が続いており、2013年以降は「東方ニコカラ」よりも頻繁に投稿されて「ボカロカラオケDB」に次ぐ投稿の規模となっています。母数となるカラオケ動画全体の投稿数が減っている影響もあって、「アニソンカラオケDB」タグは投稿されるカラオケ動画の1割弱を占めるようになりました。まだまだボカロとは大きく差があるものの目立つようになってきています。

 このほかグラフでは省略しましたが、「UTAUカラオケDB」「ニコニコインディーズカラオケDB」「メドレーカラオケDB」「艦これカラオケDB」「音MADカラオケDB」などのタグでも投稿がされており、カラオケ動画の作られる楽曲も多様化してきている傾向が伺えます。

2014年11月上旬時点で視聴可能なカラオケ動画の主要な4タグの月別動画について、4タグおよび「ニコニコカラオケDB」「ニコカラ」のいずれかのついた同様の動画の月別投稿数との比率をグラフにしたもの。「ボカロカラオケDB」の比率の増加と減少の傾向が分かる

「ニコニコカラオケDB」は、10代のカラオケ人気曲が
ボカロで埋め尽くされる状況を作り出した要因の1つかも!?

 「ニコニコカラオケDB」の動画は当初からカラオケなどで使用することを前提に作られている点で特殊な動画群と言えます。「歌」というのは聞くだけではなく自分たちで歌うことももともと1つの消費のかたちで、「ニコニコカラオケDB」は「歌ってみた」とは別のかたちでその需要に答えた動画ジャンルと言えるでしょう。

 カラオケ配信で対応しないのなら自分たちですればいい、という発想は非常にDIY的で、そうした動きと相補的にニコニコカラオケOFFなどが開催され、やがてこの数年でボカロ曲や東方アレンジ曲などのカラオケ配信が拡大していきました。

 そう考えると、こうした「ニコニコカラオケDB」は10代が歌うカラオケの人気曲の上位をボカロ曲が埋め尽くすような現状を導いた1つのきっかけだったのかもしれません。

 そもそもカラオケではカラオケボックスの登場以降、必ず歌詞が流れる画面があり、音楽の消費のかたちのなかでも特に映像と不可分なものです。ニコニコ動画のような動画投稿サイトは映像と音声をパッケージにしたフォーマットを取っており、そのことがいろんな面で以降の音楽視聴のかたちに影響を与えていますが、最初から映像と音声が必須なカラオケは相性が良かったと言えます。

 もちろん権利的な問題があり、個人がそのような動画を投稿するのは問題がありましたが(実際削除もある)、その点ニコ動内でVOCALOIDによるオリジナル楽曲が生まれ、ブームとなったことは、歌ってみたや踊ってみたなどと同様にこうしたカラオケ動画にとっても福音だったのでしょう。

 一方で最近は歌ってみたにしろカラオケ動画にしろ、ボカロ曲への極端な注目が薄れ、今年の「Let it Go」「ようかい体操第一」ブームのように少しずつアニソンなどが目立つようになってきました。

 「Let it Go」は映画公開前にYouTubeにメインとなる映像を公開、各国の人々による歌ってみた的な動画を許容した点が大ヒットに大きく貢献したと思います。必ずしも明確に許諾されたものではないものの、少しずつそうしたCGM活動を巻き込んだやり方は普及しており、ニコ動の音楽原盤の利用許諾のように、権利的な問題を避ける筋道は増えてきました。

 こうした点を考える上でも「ニコニコカラオケDB」動画とその周辺の利用についてみていくのは有益かもしれません。

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