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もはや数少ないカセット機器、それでもニーズはある

新ダブルカセットでテープ聴き比べ アナログは本当にいい?

2014年09月21日 12時00分更新

文● 四本淑三

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それでもカセットには長生きしてほしい

 では、決して音がいいわけでもないのに、いまだコンパクトカセットは使われている理由は何でしょうか。コンパクトカセットの置き換えを狙い、1992年に販売が開始されたMini Disc、通称「MD」は、2013年にすべての録音・再生装置が生産終了しています。MDは日本以外ではほとんど普及しませんでした。

 コンパクトカセットは、テープの掛け替えが面倒だったオープンリールテープを扱いやすくするため、オランダのフィリップスが1962年に開発したものです。

 それから50年以上経過した現在も、全世界で使われている理由は、フィリップスが基本特許を無償公開したこと、そして、ある程度ラフな作りのメディアや再生装置でも、実用に足りるところでしょう。

 たとえば、演歌の聖地と言われる、東京は中野ブロードウェイ2Fの中野名曲堂を覗いてみると、新曲がCDとカセットで売られています。カラオケで演歌を嗜む方々には、カセットの方が使いやすいのだとか。

 逆にとんがった方面では、コンパクトカセット専門のレーベルも存在します。こうした方々には、昨今のハイレゾ音源よりも優先すべきことがあるわけです。※2

 ただ、かつてはカセットでしかリリースできない事情もありました。CD-RやMP3など存在しない80年代初頭には、少量生産が可能でリスクが低いカセットは、インディーズにとっては良いメディアでした。私自身も高校時代にカセットテープで音源を販売した経験があり、カセットデッキには随分とお世話になりました。

 オーディオコンポとしてのカセットデッキは、すでにTEACが製造するのみですが、ラジカセのような製品は、まだいくつもあります。いずれメディアとして完全に消える日も来るのでしょうが、できるだけ長生きしてほしいと思っています。

※2 たとえばカセットでリリースされたアフリカ諸国の音源を、カセットで再発するアメリカのレーベル「Awesome Tapes from Africa」。



著者紹介――四本 淑三(よつもと としみ)

 1963年生れ。フリーライター。武蔵野美術大学デザイン情報学科特別講師。新しい音楽は新しい技術が連れてくるという信条のもと、テクノロジーと音楽の関係をフォロー。趣味は自転車とウクレレとエスプレッソ

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