何とこのご時世にカセットデッキの新製品が発売されました。メーカーはテープデッキの老舗、TEAC。オートリバースのダブルカセット仕様で製品名は「W-890RmkII」と言います。お値段は直販で4万2984円。
「おお、お前まだ生きていたのか!」と、中学の卒業式以来会っていない同級生の消息を知ったときのようなテンションで、私はこの物件の登場を歓迎しております。
我々昭和世代には、こうしたコンパクトカセット関連製品に対し、一定のノスタルジーをもって語る権利が自動的に付与されていると信じます。そして我々旧世代は、ついうっかり「新製品が出るということはしっかりとしたニーズがあるということであり、すなわち俺たちの時代もまだ終わっていないのだ!」という怪気炎モードに入りがちです。
が、残念ながらそれは違います。おそらく平成世代は、我々が何を言っているのか、さっぱりわからないでしょう。MDやiPodで育った彼らは、幸か不幸かテープのヒスノイズやワウフラッターや速度偏差を知りません。
そして事実としても、現在生産されている単体のカセットデッキは、業務用を含めて数えるほどしか存在しません。我々の時代も、すでに風前の灯火なわけです。
しかし、奇跡的にカセットテープはまだ製品として存在しており、そんな絶滅危惧種から新たな子供が生まれた。それが、この度の新製品なわけです。
このW-890RmkIIがどんな製品なのかを見ていきながら、現在のカセットテープ事情と、デジタルオーディオとの差をあらためて確かめていこうと思います。
(次ページでは、「オートリバースのダブルカセットとは」)
