7月17日、カスペルスキーは小規模企業向けエントリ製品「カスペルスキー スモールオフィス セキュリティ」を発売開始した。価格や機能面で法人向け製品の採用に踏み切れなかった小規模企業に対し、個人向けウイルス対策ソフトとファイルサーバーのライセンスなどをバンドルした低価格パッケージを提供する。
個人向け製品から少しステップアップしたSOHO向け対策
「カスペルスキー スモールオフィス セキュリティ」は、小規模企業向けのウイルス対策製品だ。PC5台+モバイル5台版、PC5台+モバイル5台+ファイルサーバー1台版、PC10台+モバイル10台+ファイルサーバー1台版の3種類を提供する。
希望小売価格は、「スモールオフィス セキュリティ」のPC5台+モバイル5台版が1万2800円、PC5台+モバイル5台+ファイルサーバー1台版が2万4800円、PC10台+モバイル10台+ファイルサーバー1台版が3万4800円(それぞれ税別)。カスペルスキーのオンラインショップでは7月17日から販売開始。量販店などの店頭販売は、POSA形態で8月から開始予定だ。
同社は、2010年にSOHO向け製品「Kaspersky Small Office Security」を販売開始したが、売上が芳しくなかっため、2012年に出荷停止を決断した。その後、戦略を見直すために、中小企業を対象にアンケート調査を実施。その結果、78%がもっと導入しやすく使い勝手のよい製品を希望したという。
「SOHOなどの小規模企業は、総務の担当者が家電量販店に来て個人向けウイルス対策製品を購入し、それでセキュリティ対策は終わりというところも少なくない」。カスペルスキー 代表取締役社長 川合林太郎氏は、そう述べる。高額で機能の多い法人向け製品からスタートするのではなく、個人向け製品から離れ過ぎない使用感で慣れていく。その最初の一歩として、同ソリューションを提案する。
、同製品は、PCやモバイル向けウイルス対策機能のほか、ファイルサーバー向け保護機能、簡易管理機能、セキュアブラウザやセキュリティキーボードで通信内容を保護する「ネット決済保護」機能、ファイルを入れれば自動で暗号化する「暗号化コンテナ」などを搭載する。
「スモール オフィス セキュリティは、詳しくない人でも簡単に導入、運用できるのが特徴。LinuxサーバーやLinux/Mac OSの対応、複数年ライセンス販売など、より豊富な機能やサポートを希望する場合は、法人向け製品「Kaspersky Endpoint Security for Business」シリーズを推奨する」(カスペルスキー マーケティング本部 松岡正人氏)。
ハッカーの狩り場と化した日本、4割はウイルス対策を未導入
カスペルスキーでは、2013年6月の2週間、同社製品のユーザーがドライブバイダウンロード攻撃によってマルウェアをダウンロードした件数を調査した。その結果、合計6445件のうちトップとなる990件が日本ユーザーであることが判明した。「日本を標的とした攻撃が増えていることを示す顕著な例だ」(川合氏)。
もう1つ、川合氏はIPAの2013年度「情報セキュリティの脅威に対する意識調査」を取り上げ、セキュリティソフトを導入しているユーザーが2012年の70.7%から56.7%に下がっている事実を紹介。約4割の日本人がマルウェア感染のリスクを抱えていると、警鐘を鳴らす。
「2013年に韓国の銀行などを襲ったサイバー攻撃同時多発事件で、弊社アナリストは同国がハッカーの遊び場になっていると評した。今の日本は、もはや遊び場ではない。狩り場だ」。そう断言する川合氏は、「ウイルス対策製品を保険や御守りに例えることがあるが、保険や御守りを購入しても事故に遭う確率は変わらない。しかし、ウイルス対策製品はインストールしているかどうかで感染率が圧倒的に変わってくる」と、ウイルス対策の重要性を改めて強調した。
同社は2013年4月に九州営業所を開設し、九州地区で売り上げ10倍を達成。今年4月には関西地区の開拓をめざし、西日本営業所を立ち上げている。また、この1年でパートナー企業は89%増の300社以上となり、販売代理店だけでなく、同社製品を採用するクラウドサービス事業者も増えるなど、事業は好調に推移している。
8月以降には、VMware vSphere 5.5対応の仮想環境向け製品「KS for Virtualization 3.0」を販売開始するほか、2015年第1四半期(1~3月)には法人向け製品の最新版「Kaspersky Endpoint Security 10 for Windows SP1」など、今後もさまざまな製品を投入予定だ。
「今後も守る技術に特化しながら、弊社理念の”Save the World ”実現を目指して邁進する」(川合氏)。