第1世代の14nm FinFETプロセス
「14nm XM」
ではなぜSamusungと提携することになったかという話をするために、まずは14nm XMの話を少し解説したい。GLOBALFOUNDRIESは2012年9月、14nm FinFETプロセスである14XM(eXtreme Mobile)を発表する。当時はまだ28nmの量産に苦闘していた時期であるが、それもあってか2014年に14XMを導入することをアピールした。
この14XM、下のプレゼンテーション資料にもあるように、基本的には20nm LPMプロセスを下敷きとしたものである。
その20nm LPMは自社の28nm、あるいは他社の20nmと比べても優秀というふれこみであり、これを14nm FinFETと組み合わせることで優れたプロセスになるという話であった。
肝心のFinFETの性能は、同じ電圧であれば20~55%向上し、逆に同じ動作周波数であれば消費電力を40~60%削減できるとしていた。
別のデータもある。下の画像は、2013年に行なわれたSemicon Westで前CEOのAjit Manocha氏が行ったの基調講演のプレゼンテーションに含まれているものだが、GLOBALFOUNDRIESの28nmプロセスと20LPM、それと14XMを比較したものである。
同じ消費電力であれば、20LPMに比べて14XMは20%高速化可能であり、逆に同じ速度であれば14XMは20LPMよりも38%消費電力を減らせる。また、同じ設計であれば14XMは20LPMよりも5%のダイサイズ削減が可能としている。
ところで、どうしてダイサイズが削減できるかといえば、これはトランジスタの駆動能力に関係してくる。FinFETは構造的にプレーナ型よりも大量の電流を駆動させやすい。これは連載248回の写真にもあるように、マルチゲート構造を簡単に取れるためである。
この結果として、例えば4ゲート構造のFinFET1個とプレーナ型トランジスタ4つを並べるののどちらが面積が小さくなるか、という話になるわけで、言うまでもなくFinFETの方が配線が減るので小さくまとまる。
20nmと14nmで配線が共通の場合、すべてのプレーナ型トランジスタを単純にシングルゲートのFinFETに置き換える限りは、実装面積(≒ダイサイズ)は同一である。ただしマルチゲートFinFETを念頭に物理配線を最適化した場合、同じ配線プロセスであっても実装面積を小さく出来る場合もある。これが5%という差になったと考えればいい。
また別のデータとしては、昨年11月にEDA大手ベンダーの1つであるCandenceが実施したDesign Signoff Summitで、Director Desgin MethodologyのRichard Trihy氏が紹介した資料が下の画像だ。
具体的には、14XMを使ってデュアル「Coretex-A9」を構成した場合と、同じコアを28nmSLPで構成した場合での性能/パワー比較が示されている。
この数字そのものは2013年2月に公開された、Test Vehiecleを使って製造したテスト品をベースにしていると思われる。本当に14XMがリリースできれば、結構期待が持てるプロセスだったことがわかる。
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