このページの本文へ

ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情 第250回

サムスンと提携するGLOBALFOUNDRIESの14nm FinFET戦略

2014年04月28日 12時00分更新

文● 大原雄介(http://www.yusuke-ohara.com/

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

第1世代の14nm FinFETプロセス
「14nm XM」

 ではなぜSamusungと提携することになったかという話をするために、まずは14nm XMの話を少し解説したい。GLOBALFOUNDRIESは2012年9月、14nm FinFETプロセスである14XM(eXtreme Mobile)を発表する。当時はまだ28nmの量産に苦闘していた時期であるが、それもあってか2014年に14XMを導入することをアピールした。

プロセスの歴史。2012年はまだ28nmの量産に苦闘していた時期。この頃は28nm FD-SOIが2013年に提供予定と、さらっと書いてあるのもおもしろい

2014年に14XMを導入することをアピールしている。そもそも28nmがまともに生産できるようになったのが2013年に入ってからというあたり、突っ込みどころは多い

 この14XM、下のプレゼンテーション資料にもあるように、基本的には20nm LPMプロセスを下敷きとしたものである。

14nm XMのプレゼンテーション資料。HKMGもこの世代からGate Lastになることが明らかにされている

 その20nm LPMは自社の28nm、あるいは他社の20nmと比べても優秀というふれこみであり、これを14nm FinFETと組み合わせることで優れたプロセスになるという話であった。

20nm LPMは自社の28nm、あるいは他社の20nmと比べても優秀。なお、GFPWはGood Die Per Waferの略で、歩留まりのこと。PPCはPower/Performance per Costの略である

20nm LPMと14nm FinFETを組み合わせることで優れたプロセスになる。MOL(Middle of Line)は、この場合配線層のこと

 肝心のFinFETの性能は、同じ電圧であれば20~55%向上し、逆に同じ動作周波数であれば消費電力を40~60%削減できるとしていた。

FinFETは、同じ電圧であれば20~55%性能が向上するという。目盛りに数字が振ってないのがミソ

電流が同じと仮定すれば、電圧を20~30%下げられることになる

 別のデータもある。下の画像は、2013年に行なわれたSemicon Westで前CEOのAjit Manocha氏が行ったの基調講演のプレゼンテーションに含まれているものだが、GLOBALFOUNDRIESの28nmプロセスと20LPM、それと14XMを比較したものである。

28nmプロセスと20LPM、それと14XMを比較したもの。いずれもシミュレーションでの結果であり、実際のシリコンを使って測定したものではない

 同じ消費電力であれば、20LPMに比べて14XMは20%高速化可能であり、逆に同じ速度であれば14XMは20LPMよりも38%消費電力を減らせる。また、同じ設計であれば14XMは20LPMよりも5%のダイサイズ削減が可能としている。

 ところで、どうしてダイサイズが削減できるかといえば、これはトランジスタの駆動能力に関係してくる。FinFETは構造的にプレーナ型よりも大量の電流を駆動させやすい。これは連載248回の写真にもあるように、マルチゲート構造を簡単に取れるためである。

3D構造方式のメリット。大きな出力が必要な場合、普通はトランジスタを並列に複数並べるが、3D構造ではこれをまとめて作りやすい

 この結果として、例えば4ゲート構造のFinFET1個とプレーナ型トランジスタ4つを並べるののどちらが面積が小さくなるか、という話になるわけで、言うまでもなくFinFETの方が配線が減るので小さくまとまる。

 20nmと14nmで配線が共通の場合、すべてのプレーナ型トランジスタを単純にシングルゲートのFinFETに置き換える限りは、実装面積(≒ダイサイズ)は同一である。ただしマルチゲートFinFETを念頭に物理配線を最適化した場合、同じ配線プロセスであっても実装面積を小さく出来る場合もある。これが5%という差になったと考えればいい。

 また別のデータとしては、昨年11月にEDA大手ベンダーの1つであるCandenceが実施したDesign Signoff Summitで、Director Desgin MethodologyのRichard Trihy氏が紹介した資料が下の画像だ。

これはマルチコアGPU向けに性能を一致させた場合の消費電力削減の効果と、CPU向けに消費電力を一致させた場合の性能向上効果を示したもの。おそらくGPUは、ARMのMaliあたりをターゲットにシミュレーションした結果と思われる

 具体的には、14XMを使ってデュアル「Coretex-A9」を構成した場合と、同じコアを28nmSLPで構成した場合での性能/パワー比較が示されている。

14XMを使ってデュアル「Coretex-A9」を構成した場合と、同じコアを28nmSLPで構成した場合での性能/パワー比較。Cadenceのイベントでこれを説明していることからもわかる通り、同社もこの14XMをサポートしていた

 この数字そのものは2013年2月に公開された、Test Vehiecleを使って製造したテスト品をベースにしていると思われる。本当に14XMがリリースできれば、結構期待が持てるプロセスだったことがわかる。

カテゴリートップへ

この連載の記事

注目ニュース

ASCII倶楽部

プレミアムPC試用レポート

ピックアップ

ASCII.jp RSS2.0 配信中

ASCII.jpメール デジタルMac/iPodマガジン