「IT担当者とファシリティ(施設、物理インフラ)担当者の間に“壁”がある。データセンター効率化のためには、まずこの壁に“穴”を開ける、共通の情報基盤を作ることが大切だ――」。シュナイダーエレクトリックは4月17日、DCIM(データセンター・インフラストラクチャー・マネジメント)に対する取り組みについての記者向けセミナーを開催した。
エネルギー効率化から、より包括的な「データセンター効率化」へ
IT分野において、シュナイダーは「APC」ブランドのサーバーラック、UPS、電源/冷却システムといったデータセンター(DC)インフラの製品/ソリューションで知られる。その同社がここ数年、注力しているのがDCIMの分野だ。管理ソフトウェアスイート「StruxureWare for Data Centers」を中心としたDCIMソリューションを展開している。
数年前まで同社のメッセージは、冷却システムなどが消費する電力を削減する「エネルギー効率化」が中心だった。もちろん現在でもそのメッセージは有効だが、エネルギー以外も含むより大きな視点から、データセンターの“ムダ”を省いて効率改善へとつなげる「データセンター効率化」というメッセージにシフトしている。
セミナーに出席した同社 ビジネス・デベロップメント 本部長の有本一氏は、データセンター効率化に向けた課題として、ITとファシリティの間にある“壁”の存在を指摘する。
実際のところ、ラック内のサーバーの運用管理はIT部門が、一方で物理インフラや物理セキュリティの管理は総務部門などが担うケースがほとんどであり、そこには「全体像を見る人材がいない」(有本氏)。また、IT機器のライフサイクルは数年、一方でファシリティは十年や二十年、三十年と、変化や更新のスピードも大きく異なる。こうした組織や意識の“壁”が、データセンター運用の最適化を阻んでいるというわけだ。
この“壁”に穴を開けるのが、データセンター運用にかかわるあらゆる情報を収集、分析、可視化するDCIMである。「(DCIMの導入で)ファシリティの人とITの人に、『共通の情報基盤』を作ることが大切」(同氏)。
さらに有本氏は、DCIMにより得られる機能は「可視化」からビジネス視点の「分析」へ、さらに「予測」へと進化していくとも語る。予測とは、「たとえば『このラックに新しいサーバーを追加しても、電源容量や空調能力は大丈夫か』といったシミュレーションが、事前にできる」(同氏)ことを指す。
国内データセンターには「老朽化」の問題も
現在の国内データセンターには「老朽化」という課題も迫っている。富士キメラ総研の調査資料によると、築20年以上が経過した「老朽化データセンター」のサーバールーム面積は、2013年の47万㎡から、2018年には30%以上増加して61.9万㎡に達する見込みだ。つまり、1980年代後半~90年代にかけて建設された初期のデータセンターが、一斉に大規模なファシリティ更新/改修のタイミングを迎えているのである。
こうした老朽化データセンターには幾つもの課題がある。まずこの20年間で、設計当時は想定されていなかったような利用/運用環境の変化が起きたこと。たとえばサーバーなどのIT機器は急速に高性能化かつ小型化(高密度化)が進み、古いデータセンターの電源容量や床の耐荷重では不足する。さらに保有データ量の急増、2度の大震災を経験したことによる耐震性の見直し、環境基準への対応といった変化も起きている。
さらに、こうしたデータセンターの老朽化は、IT業界にとってもファシリティ業界にとっても「初めての経験」であることを有本氏は強調する。「そのため、課題に対する最適解は手探りの状態」(同氏)。ここでも、ITとファシリティの両面から課題を把握して全体最適を図ることが求められる。
シュナイダーは、前述したStruxtureWareソリューションに加え、データセンターのライフサイクルマネジメントを同社の専門家がサポートする「Data Center Lifecycle Sevices(DCLS)」を提供している。有本氏によると、日本でもDCLSの提供を準備中であり、ITとファシリティの両視点から見たデータセンター効率化をサービスとしても提供していく構えだ。