コメントで動画の意味を変えてしまう
淫夢はニコ動の特徴がよく表われたタグ
また毎回タグトレンド上位にいる「真夏の夜の淫夢」タグですが、いつからこうなったのかも見てみましょう。グラフ3は2009年10月26日以降記録していた「真夏の夜の淫夢」タグのタグPV数をグラフにしたものです。比較用に動画数が多く値が変化しづらく大きい「ゲーム」タグの分も付してあります。
「真夏の夜の淫夢」タグのタグPV数は投稿数の増加に合わせて少しずつ増加、2012年4月頃に「ゲーム」タグを抜きます。2012年の夏頃に一旦ピークを迎えて増加が止まりますが、2013年になってからさらに増加を開始、2013年の夏頃に5万PVを記録しています。
ちなみにタグトレンド的には「真夏の夜の淫夢」タグが継続してトップに見えるようになったのは2013年後半のごく最近の話で、ちょうどこの連載で毎回取り上げるようになった頃からだったりします。それ以前は「ゆっくり実況プレイ」とともに「進撃の巨人」が上位にありました。
その後はニコニコ動画自体の仕様変更と思われる理由でPV数が下がっているため比較しづらいですが、毎回タグトレンドで紹介しているとおりニコニコ動画で有数の人気のあるタグの一つです。
グラフ4は各年の前後半で「真夏の夜の淫夢」タグのついた動画に並んでついていたタグを多い順に並べたものです。なお、あくまで現時点で視聴できる動画についているタグを集計したものであり、動画の削除や遡ってのタグの付け剥がしがありうる点はご了承ください。
淫夢動画の初期はもっぱら某プロ野球選手(タグ等では「TDN」と称される。名前をアルファベット数文字で略すのはこの界隈の習慣)や共演している男優関連の動画が多かったようです。
内容としては出演しているビデオの本編映像の転載(「淫夢本編リンク))や、それを使用したMAD動画などが目立ちます。彼が野球選手だったこともあり、この頃は「スポーツ」カテゴリでよく投稿されていました。「例のアレ」カテゴリが2010年はじめに設置され、以降はこちらのカテゴリタグが定位置となります。
初期から投稿されいてるタグで変わったところでは「COATアニメーション」というタグがあります。いわゆるアニメMADの一種で、任意のアニメ作品(複数の場合もある)と淫夢関連の素材を組み合わせた作品によく付けられています。よく投稿されていた作品は「まんが日本昔ばなし」(「日ぺ昔話」)「Aチャンネル」「けいおん!」「ゆるゆり」など。
その後2010年から2011年にかけて投稿数が急増していく中で、投稿人気の高い人物が「TDN」から「野獣先輩」にシフトしていきます。また「BB先輩シリーズ」や「クッキー☆」の動画が投稿されるようになったのもこの頃です。
「BB先輩シリーズ」は背景を青(または緑)に塗りつぶした“ブルーバック”という形式で投稿される動画です。淫夢以前から一部のMAD界隈でよく作られています。ブルーバックの映像は編集しやすいので素材としての使用が本来ですが、何に使うのか分からないようなぶっとんだ素材がよく投稿されています(それでも実際に使われるのですが)。
この「BB先輩シリーズ」の素材を使用した動画は「BB先輩劇場」と呼ばれます。独自のストーリーを淫夢素材で表現しており、簡単な日常の風景を描いたものから、長編のストーリーまで多様な内容の動画が存在し、内容に応じて「ホラー淫夢」「バトル淫夢」といったタグが付けられることもあります。淫夢動画の独特なジャンルの一つと言っても良いかもしれません。
「クッキー☆」は東方Projectの二次創作として合作された「【東方合同動画企画】魔理沙とアリスのクッキーKiss」の関連動画に付けられるタグです。
この動画に「真夏の夜の淫夢」タグが付けられたことから淫夢関係のコメントが大量に付けられたりMADにされたりする騒動があり、その後淫夢関連のMAD素材として定着しました。2013年頃からは「BB先輩劇場」のように「クッキー☆」素材を使ったストーリーものの動画が「BBクッキー☆劇場」として投稿されています。
2013年になると「ゆっくり実況プレイ」の人気などがあってか、淫夢関連の音声や画像素材を使ったゲーム実況動画(「淫夢実況シリーズ」)が増えました。
また2013年後半から2014年にかけての新しい動きとしては「ホモと学ぶシリーズ」がよく投稿されています。映像自体は何の変哲もない教育ビデオやドキュメンタリーなどなのですが、このタグをロックすることで淫夢動画を好むユーザーだけが集まり、彼らがそうした視点のコメントをすることで、コメントを含めて初めて淫夢動画として完成するという形式の動画です。
ニコニコ動画は動画にコメントするサービスとして登場したものの、近年はコメントも減っており、ただの動画投稿サイトとなってきている側面があるなかで、淫夢関連はコメントも活発であり、「ホモと学ぶシリーズ」のようなコメント主体の動画も増えている点は大変興味深いです。
映像は科学技術振興機構が無料で公開しているサイエンスチャンネルの人気シリーズ「THE MAKING」の「マヨネーズができるまで」。これに淫夢動画好きのユーザーによるコメントが加わることでまったく別のコンテンツとなっている典型的な「ホモと学ぶシリーズ」の動画。 |
この連載の記事
-
第45回
トピックス
AVと言えばアニマルビデオ~動物動画の世界 -
第44回
ゲーム・ホビー
女性提督が審神者に? ニコ動・pixivを席巻する刀剣乱舞人気の現状を調べてみた -
第43回
トピックス
第14回MMD杯と多様化するMikuMikuDanceの現在 -
第42回
トピックス
二次創作のビッグタイトルがひしめく2015年1月期アニメ -
第41回
トピックス
海外からも集まる100万人の「絵師」の遊び場・pixiv -
第40回
トピックス
2014年もニコニコ動画は拡大中 -
第39回
トピックス
恒例!コミックマーケット87とpixivの二次創作人気を調べてみた -
第38回
トピックス
ニコ動をツールとして使う「ニコニコカラオケDB」の世界 -
第37回
トピックス
ニコ動とpixivで調べてみた!2014年秋アニメの二次創作動向 -
第36回
トピックス
現在ニコ動に投稿される動画の1割はmaimaiが占めている -
第35回
トピックス
ニコ動屈指の行動力!車載動画は今日もネットとリアルを繋げている - この連載の一覧へ