独自に収集したデータを使って、みんな知ってるようで知らないニコニコ動画の現在を紹介していきます。第21回はタグトレンドで毎回話題となっている「真夏の夜の淫夢」タグを取り上げます。連載一覧はこちら。
筆者紹介:myrmecoleon

明治大学米沢嘉博記念図書館スタッフでニコニコ学会β幹事。趣味で同人誌やニコニコ動画関連の研究をしてる人。記事に使ったデータ元の『ニコニコ統計データハンドブック2014』など同人誌をコミケで頒布。ブロマガでは連載記事の補足も。
Twitterアカウントは@myrmecoleon。関わった近著に『進化するアカデミア 「ユーザー参加型研究」が連れてくる未来』(イースト・プレス刊)。右の画像は筆者を擬人化?して描いてもらったキャラ「ありらいおん子」。男の娘。
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真面目に淫夢のデータを分析してみる。
「真夏の夜の淫夢」タグはニコニコ動画において株式会社コートコーポレーションが2001年に発売したゲイ向けポルノビデオ「BABYLON STAGE34 真夏の夜の淫夢 the IMP」に端を発する独特の動画群に付けられるタグです。
カテゴリタグとしては「例のアレ」で投稿されていることが多く、現在は約2万4000以上の動画にこのタグがついています。いろんな意味で非常に説明しづらいタグのため、これまでなるべく説明しないでおきましたが、興味深い動きも多々あるため今回まともに紹介してみます。
ちなみにこのタグの動画は、元が性的なコンテンツであり、人によっては不快に感じられやすく、また権利的に問題のある動画も多いため、いろんな意味で動画が削除されやすいです。またいわゆる再生数・マイリスト登録数などの「工作」がカジュアルに行なわれている文化でもあります。
今回分析しているデータにおいてもこうした点が影響して、適切な数字となっていない恐れがあります。ある程度割り引いてお読みください。
動画の特徴としては再生数が異常に高く、再生数中央値は約4200とどのカテゴリタグよりも高いです。またコメント数・マイリスト登録数も特に高い部類です。1万再生以上が27.5%、上位4.54%の投稿者の動画に全体の再生数の半数が集中しています。
女性投稿者は比較的少なく、プレミアム会員の比率も低いです。ちなみに平均年齢をいつものやり方で出すと36歳と非常に高くなってしまいますが、このタグの投稿者は特にいいかげんな個人情報が書かれてる例が多く、100歳を超える生年月日を申告しているユーザーが数十人いるため高くなっているものと思われます。23~24歳の申告が多いためそのあたりが本来の数字に近いとすると、比較的若い投稿者の多いタグです。
現時点でのこのタグのついた視聴できる動画は約6300IDのユーザーによって投稿されており、月に約200ID前後が新たに加わっています。ただし削除されやすいジャンルでは複数のアカウントを使用して動画を上げて削除ペナルティなどを回避するのが一般的で、プレミアム率の低さから言っても、このなかにはそうしたアカウントが他のタグと比較して多く含まれると推測されます。
「真夏の夜の淫夢」は、動画としては実は2007年にはすでに本編動画がニコ動に転載されており、2008年頃から音MADなどの素材にしばしば使われるようになります。本編のビデオ自体はあるプロ野球選手が若い頃に出演していたことなどでニコニコ動画以前からよく知られており、初期のMAD等ではその人物の映像を使用した動画が多いです。
2010年頃から動画投稿が急激に増加していき、波打ちやや鈍化しながらも投稿数・月間投稿者数は現在も増加し続けています。先月は1000動画以上が投稿されていました。新規の投稿者も2012年8月頃に向けて増加、以降は比較的安定しています。非常に人気のあるタグです。
各期間の投稿数に関しては削除の影響もあるため、念のために「真夏の夜の淫夢」タグの動画数の推移を見ておきましょう(グラフ2)。青の線は当時のタグ検索時の動画数、赤の線は現在視聴可能なその時点までの動画数です。こちらで見ても2010年から動画数が増えていっているのが分かります。
青と赤の上下の差は、当時その時期までに投稿されていた動画のうち、現在視聴できなくなった(つまりのちに動画またはタグが削除された)動画の数を示しています。ふたつの線が近づいている箇所は削除が多かった時期で、特に昨年末に大規模に減っていたようです。

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