予測データから読む
2014年以降のメモリー戦略
それでは来年以降はどうなるのだろうか。以下の画像は半導体調査会社であるIHSが示す予測データである。まず下の画像は売り上げ全体を俯瞰したもので、2013年は2012年の反動かぐんと売り上げが伸びたが、2015年まではそれほど売り上げが増えず、その先は漸減していくことが示されている(単位は10億ドル)。
メモリーチップの平均小売価格は、2013年を100%とすると、来年以降は20%減、2017年あたりでは30%減になるとされている。これは、平均小売価格の減少を補う勢いで、メモリーの容量が増えると見ているからだ。
これは上画像の右図を見ても明らかで、2011年が200億Gbit程度の出荷量だったのが、2017年には1100億Gbitを超えると考えられている。ASPが落ちつつ、出荷金額がかわらないということは、より高容量のメモリーチップが出荷されると考えているわけだ。
具体的な製品分布が下の画像である。すでに主要なメモリーベンダー(といってもSamsung、SK Hynix、Micronの3社しかないが)は、DDR4のメモリーチップのサンプル出荷を済ませ、一部量産出荷に入っているところもある。
ただし現在は上画像の左側でわかる通り全体の1%にも満たない僅かな量であり、今後次第に増えていくと言いつつも、2014年第4四半期の時点でやっと10%程度、2014年全体を均すと6%といったところである。
この状態では、まだメインメモリーとして使うには無理がある。2015年の時点でも16%程度であり、DDR3を超える出荷量になるのは2016年に入ってからだ。IHSも「Crossover with DDR3 in late 2015」(DDR3との出荷量が逆転するのは2015年末)としており、DDR3からDDR4への移行は2015年まで事実上お預けになった形になる。
もっとも、こうしたお預けの事情のいくばくかは、インテルのプラットフォームの戦略にも絡んだ部分ではないか、という節がある。改めて図を見ると、まず2014年の第1四半期にサーバー向けにIvyBridge-EXがリリースされる。
これはもちろんハイエンドの4P以上の構成を可能にするもので、メモリーはWestmere-EX同様にSMB(Scalable Memory Buffer)経由の接続である。ただこのSMB、Westmere世代では最大でも1067MHzに制限されていた。
これはSMBを接続するSMI(Scalable Memory Interconnect)の速度に起因するものであるが、Ivy Bridge-EX世代ではこれが若干高速化されると見られる。ただDDR3-1600までサポートできるかどうかは微妙なところで、DDR3-1333どまりではないか、という見方もある。
その下のXeon E5向けがHaswell-EPで、これはDDR4に移行するのは間違いなさそうだ。ただし登場時期は2014年の第3ないし第4四半期になると見られる。2014年に立ち上がるDDR4の主要な用途がこのHaswell-EPや、後に出てくるHaswell-E向けとなるだろう。
その下になるマイクロサーバー向けであるが、現在のAvotonの後継製品がどうなるかが見えてこない。インテルは次の14nm世代であるAirmontの開発を急いでいるが、モバイル向けのSoCはともかく、サーバー向けSoCを2014年中に用意できるかどうかがはっきりしていない。Avoton-Refreshになるのではないか、という話もあるくらいだ。
もしもAvoton-Refreshになるとすると、可能性があるのがDDR3Uの投入である。DDR3Uは、DDR3L(1.35V)よりももっと低い1.25Vで動作するDDR3の規格であり、既にJEDECによる標準化も終わっているが、サンプル製品はともかく量産品の流通量はそれほど多くない。
これは単純な話で、メモリーベンダーからすると技術的な難易度がDDR4とほとんど変わらないため、だったらDDR4でいいのでは? ということになってしまったようだ。
プラットフォームでは、AMDのTrinity-R(組み込み向け)やRichlandなどが対応しているが、DDR3LからDDR3Uではそれほど大きな消費電力の節約にならないということもあり、インテル系プラットフォームでは公式には未サポートである。
ただ、もしもAirmontベースのAvoton後継製品が2014年中にリリースされない場合、当面はAvotonのアップデートが必要になる。その場合、絶対性能よりは性能/消費電力比の方が高く評価されるだけに、少しでもこれを改善するためにDDR3Uを投入する可能性はあるだろう。逆に言えば、可能性があるのはこのAvoton-Refreshだけということになる。
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