デスクトップとモバイルは
引き続きDDR3
では、デスクトップを見ていこう。ハイエンドはHaswell-E、ミドルレンジはHaswell-Refresh(と、一部AIO向けにBGAパッケージのBroadwell)となる。したがって引き続きDDR3が使われるのが確定した。ただ、これが現状のDDR3-1866どまりなのか、ハイエンドのみDDR3-2133までサポートするのかがまだ明確ではない。可能性としてはDDR3-2133をサポートしそうである。
次がモバイル向けだ。まずUltrabookなどの市場向けは引き続きDDR3なのは変わらないが、こちらは高くても1866MHzで、実際には1600MHzどまりの公算も高い。理由は簡単で、せっかく消費電力を下げようとしているのに、動作周波数を上げてしまうとこちらの消費電力が増えて、元の木阿弥だからだ。
またDDR3Lに関しては1866MHz品は技術的には可能ながら、実際の流通量はかなり少ないと思われる。現実問題としてこちらも1600MHzどまりになるだろう。
ハッキリしないのは、この2014年で投入されるAirmontである。今のBay Trailが単にタブレット/携帯端末のみならずデスクトップ/モバイル/エンベデッドで投入されているため、Airmontも同じように複数のプラットフォームに対応するのは確実と思われる。
Bay Trail-TとBay Trail-D/M/Iが異なるメモリー構成になるのと同じように、Airmontベースの製品もやはりタブレット/携帯向けとその他では異なることになるだろう。そうなった場合、タブレット/携帯向けはそろそろLPDDR4が視野に入ってくる。
LPDDR4はまだ標準化は完了していないものの、大まかなスペックはほぼ決まっており、今のところ問題なく立ち上がるだろうと予想されている。Airmontベース製品が投入されるのは2014年後半と見られるため、これには十分間に合う。一方、その他向けは引き続きDDR3L-1600あたりが使われることになるだろう。
さて、それでは2015年はどうなるのか、というのが次の話題である。下の画像は4GB DIMMの価格予測である。現在は30ドル前後というのがDDR3LやDDR3L-RSの価格で、これはおおむね市場価格に等しい。
この後であるが、年末にかけてはSK Hynixの供給逼迫もあって価格は一時的に上がるものの、2014年に入ると25ドル前後までゆるやかに落ち、2015年に入ると25ドルを割るところに来るとしている。これはあくまで付加価値付きのDDR3L/DDR3L-RSの話なので、一般のDDR3はもっと価格が下がるだろう。
そのDDR3とDDR4の価格はどうなるのかを示したのが下の画像である。価格が等しくなるのは大体2015年末であるが、とりあえず2014年第4四半期に入るとDDR3との価格差が10ドル未満になるため、このあたりで転換が始まることになるだろう。
また、2014年はおそらくDDR4-2133が主流で、一部DDR4-2400が出るかどうかというあたりだが、2015年はDDR4-3200が投入されることになると見られる。
サーバー向けはDDR4に移行
それでは、また図に戻ろう。今度は2015年のサーバーだ。ハイエンドはHaswell-EXになると思われるが、これはDDR4-2133へ移行することになるだろう。
その下のXeon E5グレードは、Broadwell-EPがDDR4-3200をサポートすると思われる。マイクロサーバーはおそらくAirmontをベースとした14nmプロセス品になると思われるが、これがDDR4-3200までサポートするかどうかは現状はっきりしない。
デスクトップではハイエンドがBroadwell-Eで、これはDDR4-3200はほぼ確定。ミドルレンジはSkylakeベースに移行すると思われる。これはモバイルのハイエンド、つまりノート向けも同じで、どちらもDDR4-3200ベースになると考えられる。
DDR4に関してはすでに十分省電力(1.2V)であり、これ以上下げるのはもう一段新技術が必要になるようで、今のところDDR4Lなどの話は一切出ておらず、DDR4で一本化されることになる。
一方の、タブレットや携帯電話向けだが、こちらはDDR4に加えてLPDDR4がメインになるようだ。あいにくAirmont-Refreshになるのか、新アーキテクチャーになるのかは今のところハッキリしていない。
プロセス的にはまだ14nmのままであり、旧来のTick-Tockモデルに従えばAirmontを改良したものが投入されても不思議ではないが、すでにインテルのTick-Tockモデルが事実上崩壊していることを考えると、Airmont-Refreshになっても不思議ではない。もしそうなった場合、当然メモリーは同じくタブレット/携帯向けはLPDDR4のままだろう。
不透明なのがその他向けで、タイミングを考えればそろそろDDR4ベースに移行することになるが、もしもダイを作り変えないとすると引き続きDDR3ベースのままの可能性もある。このあたりは2014年に入るともう少し見通しがよくなりそうだ。
DDR4世代ではチップの
容量が不足する
最後に記録密度の話をしておこう。現在のメモリーは4Gbit品が主流である。デスクトップ向けのDIMMでは、これが8個(片面実装)で4GB、16個(両面実装)で8GBである。サーバー向けなどでは片面あたり16個(両面で32個)で16GBや、さらにこれを2つ用意して間をフレキシブル基板で繋いだ32GBというお化けDIMMもあるが、これは価格も論外に高いのでおいておく。
さて、問題はこのメモリーチップ容量がDDR4世代では不足することだ。理由は、DDR3ではチャンネルあたり平均して2枚、速度を落とすと3枚のDIMMが装着できたのが、DDR4になるとチャンネルあたり1枚になるからだ。
したがって、システム全体としてのメモリー容量を落とさないためには、メモリーチップの数を倍増させるか、メモリーチップあたりの容量を増やすしかない。そのためDDR4の世代では8Gbit品が最低でも必要とされており、できればもっと容量が多いものが、特にサーバー向けで必要とされる。ただこちらの動きは非常に鈍い。
下の資料もまたIHSの予測であるが、2014年末における8Gbit品の比率は5%前後、2015年通期でも20%程度でしかなく、2016年になってやっと50%程度とされる。
もう1つの問題は、これに続くはずだった16Gbit品が、2017年の時点でも影も形もないことだ。つまり2017年あたりまでは、システムのメモリー総容量はDDR3世代からほとんど増えないことになる。
以上のことから、今後の動向が怪しいのがこのメモリー分野である。そういうこともあってか、インテル自身もあまり長期のメモリーロードマップを出さなくなったのかもしれない。
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