ロードマップのアップデートが一段落したので、久しぶりにチップセット黒歴史をお届けしよう。今回のテーマはGreencreekことIntel 5000Xチップセットである。
デスクトップ用というよりはワークステーション/サーバー向けチップセットに分類されるものだ。それでもごくわずかながら個人ユーザーで使われた方もいたようで、後継となるSeaburgはSkullTrailプラットフォームという超ハイエンド向けで採用されているため、デスクトップともまるっきり無縁ではないので説明していきたい。
FSBを2つ搭載する
Intel 5000シリーズ
Intel 5000Xの元になったIntel 5000シリーズというチップセットが登場したのは2006年5月である。このIntel 5000シリーズは、Blackfordというコード名で開発されたものだ。経緯は連載38回で説明したが、おさらいしておこう。
2006年当時、インテルはAMDに比べてネイティブのマルチコアCPUの導入がやや遅れていた。元々AMDは、最初のOpteronとなるSledgeHammerコアの時から、コアそのものは1つながら、内蔵するノースブリッジ部はデュアルコア構成を相当した作りになっており、2005年に投入したK8 Revision E(Egypt/Italy/Denmark)コアではプロセスの微細化によりネイティブでデュアルコア化する。
対するインテルは、2006年に投入したDempseyベースのXeonでやっとデュアルコア化を実現するが、このDempseyはPentium Dと同じく1つのパッケージに2つのダイを搭載し、間をFSBで繋いだ構成になっていた。
これのなにが問題だったかというと、電気的にはCPUのパッケージ1個で2P相当になるから、デュアルプロセッサー構成というのは実質的に4P構成になり、FSBの速度を下げないと安定動作しないことになった。
またXeon MP向け、つまりクワッドプロセッサー構成だと電気的には8P構成になり、これはインテルのFSBではサポートできないことになった。これに対応するため、FSBを2つ搭載したのがBlackfordシリーズのチップセットである。
FSBを2つに分ければ、例えばデュアルプロセッサー構成だと1本のFSBあたり2Pになるし、クワッドプロセッサーでも1本のFSBあたり4Pだから、これは従来と構成的に変わらないことになる。
もっとも、これはあまりに力技といえば力技な解決法で、チップセットのボール数は1432個にも達しており、多層基板(安定して利用するには10層以上が必要だった)と相まってかなり搭載マザーボードは高価になったが、サーバー/ワークステーション向けだからこれは許容されたとも言える。
またクワッドプロセッサーに関しては、FSBを分割してもまだFSB1本あたり4Pとなり速度を上げにくいため、結局後継となるIntel 7300チップセットまで見送りになってしまった(こちらはFSBが4本出る)。
ちなみにこのIntel 5000シリーズは3製品がラインナップされており、以下のようになっている。
- Intel 5000P:ハイエンドサーバー向けの全部入り構成。FB-DIMMを4ch搭載し、PCI Express x4レーンを4本搭載する。またメモリーチャンネルのミラーリング機能も搭載
- Intel 5000Z:Intel 5000Pの廉価版。メインストリームサーバー向け。FB-DIMMは2chに削減され、PCIe x8レーンも1本に減らされた。メモリーチャンネルのミラーリング機能も削減。
- Intel 5000V:さらに安価なバリュー向け構成。PCIeを完全に削減。ただそれ以外はIntel 5000Zとまったく変わらない。
なぜかIntel 5000Vのみコード名がBlackford-VSだが(Intel 5000ZはBlackford)、内部はまったく同じであり、パッケージもPCI Expressや未使用のFB-DIMMのものがReservedになっている以外は違いがない。
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