2013年ネットワーク動向+Interopレポート 第13回
ネットワーク機器のコモディティ化とSDNの波についてCEOが語る
SDN業界の小さな巨人Pica8のホワイトボックス戦略とは?
2013年06月20日 06時00分更新
コモディティ化を追求したOpenFlow対応スイッチを展開することで、SDN(Software-Defined Networking)への移行を積極的に支援するのが、米Pica8(ピカエイト)だ。Interop 2013にあわせて来日した創業者兼CEOのジェイムス・リャオ氏に、SDNへの取り組みや同社の戦略について聞いた。
ホワイトボックス戦略はベンダーにとってもよい選択
TECH 大谷:SDN関連で、御社の名前がよく出てくるようになりましたね。直近のビジネス動向を教えてください。
リャオ氏:2009年の創業以来、急速に成長を続けている。2012年のQ4では80ユーザーだったが、2013年Q2は倍となる160ユーザーを獲得した。SDN市場の成長を実感している。

Pica8 創業者兼CEO ジェイムス・リャオ氏
TECH 大谷:SDNの市場拡大に対し、御社はどのような戦略でユーザーを増やしているのですか?
リャオ氏:Pica8はベンダーにOEM・ODMで製品を供給する「ホワイトボックス戦略」を推進している。ベンダーはわれわれからハードウェアを購入し、エンドユーザーに対してサービスやソフトウェアとともに提供する。エンドユーザーは、良質なハードウェアとソフトウェアを安価に使えるというメリットがある。
今までベンダーは自身でハードウェア、ASICを開発していたが、この方法だと時間もコストもかかる。しかし、Pica8のホワイトボックスであれば、ソフトウェアの開発に専念できる。ソフトウェアは今までの100倍イノベーションを促進させるだろう。用途にあわせてネットワーキングを自由にカスタマイズできる。開発期間を圧倒的に短縮でき、コストも下げ、しかもスケールできる。
キーはASICだ。われわれはさまざまな命令をソフトウェアで変換し、リアルのASICに解釈できるようにするアーキテクチャをとっている。いわばASICの仮想化だ。これによりパフォーマンスを確保すると共に、機能面での差別化も実現できる。
SDNのメリットはフレキシビリティだ
TECH 大谷:どういった顧客がPica8の製品に魅力を感じているのでしょうか?
リャオ氏:最大の顧客はやはりデータセンター事業者だ。特に米国、中国、日本は大きい。
現在のデータセンターはスケーラビリティ、フレキシビリティ、マイグレーション、コストという大きく4つの課題を抱えている。弊社のSDNソリューションを使えば、これらの課題を解決できる。
確かに20年の歴史を持つL2/L3のアーキテクチャを使えば、スケーラビリティに関しては、ある程度確保できるだろう。SDNはスケーラビリティに加え、フレキシビリティがあるのが大きなメリットだ。
TECH 大谷:どのように解決できるのでしょうか?
リャオ氏:現在はイーベイのようなサイトも、小さなコマース店舗も、箱の大きさは違えど、同じネットワークのアーキテクチャを採用している。でも、YouTubeなり、検索なり、ホスティングなり、トラフィックの性格はそれぞれ異なるはずだ。それなのに顧客ごとにネットワークをカスタマイズできないのはおかしい。これはなぜかを考えれば、やはりネットワークがプログラミングできないからだ。SDNを導入すれば、顧客の要件に合わせて柔軟にネットワークをプログラミングすることが可能だ。
近々提供されるわれわれのソフトウェアスイートを使えば、トラフィックのパターンに応じて、スイッチをどう制御するかを自由にプログラミングできるようになる。今まで触れなかったトラフィックやデータをきちんと制御でき、今後訪れるビッグトラフィックの波にも十分対応できる。これは非常に大きなネットワークの変革になるだろう。

Pica8のOpenFlow対応スイッチ
TECH 大谷:Pica8自身がSDNコントローラーを作る計画はないのですか?
リャオ氏:その計画はない。われわれはコミュニティとの協調を中心に据えており、デバイスサイドに特化する。現在TremaやRyu、Midokuraなどを含む7つのコントローラーをサポートしている。OpenDaylightもまもなくサポートする予定だ。どのコントローラーでもきちんと制御できることを目指している。OpenFlowに関しても、1.3への対応を近々発表する。
TECH 大谷:とはいえ、SDNを導入するにはまだ時期尚早というイメージもあります。
リャオ氏:多くの人はSDNはまだ問題があるという。確かにSDNはチャレンジだが、どんな技術も最初はチャレンジだ。
現在のSDNの問題は、既存のネットワークをリプレースしなければならないというという点だ。弊社のスイッチは、通常のL2/L3スイッチとしても利用できるので、部分的にSDNを導入することが可能だ。マイグレーションという特徴は、他社との差別化ポイントとなっている。
TECH 大谷:国内での展開について教えてください。
リャオ氏:日本ではホワイトボックス戦略でのOEM・ODM採用や(SIerの)SDNソリューションで使ってもらうパターンの2つがある。NCLCのような重要なパートナーを介して、ソフトウェアのサポートも充実させる。

この連載の記事
- 第12回 アラクサラが目指すいろんなところ「いいとこどり」スイッチ
- 第11回 SDNでも覇を競うNECと富士通のSDNソリューションは?
- 第10回 HPブースでは80コア、4TBメモリのHyper-V環境を見よ!
- 第9回 40/100GbE導入なら今でしょ!シスコの多彩な品揃え
- 第8回 SDN対応もバッチリ!デルの40GbE対応スイッチ
- 第7回 ストラトスフィア、オフィス向けのSDN「OmniSphere」開発
- 第6回 100GbEを96ポート搭載!SDN対応も先進的なArista 7500E
- 第5回 IBMのインフラ仮想化は「Software-Defined Environment」に
- 第4回 牽引役は動画!TVはインターネットに取って代わられる
- 第3回 富士通、IPv4の継続利用とIPv6導入を支援する新技術
- この連載の一覧へ