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ジーユーの顧客目線に基づいた集客戦略

スマホで無料クーポンをバラまくことがO2Oではない

2013年04月25日 07時02分更新

文● 盛田 諒(Ryo Morita)/アスキークラウド編集部

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折り込み広告からスマートフォンに切り替えた

 感動や驚きが大切だとしても、これは非常に手間がかかる。淡々と週末セールを繰り返すユニクロの方が効率がいいと感じるほうが自然だ。なぜユニクロ生まれのベンチャーが、親会社の成功例を無視しているのか。

 実は2年前まで、ジーユーの業績は伸び悩んでいた。さまざまな施策を実施しても、ユニクロのブランド力に勝てなかった。ユニクロよりも品質が低く、価格も大きく印象を変えるほど安くはない。990円の激安ジーンズを売り出したときは話題を呼んだものの、結局ファンを定着させられなかった。

990円ジーンズ(2009年発売)。話題は呼んだが、常連はまったくつかなかった

 頼みにしていたモバイル会員も175万人で頭打ち。それも半ばユニクロと会員を折半しているだけの状態だった。完敗だ。親の背中は大きかった。

 なぜ20代の女子は振り向いてくれないのか──悩んだジーユーは、アプローチを変えることにしたという。ただ良い商品を作るだけではダメ。まず、女子を振り向かせることから始めようと、チラシの改良に取り組む。郵便ポストの折り込みチラシをやめ、女子により身近なスマートフォンを選んだ。

 初めにつくったのはチラシではなく「おしゃれメーカー」という診断系アプリだ。ワードローブの写真を撮ると、ファッションタイプが診断される。アプリの中での宣伝は控え、女子に楽しんでもらうことで、ブランドそのものを知ってもらうことを目標にしたという。

 そこから毎月のようにアプリを作り続けた結果、アプリのダウンロード数は1年で200万件超。モバイル会員は670万人と、3倍以上に増えた。今ではセール、イベント、オープン情報、近くにある店、あらゆる情報をアプリで配信するようになっている。そして、スマホへの通知が飛びかう中、プッシュ受信希望率は82%と高い。成功と呼んでいい数字だろう。

診断・占い系アプリ「おしゃれメーカー」(2012年3月)。「会社が見せたい」ではなく、「顧客が見たい」をもとに開発した


大切なのは顧客と向き合うこと

 これはO2Oだったから成功したというわけではないと、萩原氏は強調する。

 「オンラインからオフラインにいかに誘導するかという仕組み作りではなく、お客様によっていかに最適なメディアを選択するかということ。今回はたまたまスマホアプリだったというだけ。手元で配れるカードがいいということなら、それを選べばいいんです」

 大切なのは顧客目線だ。当たり前の話だとはいえ、やれソーシャルだ、拡張現実だ、ゲーミフィケーションだと謎の用語が登場するたびに宣伝費を投下し、用語に乗っかるだけという企業も多い。

 ジーユーの成功体験は、注目を集めたからではない。自分たちの言いたいことを押しつけようとせず、きちんと顧客に向き合い、顧客が望むものを提供したところにあるのだ。


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