「では第一回、セキュリティ突破会議を始める」
薄暗い部屋で、円卓を囲む男の一人が重々しく宣言した。
「きゃはははは、僕たちにかかればどんなセキュリティもイチコロだよね!」
「はっ」
「…………」
同じ円卓につく他の三人も、それぞれ頷く。
「ねえねえ、それでまずはどこをハッキングするの?」
「──愚か者! 貴様、ハックとクラックの差も理解してはおらんのか!」
「いたっ」
ぽかっと殴られ、子供っぽい声で悲鳴が上がった。
「栄光ある我がHENTAIクラスタに名を連ねながらこのようなことも知らぬとは論外、本来なら身の毛もよだつようなお仕置きをするところだが、今回は特別に教えてやろう。
クラックとは政府機関や大手企業などのサーバに侵入して国家機密を盗み出すこと、そしてハックとは……動かなくなった古いソフトをちょこっといじって使い続けてしまうような、『卓越した技術と最小限の努力で当面の課題を回避することに長けた奴』だ!」
「さすがリーダー、素晴らしい例えです」
「なんか奥歯に物が挟まったような言い様だね」
「うるさい私にも色々事情があるのだ! まあぶっちゃけどちらも区別を付けづらいし、両方まとめてハックと呼ばれることが多いがな」
「ってことは、僕たちはハッカーとクラッカーのどっちなの?」
「ふっ、我らは似非三次元で満足しているような輩とは違うぞ。果敢にもリアルへの侵略に挑む者、すなわちクラッカーだ!」
「つまり、危険人物ってことだね」
「ところでリーダー、まずはどこを狙うのですか」
「うむ、それはもう決めている。生徒はみな政治家や財閥のご令嬢、幼稚園から大学までの一貫教育で淑女を世に送り出す──名門・白薔薇女学院だ」
登場人物紹介

イチト
謎の組織「HENTAIクラスタ」のリーダー。そのほか一切の素性は不明だが、組織名から類推できる系のあれな人。ある意味、俺たちの味方。

蓮(レン)
ショタ。以上。

ジルベール
金髪フランス人。……えっ、風と木の詩!? し、知らんなあ。

如月
無口な二枚目。一見常識人っぽいが、常識人はいい歳して眼帯はしないので、静かに厨二病をこじらせているのだろう。

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