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四本淑三の「ミュージック・ギークス!」 第112回

ボカロカルチャーに一石投じるヒッキーPに聞く

2013年01月19日 12時00分更新

文● 四本淑三

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ウェルメイドなものがボカロの全てじゃない

ヒッキー 僕は、音楽を聴いてくれれば満足とかそういう考えではなくて。みんなで「作りたい意欲」を高めていこうという盛り上がりが欲しいんです。たとえば男子高校生で、給食の時間に「×××」(有名なボカロ曲を当てはめてお考えください)とかがかかっていたら、多くの人はうざいと思うわけじゃないですか。

―― 僕の中学生の姪も、前から「ボカロうぜえ」って言ってますね。

ヒッキー でもちょっと待てと。ボカロはそういうものだけじゃない。そうじゃないものをねじ込ませたい。僕のCDの流通はその可能性を少し増やすための手段でもあるわけです。

―― つまり給食時間に俺の曲を聴けと。

ヒッキー いや、今流行っている曲がダメというんじゃなく、いろんな面があるんだということを知って欲しいんです。昼休みに僕みたいな曲が流れると、今まで×××が流れるとキャーって言ってた女子が「何これうぜえ」ってことになるわけじゃないですか。その逆に×××を聴いてうぜえと思っていた人が「今のは何だろう?」って反応を示してくれる人が、100人に1人くらいはいるかもしれない。そういう風に反応が逆転して、変な化学反応があればいいなと。そんな変な化学反応を起こした人は、結構な確率でボカロ曲を作り始めると信じていますしね。

―― なんですかそれ! でも僕も中学校の給食時間にGONG※2を流した先輩がいたおかげで、アンダーグラウンドなロックに興味を持ちましたから、あり得ない話じゃないかな。

※2 GONG 1960年代後半にフランスで結成されたプログレッシブ・ロックバンド。代表曲は「Master Builder」

ヒッキー それに、今後ボカロを回顧するようなこともあるわけじゃないですか。

―― ブームになって5年。インターネット以前の時代は、10年経つと新しいフォロワーが育って回顧ブームが起きたりしましたね。

ヒッキー そのときに、学校で話題になったような曲しか知らない、自称ボカロ厨の人が『当時のボカロは今と違って神だった』とか得意気に語り始めるわけです。そういう人に対して、いかにうわべの流行としてしか見ていなかったか、いかに狭い範囲のものしか聴いていなかったか、それを叩きつける根拠として、僕のアルバムが何年もかけて、少しずつでも広まっていってくれたら嬉しいんです。

―― なんて悪意に満ちたアルバムなんだ! でも話を聞いていると、本当にボカロが好きなんですね。

ヒッキー なんでだろう、やっぱきっかけだったからじゃないですかね。知らない人に自分の曲を聴いてもらえるようになったという、その思い入れが大きいんです。

―― そういえば「初音階段」※3聴きました? これですけど(SkypeのチャットでYouTubeのリンクを送る)

※3 非常階段はJOJO広重を中心とするノイズミュージックの開祖と言っていいバンド。その非常階段がボーカロイドを使って制作したのが「初音階段」。アルバムリリースは1月16日。現在プロモーション用の「やさしいにっぽん人」がYouTubeに上がっている。

ヒッキー 今リンクを教えてもらって初めて聴きました。「やさしいにっぽん人」はカバーですよね。間奏以外は原曲からあまり逸れていなくて驚きました。非常階段が普通にピアノ弾いてたので逆に興味深い。僕が今まで数枚のアルバムで聴いた限りの非常階段ではありえないことですね。

Image from Amazon.co.jp
非常階段 starring 初音ミク

―― 僕はこの非常階段を聴くような人に、大高丈宙が命中してほしいなあ。

ヒッキー でも聴かれないものなんですね、これが。

―― じゃあいっそJOJO広重さんに直接ヒッキーのアルバムを送るとか。

ヒッキー ああ、僕のアルバム広重さんに聴いて欲しい! いかに僕が広重さんが好きかが伝わるはずです!

―― そうですよ、アルバムを出すメリットは、そういうところにもあるわけで。これを契機に新しい展開を期待しています!



著者紹介――四本淑三

 1963年生まれ。高校時代にロッキング・オンで音楽ライターとしてデビューするも、音楽業界に疑問を感じてすぐ引退。現在はインターネット時代ならではの音楽シーンのあり方に興味を持ち、ガジェット音楽やボーカロイドシーンをフォローするフリーライター。


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