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ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情 第183回

新製品が出るのは2014年!? AMDチップセットのロードマップ

2012年12月24日 12時00分更新

文● 大原雄介(http://www.yusuke-ohara.com/

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2014年まで更新の余地なし?

2010~2014年のAMDチップセットロードマップ

 それでは今後のSocket AM3+系チップセットについて説明しよう。まずGPU内蔵のAMD 890GX/880G系は、後継製品の予定はまったくない。すでにSocket AM3を使うPhenom IIやAthlon IIなどは生産終了(End Of Life:EOL)しており、残るのはハイエンド向けと位置づけられているAMD FXのみ。ここに「性能はやや低いが低価格」というGPU内蔵チップセットをリリースする意味は、現状ではまったくない。

 特にAPUの第2世代である「Trinity」が登場したことで、「どうしてもBulldozerコアで内蔵GPUを使いたい」という非常にニッチな要求にも応えられるラインナップが提供されているのだから、なおさらである。もともと、GPU統合製品のニーズがSocket AM3+向けでは非常に少ないので、既存の890GX/880Gで十分であろうとAMDは判断した。そして、それにあわせてSocket AM3+の検証だけを、後追いで追加したのだろうと想像される。

 一方のメインストリーム向けは、こちらも当分更新はなさそうだ。一時期は「AMD 10シリーズチップセットが登場予定で、『AMD 1090FX』と『AMD 1090X』『AMD 1070』の3製品が出る」なんて噂もあったが、単に噂にすぎなかったようだ。現実問題として、AMD FXの出荷量は目を覆いたくなるほど少ない。性能面と生産面の両方に問題があるからだが、いずれにしても売れていないことには変わりがない。そんな状態でプラットフォームを更新しても、マザーボードベンダーにそっぽを向かれるだけでしかない。

 カタログスペック的には、PCI Express 3.0やUSB 3.0への対応があった方が華やかではあるが、USB 3.0はともかくPCI Express 3.0は性能面への寄与がほとんどないから、見送ってもそれほど失うものはないと考えられる。

 そのためチップセットの更新は、「Steamroller」コア世代まで見送りになるのは確実だ。問題はこのSteamroller世代の構成が、いまだに見えないこと。当初の予定では「2013年中にSteamrollerを投入」という話だったが、GLOBALFOUNDRIESの28nmプロセスの製造問題で、かなり怪しくなっている(関連記事)。

 そして2014年というのは、ARMベースのOpteronも登場してくる時期にあたる。もしARMベースとSteamrollerベースの2種類のOpteronを、共通のプラットフォームで動かそうとAMDが考えているとすれば、HyperTransport Linkを使うよりもPCI Expressにでもしたほうが、むしろ効率的である。

 HyperTransport Linkは元々、CPU同士で密結合の大規模マルチプロセッサー構成を、簡単に構築するために考えられたものだ。しかしプロセッサー間リンクを、AMDが買収したSeaMicro社の「Freedom Fablic」技術で構築するのであれば、CPUから直接PCI Expressを出して、その先にFreedom Fablic用インターフェースを取り付けるほうが、よほど合理的だからだ。

 もしOpteronがこういう方向に進むとすれば、AMD FXもCPUから直接PCI Expressが出て、その先にチップセットがつながる形になり、構造が一新されることになるだろう。ロードマップ図には一応AMD 1090FXを入れておいたが、この世代がどうなるのかはまだ見えていないのが実情である。

インテルより機能面では先行した
APU用チップセット

 APU向けチップセットの今後についても説明しよう。2011年6月には「Llano」APU向けに、「AMD A75」と「AMD A55」の2製品がリリースされた。実際にはこれに先んじて、「AMD A45」(Hudson-D1)が「Brazos」(AMD Eシリーズ)プラットフォーム向けに提供されているが、ここでは割愛する。

 APUでは、CPUから直接グラフィック出力やPCI Expressが出ている。そのためA75/A55ともにグラフィック機能は持たず、CPUからのDisplayPort出力を受け取って、マザーボード上のコネクターにつなぐだけである。これはインテルチップセットの「PCH」が、CPUとの接続に「DMI+FDI」(Flexible Display Interface)を持っているのに近い。

 CPUとチップセットの接続は「ALink III」を使い、これはPCI Express 2.0 x4レーンである。また、A75はAMDとしては初めて、USB 3.0のコントローラーを統合している(Intel 7シリーズより先だった)。また、SATA 6Gbpsのポートも6本あり、インテルの「Intel Z77」よりも優秀と言っていいだろう。ただしUSBに関しては、表では×16としたものの、実際には下のように不思議な構成をしている。

  • USB 3.0×4、USB 2.0×10、USB 1.1×2

 これではマザーボードに実装する場合、どれがどのポートなのか紛らわしい。A55は下位モデルにあたり、SATAは全ポート3Gbpsどまり、USB 3.0のサポートもない。

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