今回は予定を変更し、AMDの「Fusion」製品に関する話をしたい。2010年末にサーバー&デスクトップ向けの回とモバイル向けの回で、それぞれの分野のFusion製品ロードマップについては解説した。
その後、2011年1月のCES 2011では「Zacate」「Ontario」と呼ばれていた「AMD E/C」シリーズが発表された。さらに1月下旬には、シンガポールにて開催されたイベント「AMD Fusion Tech Day」が開催され、今後のFusionの方向性なども説明された。そこで両方の話をまとめて、Fusion製品の将来について解説したい。
2011年1月にZacateとOntarioが登場
まずは直近の製品展開を確認しておこう。今年1月に発表されたのは、デスクトップ向けのZacateコア「E-350」とモバイル向けの「E-240」、そしてタブレットやインターネット端末、ネットブック/ネットトップ向けとなる「C-50、C-30」である。もっとも、こうした分類はAMD自身でもかなりあいまいである。
基本的には、Zacateは18W、Ontarioが9WというTDPの枠があり、あとはこれに収まるように動作周波数を調整したという製品だからだ。例えばデスクトップ向け製品にはE-350のみがラインナップされているが、ノートPC向け製品にはE-350からC-30までのすべてが含まれるといった具合だ。
ちなみに構造としては、E-350とC-50が「2コア+GPU」で、E-240とC-30は「1コア+GPU」となる。GPUはEシリーズがRadeon HD 6310、CシリーズはRadeon HD 6250と発表されているが、内部構造はまったく同じで単に動作周波数が異なるだけである。
これに続く製品として、2011年7月前後を目処にZacateベースの「E-450」と「E-300」が予定されている。E-450はCPUコアこそ、1.6GHzから1.65GHzと微妙に高速化されただけだが、GPUコアは定格500MHzながら自動オーバークロック「TurboCore」機能を搭載。最大600MHzまで高速化できることの方が大きい。E-300は2コアのローエンドにあたり、CPUの動作周波数を1.3GHzまで落とした製品となる。
StarsベースのLlanoは5月に出荷開始?
これと同時に、「Llano」ベースの「AMD A8/A6/A4」も投入されるもようだ。A8とA6はクアッドコア、A4はトリプルコアの製品で、基本的な構成は(Phenom/Phenom IIなどと同じ)「Stars」コアをベースに、400/320SP(Steam Processor)のGPUを組み合わせる。物理的には480SP分の領域があるが、歩留まり悪化と消費電力抑制のために400/320SPに減らしているものと見られる。
ちなみに、ロードマップ図中の製品名に「P」が付いた物はTDP 100W、PなしがTDP 65Wと分類される。TDPの違いは、CPUコア側の動作周波数を変更して実現するようだ。
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