AMDチップセットの歴史 その3
段階的にGPUを強化した合併後のAMDチップセット
2010年03月22日 12時00分更新
合併後初開発のチップセットは
合併前製品の改良版「AMD 690G/690V」
前回は、AMDによるATI買収直前までをご紹介したが、今回は買収後のAMDチップセットの話となる。といっても、買収してすぐに新製品を発表できるほど開発は容易でないわけで、しばらくは買収前の製品ロードマップに沿ったラインナップになるのは致し方ないところ。
まず最初に登場するのが「AMD 580X」と「AMD 480X」であるが、これはコード名の「RD580」「RD480」からもわかるとおり、「Radeon Xpress 3200」と「Radeon Xpress 200 CF Edition for AMD」をそれぞれ改名しただけである。また「Radeon Xpress 1100」「同1150」については、ラインナップが古かったためかAMDxxxの型番は与えられず、名前もそのまま引き続き販売されていた。
しかし、このままでは性能面から競合の統合チップセットとの見劣りが激しい。そのため2007年2月にリリースされるのが、「RS690」「RS690C」というコード名で開発されていた「AMD 690G」「AMD 690V」である。基本的にはAMD 580X(スペック的には後に登場するAMD 550X)で、GPUに「Radeon X1250」※1を内蔵したものがAMD 690G。690GのGPU動作周波数を若干落とし(400MHzから350MHzに)、いくつかの機能を省いた低価格版がAMD 690Vとなる。
※1 Radeon X700相当で、X600とX1000世代の中間的なスペックを備える。
このRadeon X1250という型番は、「Radeon X1300よりちょっと劣るだけ」といった意味を込めたのだろうと想像される。ちなみに、このRadeon X1250を最初に搭載したのは、インテル向けチップセットの「RS600」だった。ATIのオリジナルロードマップは、まず(マーケットの大きな)インテル向けに高速なGPU搭載製品を出し、次いでAMD向けということだったようで、見事にこれが裏目に出た形だ。
このAMD 690Gをベースに、モバイル向けに「AMD M690T」と、組み込み向けとして「AMD M690E」という派生型が後から登場した(ロードマップ図では省略)。またAMD 690G/Vの発表後に、AMD 580Xの廉価版として、「AMD 570X」と「AMD 550X」がリリースされる。
もともとAMD 580Xは、独立(ディスクリート)GPU用に合計32レーンのPCI Express(PCIe)を持ち、「x16+x16」という形でCrossFireを構成できた。これに対してAMD 570Xは、8レーン分減らして「x16+x8」となる。これは、グラフィックカード1枚ならx16で、CrossFire構成時は「x8+x8」で動作するというやや変則的なものだ。一方のAMD 550Xは、CrossFireのサポートはなくPCIe x16レーンが1本のみとなる。このAMD 550Xはそもそも、AMDのプロダクトページにすら型番がないほど虐げられた(?)存在ではあるが、実際にこれを搭載した製品が出荷されているから、存在することは間違いない。
さてAMD 690系列は、2008年には「AMD 740G」としてローエンド市場に登場する。製造プロセスは55nmに微細化され、統合されるGPUコアはX700相当(Radeon X1250相当)ながら、動画再生支援機能「Avivo」が搭載されるなど、若干の機能向上がなされた。そのため、「Radeon X2100」でも「Radeon HD 2100」でもない、「Radeon 2100」という微妙な名前になっている。
また、このAMD 740GからディスクリートGPUサポートを省略したものが「AMD 740」として発売されており、低価格向け製品に一部採用されている。ちなみにAMD 740/740GはAMD 690G/Vとピン互換であるが、主要な相違点として「SB700シリーズ(SB700/710)を公式にサポートしている点」が挙げられる。
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