国産のオーディオ製品、特にHi-Fi機器にはとかく“コンサバ”なイメージが付きまとう。フラットで忠実な音の再現へのこだわりや、重厚で厳かなデザイン。そこには、数十年の歴史を積み重ねる中で醸成された価値観が反映されている。
もちろんそれが悪いという話ではない。しかし、この10年の間でオーディオ機器をめぐる事情がずいぶんと変わったのもまた事実。CDに代表されるパッケージメディアはいまだ主流のソースだが、米国でiTunes Storeが開始されて10年。MP3やAACなどデジタルソースの再生に対応したiPodがiPhoneへと進化を遂げてからもすでに5年。アプリやネットを活用した新しい視聴スタイルが生まれている。
それと並行する形で、10万以上もする高級ヘッドフォンが売れていたり、Bluetoothやノイズキャンセリングといった新しい技術が一般化するといった変化も生じている。ファッション性という軸でさまざまな試みもみられる。
そんな中、「ヘッドフォンはひとり1個ではなく、用途に合わせて複数台持つのが当たり前──そんな時代だから、より深い“ライフスタイルへのアプローチ”が必要になる」と語るのが、D&M Holdings NAのPetro Shimonishi氏だ。
“デノン”ブランドを展開するD&Mホールディングスの北米支社に所属。Global Product Managerとして、7月に一挙4カテゴリー8モデルのを投入したヘッドフォン製品(関連記事)を企画した。北米、欧州、日本(アジア)の製品企画担当者を束ね、新しいデノンのヘッドフォンコンセプトを一手に手掛けている。
従来製品と比べ、奇抜な印象を与える製品群は、技術者とデザイナーが一体となって議論を重ね、何度も積み重ねたフィールドテストの中で生まれたものだという。8月末に来日した同氏に製品の狙いについて聞いた。
