今回の特集の最後を飾るのは、今もっともアツいと言えるスマートフォン用ヘッドホンだ。
スマートフォン用とは、ヘッドホンに曲送り/戻しや再生/一時停止などの操作ができるリモコンを備えたモデルのこと。モノによっては通話用のマイクを内蔵するものもある。スマホで音楽を聴いているときでも、着信すると自動で音楽がミュートされ、通話音声に切り替わるので、非常に便利に使えるのだ。
ちなみに、通話用マイクを備えるものは「ヘッドセット」という言い方をするのが一般的だが、今回は音にこだわっているものを集めているので、あえてヘッドホンという言い方をさせていただく。
どれを買っても使える、というわけではない
人気のアイテムだけあって製品数はかなり多い。まずはこのあたりから解説していこう。スマホ用といっても、製品によって適合機種が異なる。大きく分けると、iPhone用と、Android用に分類される。これは端子の規格などが違っているためだが、各社のラインナップを見てみると、iPhone用はあるのにAndroid用がない、またはその逆もあるなど、ちょっと混乱した状態にある。
さらに、Androidについては機種によってうまく動いたり動かなかったりもする。つまり、普通のヘッドホンのように音質やデザインが気に入ったとしても、組み合わせるスマホに対応していない場合もある。メーカーの対応表などで事前の確認が重要だし、試聴のできるヘッドホン売り場へ出向き、実際に組み合わせるスマホを使って音質のほか、動作も一通り試してみるといいだろう。
屋外で使うヘッドホンはすでに持っており、音質的に気に入っているからヘッドホンは変えたくない、という人もいるだろう。その場合はオーディオテクニカの「AT338iS」(実売価格1280円)のようなマイク付きヘッドホンアダプターを使うといい。
これならば、たいていのヘッドホンを組み合わせることができ、着信があってもヘッドホンを外さずにそのまま通話ができるようになる。
このアダプターを使う場合、組み合わせるヘッドホンによっては、ヘッドホン側のコードが長すぎて余ってしまうので、コードを短くまとめるアクセサリーも併用するといいだろう。
今回紹介する製品をピックアップするため、各社のラインナップを見てみたが、一番製品が多いのは、実売で数千円くらいの身近なモデル。スマホを携帯プレーヤーとして手軽に使うという点では、このくらいのものがちょうどいいと思われるし、人気もあるのだろう。
しかし、今回は本格的な音楽鑑賞までも含めた高音質モデルで行きたい。そう思って、1万円を超える中~高級クラスのものを探してみたのだが、今度はあまり数が多くない。いろいろと見ていくと、とんでもないハイエンド級のものを発見した。まずは、その極上サウンドを試してみることにする。
カナル型としては最高価格!?
実売14万円のAKG「K3003i」
「K3003i」は、オーストリアのヘッドホンメーカーであるAKGが発売したハイエンド級のカナル型ヘッドホン。新たにiPhone/iPod/iPadに対応したマイク内蔵リモコンを追加した「K3003i」がラインナップに加わった。
直販価格はなんと13万8000円。カナル型でこれを超える価格のものがあるとすれば、耳型をとってハウジングをオーダーメードするタイプくらいだろう。
10人中10人が、スマホ用ヘッドホンが入っているなんて想像もできない立派なケースを開けると、厳しい出荷検査に合格したことを示すシリアルプレートまでも美しくセットされ、ヘッドホンがきれいに収められていた。レザー調素材を使用したキャリングケースをはじめ、付属品まで高級アクセサリーのように収められている。
製品を丁寧に取り出すと、3つのサイズの交換用シリコン・イヤチップ、航空機用の変換プラグ(高輝度ステンレス採用)、4極→3極変換プラグなど、付属品も万全。ヘッドホン自体も、ステンレス採用のハウジングなど、小さいながらも質感の高い仕上げで、価格にふさわしい高級感だ。
マイク内蔵リモコンさえも金属製のボディーを採用しており、製品の仕上げにスキはない。ちなみに、接続コードはプレーヤー側に断線に強い布製被覆を採用し、信頼性を高めている。ヘッドホン側は衣擦れなどによるノイズを抑えるためラバー被覆となっている。
K3003iは、ユニット構成もユニークだ。3つのドライバーユニットを内蔵した3ウェイ構成で、高域/中域にそれぞれバランスド・アーマチュア(BA)を採用し、低音用にダイナミック型ユニットを使ったハイブリッド型となっている。
BA型は周波数特性が狭く、低域再生もダイナミック型に比べると不利だと言われるが、そのデメリットをうまく対処したものと言える。BA型とダイナミック型の音をスムーズにつなげるためのチューニングは、おそろしく難しかったと思われるが……。
構造を見ると、ハウジングの円形の部分に低域用のダイナミック型ユニットがあり、その前方の音道部分に高域/中域のBA型ユニットが配置されている。低音は音道とBA型ユニットのすき間から耳に送られ、BA型ユニットは専用のポートを通じて音道の中心あたりから放出される。指先サイズの小さなハウジングながら、かなり精密な作りとなっている。

この連載の記事
- 第2回 日・独・米の人気メーカーに聞いたヘッドホンのこだわり!
- 第1回 ヘッドフォンに新素材! カーボンナノチューブから木材まで
- 最新ヘッドホンでミュージック・ライフを向上しちゃおう!
- この連載の一覧へ