世界初のステレオヘッドホンを発売
ドイツの老舗「ベイヤーダイナミック」
アメリカの次はヨーロッパ。しかも日本でも人気の高いヘッドホンメーカーが集まるドイツだ。ここでは、世界初のステレオヘッドホンを発売したメーカーであるベイヤーダイナミックをピックアップ。
今回は日本の販売代理店となっているティアックの小泉貴裕氏(音響機器事業部マーケティング部マーケティング課)に話を聞いた。
ベイヤーダイナミックは、世界初のステレオヘッドホン「DT48 E」(なんと現在もほぼオリジナル設計のまま発売中! 実売価格3万8000円前後)を発売したメーカーでもあるが、元々はマイクのメーカーとして有名だった。
これは同じドイツの「ゼンハイザー」、オーストリアの「AKG」と同様だ。アメリカでは「シュア」がマイクとヘッドホンの両方で有名だ。
これは偶然でもなんでもなく、基本的な原理はヘッドホンとマイクがよく似ているからだ(モニターヘッドホンの端子をマイク入力に差し込んで、振動板に向かってしゃべるときちんとマイクのように音を拾う。逆はマイクが破損するので絶対にやらないこと)。
ちなみに、筆者は1937年に世界初のステレオヘッドホンを発売した時期も含めて、ドイツ軍の戦車で使われるヘッドホンにも深い関わりがあると睨んでいたのだが、戦時中に軍の要請でヘッドホンを生産した可能性はあるが、少なくともそこがスタート地点というわけではなく、会社はあくまでも放送や通信用の機器を生産するメーカーとして生まれたようだ。
小泉:「ベイヤーダイナミックは、質実剛健できちんとした物作りをするメーカーで、コンセプトにそって淡々とした物作りをします。弊社もオーディオメーカーで、TASCAMという業務用オーディオ機器ブランドも持っていますが、取り扱っているほかのブランド以上に(ティアックと)気質が合うと感じています」
今主流のベイヤーダイナミックのモデルは?
職人気質のベイヤーダイナミックは、ミドルクラス以上のモデルはドイツ生産でしかもハンドメイドだ。そこが製品の品質へのこだわりだそうだ。仕上げもしっかりとしているし、パーツに合わせ目もしっかりと合っている。こういった丁寧な作りは海外のブランドではなかなか少ないようだ。
おそらくは世界で一番品質にうるさい日本でも通用する品質で、仕上げについて日本の基準で話をしてもきちんと話が通じるという。個人的な感想だが、それがよそのメーカーだったら、「なんてこった! 日本人はそんな細かいところまで気にするのか? 音とは何の関係もないところだぞ?」で、話にならないことが多いのだろう。
小泉:「それだけにヘッドホンの売れ筋価格である1000円前後というモデルは少ないですね。ベイヤーダイナミックは作ってみたいとは言っていますが、なかなか製品はできません。やはりその価格では音に納得がいかないのでしょうね」
ベイヤーダイナミックの製品ラインナップには、コンシューマー向けのポータブルサイズのものやインナーイヤー型も発売されているが、日本で人気が高いのは、「DT990」シリーズなどのモニター仕様のオーバーヘッド型だ。
同じモデルでも仕様の異なるバリエーションが多いが、これは組み合わせる機器に合わせてインピーダンスなどが違っているため。オーディオ用としては、「DT990 Edtion 2005」(実売価格3万円前後)が標準的だ。
このほか、ポータブルプレーヤーと組み合わせて使いやすい「DT990 E/32 S」(実売価格3万2000円前後)がある。こちらは32Ωのローインピーダンス仕様だ。このように、インピーダンスの異なる製品を用意しているのは、放送局用の機器を扱うメーカーらしい部分だ(それをきちんと輸入しているティアックも同様)。
小泉:「基本的にはモデルチェンジはあまりせず、いい物は変えずに販売しつづけるメーカーですね。DT48Eをまだ売っているくらいですから(笑)」
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