3月のMMD杯後には、妄想で企画書を書いていた
cort いやー、こんなスゴいことになってるとは知らなかった(笑)。
── あれ、cortさんはプロデューサーじゃないですか。
cort 投影技術のほうはノータッチで、ひたすらかわいいGUMIを作っていただけです。
── cortさんといえば、第8回MMD杯にてGUMIを使って作った『雨ノ弱』で準優勝しています。加えて、「MMD杯 in ニコファーレ」でも主催をつとめていた。今回、プロデューサーに選ばれたのはそういった経緯からですか?
cort どうですかね……なんでだろ?
── いやいやいや(笑)。MMD杯 in ニコファーレもかなり盛り上がったから、その流れですかね。
cort 岩城さんが1月の発表会でARライブ機能を発表したときに、「あ、これでMMDライブできんじゃん」って考えてたんです。その後、3月のMMD杯 in ニコファーレが終わってから、頭の中にGUMI誕(GUMI誕生祭)もやりたいという考えがあって、妄想をテキストに書き連ねていた。
以前、ドワンゴさんが、ユーザーがやりたいイベントがあって、それがきちんとしたクオリティーならニコファーレを貸してくれるといっていたので、GUMI誕もやれるのかなとか思っていて。そのイベント受付って、終わっちゃったんでしたっけ?
岩城 いや、表面上の企画の受付は終了していますが、運営に言っていただければまだできますよ。
── そうなんだ!
cort そしたら4月の「ニコニコ超会議」前に運営の人から、「GUMI誕みたいなイベントやりたいって言ってたよね?」というお誘いがちょうど来た。その返信で妄想を書いたテキストを添付して送りつけたら、「じゃあ頼むよ」って。
── ちょ(笑)。すごいな。
岩城 当時インターネット社からも「GUMI誕生祭」ができればいいねという話があって、ユーザー主導のGUMI誕を考えていたcort氏のイベントを両社で支援しようと、今回の計画がスタートしたんです。
cort そこから2ヵ月、本業を休んでこれ1本でやってますから。会社には説明したけど、まず分かってくれない。「何言ってんだ」って言われて、「えっと、アニメキャラクターのライブを作っています」って。もちろんアニメキャラじゃないのは知ってますが、そう言わないと通じなそうだったので。それでも理解してくれず、今でも「お前は一体何をやってるんだ?」って電話がちょいちょいかかってきます。
── 何演目ぐらいを予定してますか?
cort 約2時間で25曲ぐらいですね。全部、モーションは別々のクリエイターが手掛けています。既存のモーションも流用していますが、ライブで使えるような最初から最後までGUMIが単体で動いてるものが少なくて、結局、人を集めて「新規で作ってくれ」ってお願いして回りました。
MMDの作り方って、シーンごとにプロジェクトファイルを分ける人と、最初から最後まで1つのファイルで作るタイプとおおまかに2つあるんです。ライブで使えるのは後者ですが、大半は前者なので、そもそもお願いできる人が限られてしまう。あとはちゃんと言うことを聞いてくれる人(笑)。僕も言うだけじゃなくて、作ってますし。
── 苦労した点は?
cort 曲間のつなぎが大変ですね。GUMIのワンマンライブなので、1曲終わるたびにGUMIが消えるのは変。極力つなげていきたかったので、まず音声からして1本にしている。
── でも動画側はどこかでプロジェクトファイルを変えなければいけないシーンが出てきますよね。
cort MMDの上限があるので全曲で1ファイルはできませんが、例えば2曲やってMCまでとか、そういう単位で区切っています。MCが終わってフェードアウトして、衣装替えして出てくるとかね。それなら違和感がないので。それに向けてセットリストを作って、区切る場所を決めている。
── cortさんは自分でもビジュアル系バンドをやられていましたが、それが演出に役立った点はありますか?
cort すごい役立ってます。お客さんを煽る音声もちゃんとボカロPに作ってもらって入れてある。「ハイハイ」とか「もっと元気出してー」とか。マスター音源の再生だけだと、ほかのボーカロイドライブでもやっているので、じゃあ声を入れようよって。
── 3Dモデルは全部違う?
cort 「ままま式GUMI」が基本ですが、ほかのも出てきます。「ほめぐ」って分かります? 「ホメ春香」みたいな顔をしたクリーチャーみたいな感じなんですが(笑)。あとは100ポリゴンぐらいでできてる「ローポリGUMI」さんとかね。現存であるGUMIモデルはほとんど使おうとがんばっています。おバカな曲にままま式GUMIを使うと変だよねってことで、そこは合わせています。
── なんか話を聞いてるとクリエイターがすごい人数になりませんか?
cort モーションやモデル、アクセサリーを作る人に加えて、借りてきた人も含めると50人ぐらいかな。連絡先を調べるのにも苦労しました。ニコニコ動画のフレンド機能って、申請するときに1度だけメッセージを送れるので、そこに連絡先とかを書いて出すんです。フレンド受理されるとそれ以降、メッセージのやり取りはできなくなるのでその1発に賭ける。
── すげー!
cort 綱渡り状態だったんですが、なんとかうまくいきました。ニコニコ動画からのメッセージが迷惑メールボックス行きになってしまわないか怖かったです。あとはP名を元にTwitterで検索したりね。モーションを新規で作るとなるとクリエイターの増員が必要になるし、そうすると指示が行き通らなくてクオリティーの確保が難しくなる。できる限り少数精鋭で固めたかった。
── じゃあモデルもモーションも最高のクオリティーが実現できたという。
cort 今そこを詰めています。今日も出てくるときに「表情が硬いので柔らかくしてください」って指示したりね。