富士通のかっこいいUltrabook LIFEBOOK UH75/H誕生の秘密
2012年06月14日 14時16分更新
「マージンをもたない」ことで堅牢かつ薄型に
できあがったデザインを目標にハードを作る、というのは簡単なことではない。特にUH75/Hの場合、単に綺麗なだけではなく、堅牢性も同時に実現しようとしていたからだ。最終製品では、天板全面加圧試験にて約200kgfの対加圧性能を実現している。これが実現できたのは、薄さ、そしてコンパクトさにつながる「狭額縁」と無関係ではない。
小中「我々は今回、『HDDも積もう』と判断しました。我々は個人向けと企業向けのどちらも手がけていますが、どの領域でも『データは大量に扱う』という方が多いのです。そのためエントリーと上位機種の、どちらもHDDにしようと決めていました。要は『薄くても普通に使うパソコンとして、通用するモデルにしよう』と考えたのです」
小中「パーツを積み上げなければ、薄くはできます。しかし大きさの問題も出てきます。さらに、耐衝撃性を高めることも考えなくてはいけません。一番重要なのは『衝撃』の問題なんです。考えてみていただきたいのですが、携帯電話は意外と頑丈ですよね? あれは、内部でパーツが揺れない、ぶつからないようになっているからなんです。隙間が空いているのではなく、ぴったりと詰め込まれているからです。F-07Cでうまくできたので、それを応用することにしました」
構造設計を担当した、PCデザイン技術部の軽石 毅氏は「今、ようやく技術が追いついてきた」と説明する。
軽石「正直、構造設計側からすると、この要望は『できるのかよ』と思いました(笑)。でも、我々もいい物を作りたい。幸い、いいサイクルができあがっていたので、それで突き詰めていくことにしました。設計は川崎で行ない、製造は島根(島根富士通)で行なっています。例えば、液晶ディスプレーの周囲にくるアンテナを含めたケーブルも、ピンポイントで通しています。また、キーボード側に内蔵しているCPUなどが搭載された基板も、小型の部品を『超圧縮クロスグリッド構造』の格子の内側に配置することで、強度と必要な部品の搭載を両立しました。それが『ぎゅうぎゅう』実装ができあがった背景ですね」
訂正:掲載当初、部品実装の記述に誤りがありました。ここに訂正いたします。(2012年6月14日)
小中「突き詰めれば『面押し』になるんです。押される時って、ほとんどの場合完全な『点』で押されることはなく、ある程度面積をもっていますよね? ケーブルが液晶パネルの裏を走っていた場合、その部分が押されて内部でガラスにぶつかると、液晶パネルの故障につながります。ケーブルが『点』で接してしまうからです。だから普通は、ぶつからないようにマージンをとる」
小中「でもUH75/Hでは、マージンをとっていません。ケーブルも裏を回さずに全部側面。こんなに狭額縁なのにです。最初は従来どおりだったので、内部に耐衝撃シートをつけていたんですが、薄くしたことでない方がいい結果となり、最終的に不要になりました。これでもアンテナは『上』にあります。そうでないと、通信のパフォーマンスが落ちますので。上にギチッとまとめているのです」
小中「これができるのは、設計でチャレンジしてすぐに製造で確認できる、という点が大きい。試作でいろいろ問題ができた時にどう直すのか。国内で製造できているところが、強みにつながっているんです」
軽石「熱にしても同様です。同じところに発熱源が集中しないように均等配置を意識して、シミュレーションを実施して確認というサイクルを繰り返しました。熱輸送量的にはかなり難題もありましたが、解決できました」
小中「ヒートパイプもオリジナルです。この薄さでこれだけ太いものを使っているのは、あまり例がないと思います」
ぴったりと「余裕を持たせない」作りが丈夫さにつながっている、というのは非常に面白い話だ。そのためには意識と情報の共有が大切だった、と小中氏は語る。
小中「誰もがそれぞれマージンを取ると、こういう設計はできないんです。CAD情報を共有して、皆が同じ目標に向かっていかないとできません。例えば液晶ディスプレーにしても、パネルは国外の液晶パネルメーカーが製造したものですが、フレーム部分は我々の設計です。これだけ薄く、狭額縁を実現するには、フレーム部分を改良しないといけませんでした。そのために、細かなデータを液晶パネルメーカーとも共有し、海外にも足を運んで、お互いの設計要件をつきあわせてつくりました」
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