アップグレード対象エディションの制限
マイクロソフトの「Blogging Windows」には、通常エディション、Proエディション、ARM版の3つの比較があり、別の記事ではEnterpriseエディションの記述がある。これらを整理してみよう。
まずは、パッケージで販売される通常エディションとProエディションの比較だ。この2種は、Windows 7からのアップグレードの場合に、どのエディションからアップグレードが可能なのかが異なる。通常エディションは、Windows 7 Starter、Home Basic、Home Premiumからアップグレードが可能である。ProエディションはWindows 7 ProfessionalとWindows 7 Ultimateを含む、すべてのエディションからのアップグレードが可能だ。
つまり、Proエディションを入手すれば、現在のWindows 7のすべてからアップグレードが可能である。一方でWindows 7 ProfessionalやUltimateから通常エディションには、アップグレードできない。そのため、Windows 7 ProfessionalやUltimateのユーザーは、アップグレードを行なうのであればProバージョンしか選択肢がないことになる。
ただし、現時点ではエディションのみの発表であり、アップグレードが可能か否かという区別でしかなく、まだWindows 8のパッケージの種類までは発表されていない。例えば現在のWindows 7のパッケージには、通常版とアップグレード版があり価格が違う(DSP版は除外する)。
機能面の違いとしては、Proエディションには、BitLockerやファイルシステムの暗号化、リモートデスクトップのホスト機能などが入っている。Windows 8の通常エディションとProエディションの違いは、Home PremiumとUltimate(もしくはProfessional)の関係に近い。
Windows RTとWindows 8/Proの違い
ARM版のWindows RTでは、Microsoft Office(Word、Excel、PowerPoint、OneNote)が同梱されるほか、パソコン用Windows 8にはない、デバイス暗号化の機能が搭載されている。これはおそらく、デバイスのストレージ全体を暗号化するものと考えられ、暗号化パーティションを作るBitLockerとは、別方式なのだと思われる。標準で搭載されるMetro StyleアプリやInternet Explorer 10といった標準バンドルアプリケーションには、大きな違いはないようだ。
また、Windows RTには複数のストレージデバイスをまとめて扱える「Storage Spaces」機能がなく、Windows Media Playerも同梱されない。それ以外は基本的に、通常エディションのWindows 8と同じである。なお、Windows RTはハードウェアにプレインストールされる形でしか提供されないので、過去のWindowsからのアップグレードも存在しない。
Windows RTにデスクトップ環境はあるが、従来のWindows用のx86/x64バイナリのアプリケーションは実行できない。可能性としては、.NET Frameworkで開発したアプリケーションは、そのままもしくは再コンパイルなどで、利用できるようになる可能性がある。ただし、バージョン4.0以前の.NET Frameworkが提供されるわけではなさそうなので、.NET 4.0で実行できることが条件となるだろう。
エディションとしてみるとWindows RTは、付加部分(Officeなど)はあるものの、基本的に通常エディションと同等といえる。
Windows 8 ProとEnterpriseの違いとは?
Enterpriseエディションは、Blog記事によれば、Proエディションをベースに、以下の機能を追加したものだという。
- Windows To Go
- DirectAccess
- BranchCache
- AppLocker
- VDI enhancement
- New Windows 8 App Deployment
まずWindows To Goは、WindowsのインストールイメージをUSBメモリーに置き、パソコン内蔵のストレージを一切使わずにWindows 8を起動する仕組みである。Enterpriseエディションにのみ搭載されたのは、書き込まれるWindows 8のライセンス管理などの問題があるからだ。マイクロソフトでは、例えば在宅勤務時にWindows To Goを使って自宅のパソコン上で会社の環境を利用することで、自宅側の設定を変更する必要もなく、ファイルを残してしまい情報が漏洩する危険も回避できるとして、Windows To Goを企業向けの機能であるとしている。
この連載の記事
-
第34回
PC
Windows 8の狙いは、UIの変化よりもAPIの変化が本質 -
第33回
PC
Windows 8が動作しなくなった? 新しくなった修復機能 -
第32回
PC
Windows 8でIMEに求められる新しい要素とはなにか? -
第31回
PC
Windows 8の無線LANをコマンドラインで細かく制御 -
第30回
PC
Windows 8をマウスで使いやすくするレジストリの小技 -
第29回
PC
周辺機器・アプリがWindows 8/RTで動くか確認する方法 -
第28回
PC
Windows 8のキーボードショートカットを全公開 -
第27回
PC
Windows 8が使いにくい? マウスを変えると印象も変わる -
第26回
PC
実はNFCに対応しているWindows 8 ただしアプリは不足 -
第25回
PC
実は扱いがまったく異なるWindows 8でのタッチパネル -
第24回
PC
Surfaceから見えるWindows RTの実像と、将来PCへの影響 - この連載の一覧へ