額面どおりのスペックでも
DirectXで遅かったPermedia 3
ヒット作となったPermedia 2に続くのが、まずひとつ目の黒歴史入り候補である「Permedia 3」である(関連記事)。
1998年7月、3DlabsはPermedia 3を発表した。Permedia 2のカタログスペックが8300万ピクセル/秒、100万ポリゴン/秒だったのに対して、Permedia 3ではそれぞれ、2億5000万ピクセル/秒、800万ポリゴン/秒といった処理性能の向上を謳っていた。また、Permedia 2がAGP 1xのみのサポートだったのに対して、AGP 2xをサポートしたほか、トライリニアフィルタリングを1クロックで実現すると説明されていた。メモリーバスもPermedia 2の64bitから、128bitに拡充されている。
結果から言えば、こうした機能はおおむねスペックどおりに実装された。当初のアナウンスでは、1998年第4四半期に出荷開始される予定だったが、実際には半年後の1999年第2四半期までずれ込み、搭載製品が市場に出回ったのは1999年7月以降になった。一応はDirectX 6.1までのAPIをきちんとサポートして、日本国内では3万円程度の価格で販売された。
それにも関わらず、人気のほうはさっぱりだった。理由はDirectXで遅かったこと。なにせDirect3Dに関しては、半額強の価格で購入できたMatroxの「G400」にも劣る性能で、S3の「Savage 4」より若干マシ、という程度でしかなかった。OpenGLに関しては、当時の競合製品を引き離す性能を発揮したが、もうこの当時はOpenGLをメインにする3Dゲームはほとんどない状況だった(Quake III Arena程度か)。これではコンシューマー向けとしては分が悪かった。
また、内部にジオメトリエンジンを搭載しているわりには、DirextX 7.0で登場したHardware T&Lへの対応がその後も行なわれなかったことも、不人気に輪をかけることになった。
これが「完全に黒歴史」と断言できないのは、このPermedia 3のプロフェッショナル向けである「GLINT R3」はそれでも比較的好調だったからだ。Permedia 3とGLINT R3の違いは、実のところドライバーのみだ。GLINT R3はマルチスレッドに対応したドライバーを利用可能で、さらにGLINT Gammaと組み合わせることも可能だった。
それに対してPermedia 3は、GLINT Gammaの併用が不可能で、またドライバーはシングルスレッドのみに対応したものだった。もっとも、この当時のPCはシングルスレッドが当たり前だったから、これはそれほどネガティブな話ではない。だが「性能の伸びしろがない」という意味では詰んだ印象がある。
おまけに、コンシューマー向けの売り上げが伸びないことを理由に、この後Permedia 3は3Dlabsに放置プレイ状態にされる。同社はこの時期、プロフェッショナル向けに「3Dlabs Oxygen」シリーズのラインナップを拡充。GLINT R3+GLINT Gammaのハイエンド向けカードを自社で製造し、ワークステーション向けに売りまくった。
さらに2001年には、若干性能を改善した「GLINT R4」と「GLINT Gamma G2」を、やはりOxygenシリーズとして投入した。この間、Permedia 3は完全に放置されていたといっても過言ではなく、2000年後半にはすでに投売り状態となっていたと記憶している。
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