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ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情 第148回

GPU黒歴史 OpenGLの老舗もDirect3Dに乗り遅れ Permedia 3

2012年04月23日 12時00分更新

文● 大原雄介(http://www.yusuke-ohara.com/

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次世代のP10でも波に乗れず
自前の路線は消滅

3Dlabsの製品ロードマップ

 しかし、いつまでもGLINT R3ベースのままでは競争力がなくなると判断したためか、3Dlabsは2000年頃から、GLINT R3/R4と並行して次世代のレンダリングエンジンを開発していた。これは2002年に、「P10」アーキテクチャーとして発表された。

 P10はまた独特なアーキテクチャーを採用したものだった。DirextX 9やOpenGL 2.0に対応すると発表されて、2002年にはまず自社で「Wildcat VP970/870/760」というラインナップで、P10搭載カードが投入される。ただしコンシューマー向けにはP10ではコストがかかりすぎると判断されたためか、2003年にはP10に加えてシェーダーの数を半分に減らした「P9」コアも投入された。P9は唯一、Creative Labsの「Graphics Blaster Picture Perfect」に採用されてコンシューマー向け製品として投入されるが、これだけで終わってしまう。

 P9/P10アーキテクチャーそのものも、2003年一杯で製品投入が終わる。2004年からは同じWildcatシリーズのラインナップながら、3Dlabsが2000年に買収したIntergraph社のIntense3D部門の流れを汲む製品に切り替えられてゆく。そもそも3Dlabs自身が、2002年にはCreative Labsに買収されていた。

 結局2006年3月に3Dlabsは、グラフィックスカードやGPUの製造・販売ビジネスから撤退することとなった。同社はその後、ARMベースのSoC開発のビジネスに切り替え、社名も3DlabsからZiiLABSに切り替わっており、すでに昔日の面影は皆無である。

 Permedia 3が黒歴史入りした理由は、DirectX、特にDirect3Dへの対応が後手に回ったこと、また競合メーカーに比べて、製品投入が遅かったのが主な要因である。しかし、それが間に合わないと見るや、放置プレイを決め込んだことも大きな要因と言えよう。

 他方P10に関して言えば、そもそも発表されていたDirectX 9への対応が実際には実現できなかった(DirectX 8.1止まり)ことが、主要因になろうかと思う。当時はOpenGL向けのGPUでも、NVIDIAやATIが急速に性能を上げつつあった。これに拮抗できる性能をついに確保できなかったことも、P10の寿命を縮めた大きな要因である。引いてはそれが、同社がP9/P10を捨ててIntense3Dベースの製品に切り替える要因にもなり、最終的にこのビジネスをあきらめることになったのは間違いない。

 表面的に言えば、P10が思ったほどの性能が出なかったことが3Dlabsの敗因なのだが、その裏にあるのは、ATIやNVIDIAがコンシューマー向けのシェアをがっちり握ることで性能競争を激化させて、これがハイエンド市場まで喰ってしまったという話である。こうした話は珍しいことではない。

 例えばCPUでは、x86市場の激化による急速な性能向上が、RISCベースのワークステーションやサーバーの市場を喰ってしまった。それが逆に今では、ARMアーキテクチャーが急速にx86の市場を喰い始めていることに似ている。ようするに、プロセッサー市場では「数が力」なのであり、その「数の力」に勝てなかったのが、P10もまた黒歴史入りしてしまう理由だったのだろう。

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