ウォーターフォール的じゃないアジャイル的な開発
―― 演奏面ではオーディオループを読めるのが新しいんですが。WAVフォーマットだったら何でも読めるんですか?
斉田 はい。ファイルをSDカードに入れてもらって、電源を入れてもらえば、そのまま読みます。
―― ただのWAVファイルでもループ再生する?
斉田 はい。
坂巻 本当はファイルのヘッダーにBPMが付いていればいいんですけどね。Garage Bandのループはどうなるんだっけ?
斉田 WAVに変換すれば読めます。でもBPMはkaossilator 2の今のBPMになっちゃいますね。一番いいのは、これで録音したものを使うということですけど。
―― iKaossilatorが書きだしたWAVファイルはループとして読めるので、iKaossilatorの書き出すファイルヘッダーの構造も、そうなっているということですよね?
斉田 今はなってないんですけど、kaossilator 2の発売時期(3月)にiKaossilatorのバージョンアップを予定しているので、それ以降はそうなります。
―― 演奏面で他に何か新しいことはありますか?
坂巻 あとドラムにスイングも付いたんですよね。このアルペジエーターだけじゃなくて、このスイングでドラムも動くんですよ。
大田 ……?
坂巻 あれっ?
―― なんか大田さんは黙ってますけど。スイングしてますね。
大田 それ知らなかった。マジ?
斉田 マジ。
坂巻 これ斉田くんがやったの?
斉田 いや、そこは僕じゃないです。
―― すみません、今のやりとりはどういうことですか?
坂巻 こうやっていろんな人が勝手にやってくれるんですよ。
―― 逆に言うと細かい仕様を切っていないということですか?
坂巻 ウォーターフォール的じゃなくてアジャイル的なんです※。
※ ソフトウェアの開発手法。ウォーターフォールは予め開発ステップを決め、後戻りしないことでロスを最小化する「計画型」。アジャイルは全体を小さな機能に分割し、機能を追加しながら開発を進める「適応型」。先例のないソフトウェア開発に向いている。
斉田 ザックリこんな感じのものだよね、と言うことは全員が共有していて、どうしたら楽しくなるかを、皆がちょっとずつ考えているんです。
大田 いつの間にか機能が増えてるしね。
斉田 「こんなのやってみたんですけど、どうでしょう?」とか。ああ、いいと思いますよ、とか。
坂巻 このディスプレイの鍵盤の絵も知らないうちに付いていて。皆が勝手にやってくれて、いいものができる。それがKORGのいいところですよね。
著者紹介――四本淑三
1963年生まれ。高校時代にロッキング・オンで音楽ライターとしてデビューするも、音楽業界に疑問を感じてすぐ引退。現在はインターネット時代ならではの音楽シーンのあり方に興味を持ち、ガジェット音楽やボーカロイドシーンをフォローするフリーライター。
この連載の記事
-
第164回
トピックス
より真空管らしい音になるーーNutubeの特性と開発者の制御に迫る -
第163回
トピックス
超小型ヘッドアンプ「MV50」のCLEANは21世紀の再発明だった -
第162回
トピックス
欲しい音を出すため――極小ヘッドアンプ「MV50」音色設定に見る秘密 -
第161回
トピックス
最大出力50Wのヘッドアンプ「MV50」は自宅やバンドで使えるのか? -
第160回
トピックス
新型真空管「Nutube」搭載ヘッドアンプのサウンドはなにが違う? -
第159回
トピックス
開発で大喧嘩、新型真空管「Nutube」搭載超小型ヘッドアンプ「MV50」のこだわりを聞く -
第158回
トピックス
唯一無二の音、日本人製作家の最高ギターを販売店はどう見る? -
第157回
トピックス
「レッド・スペシャルにないものを」日本人製作家が作った最高のギター -
第156回
トピックス
QUEENブライアン・メイのギターを日本人製作家が作るまで -
第155回
トピックス
QUEENブライアン・メイのギターは常識破りの連続だった -
第154回
トピックス
てあしくちびるは日本の音楽シーンを打破する先端的ポップだ - この連載の一覧へ