プログラミング的には、SPARC系列で利用された「Register Window」の考え方を取り込んでおり、命令は32bit固定長で構成される、わりとコンサバティブな命令体系であった。
ちなみに、i432とかx86系CPUとの互換性は、一切考慮されていなかった。メモリーに関しては、一部にi432のメモリー保護の考え方をひきずったため、33bit構成(32bitデータ+1bitタグ)という特異なものであった。だがメモリーアドレスそのものは、フラットな32bitを採用した(つまりセグメントやオフセットはない)。
意外にバリエーション豊富なi960
そのi960であるが、最終的には「80960」という名称で販売されることになった(ただしチップの刻印はi960のものも多い)。オリジナルのi960は「80960MX」とされたが、この80960MXは軍用向けのみとされ、一般には流通していない。
この80960MXから、FPUとMMUを削減したのが「80960CA」。80960CAの命令キャッシュを1KBから4KBへと増量するとともに、データキャッシュを1KB搭載したのが「80960CF」となる。さらにプロセスを微細化して、動作電圧を5Vから3.3Vに下げたのが「80960HA」。80960HAを内部2倍速(25~40MHz→32~80MHz)化したのが「80960HD」で、3倍速化(60~75MHz)したのが「80960HT」となる。
80960HA以降は、命令キャッシュが16KB、データキャッシュも8KBと大幅に増量され、これも性能向上の一助になった。というよりも、内部を2~3倍速化するとメモリーアクセスが相対的に遅くなるので、キャッシュでこれを補わないと性能が伸びないから、これは当然の配慮でもある。
この80960CA~80960HTまでを、インテルは「Superscalar Processor」と分類している。これとは別に、80960CFのスーパースカラーを取り除き(つまり同時発行命令を1命令に押さえて)、その分消費電力を抑えたのが「Low Power Processor」のラインナップである。「80960JA」は命令キャッシュを2KB、データキャッシュを1KB持つ構成で、80960CFからキャッシュ容量を減らした製品だ。
続く「80960JF」では、命令4KB、データ2KBにキャッシュを増量している。この80960JFを2倍速化(16~33MHz→33~66MHz)したのが「80960JD」である。さらに80960JDの構成のまま、「HL-PBGA」という特殊なパッケージを採用したのが「80960RD」である(動作周波数は66MHzのみ)。
一方で、80960JFからさらにキャッシュ容量を増やした(命令16KB、データ4KB)のが「80960JS」で、これを2倍速化(16~33MHz→33~66MHz)した製品が「80960JC」、3倍速化(75~100MHz)したのが「80960JT」となる。この80960JTに、さらにいくつかの周辺回路を追加したものが「80960VH」。パッケージを「Perimeter BGA」というものにしたのが「80960RM/RN」で、いずれも動作周波数は100MHzとなっている。

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