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クルマの、そしてレースの未来が垣間見えた!

乾電池で鈴鹿を走る! Ene-1 GP SUZUKAレポート

2011年08月30日 17時00分更新

文● 中村信博 ●写真/うえのふみお

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わずか電池40本で鈴鹿を攻略可能なのか!?

 事前のイメージでは、普通の電気自動車に単三電池40本を装着したようなマシンを想像していたのだが、実際のマシンを見てびっくりしてしまった。

 まず、小さい。全長が人の背丈より少しだけ長いくらいで、横幅も大人の肩幅ほどしかない。ドライバーは仰向けに肩をすぼめて乗車し、首だけを少し持ち上げて前方を見るという窮屈な姿勢を取る。その上からカウルをかぶせると、視界もかなり限られたものになりそうだ。

 そして、全体の形状がまるで弾丸である。地面を這うように走る姿は、なんとなくイモムシか甲虫をイメージさせる。少しの燃料で航続距離を競う、いわゆるエコランで使われている車両と外見はほぼ同じなんだろうが、この種のマシンを初めて見る筆者には「かっこいい」というより、むしろ異様な感じさえした。

その走りに度肝を抜かれたのが、チーム四十雀が走らせたこの「文四郎」。普段は「ワールドエコノムーブ」という電気自動車競技に出場しているマシンだが、今回はこの大会の規則に合わせた単三電池仕様として出場したという

マシンの小ささがよく判るカット。ちなみにこれでもドライバーが乗車しているのだ

ドライバーは完全に仰向けの状態で乗車している。この上にカウルをかぶせると、かなり視界が制限されてしまうという。空気抵抗を減らすため、かなり限界まで絞り込まれた設計なのだ

フィニッシュ後、さっそくマシンを見学に行ってきた! モーターはソーラーカー用のものを、鈴鹿のコースに合わせてチューニングしてある

 KV-40の競技は午前と午後の2回に分けられ、それぞれのヒートで各マシンは1台ずつスタートし、1周のタイムアタックに挑戦する。この時点での筆者の予想は、まだ半信半疑だった。タイムアタックと銘打ってはいるが、単三電池40本の動力では、たとえ鈴鹿の国際コース5.807kmを走りきれたとしても、とてもゆっくりしたスピードでの記録となるに違いない。第1ヒート先頭スタートのマシンが、スタートして早々のメインストレートを停止しそうなスピードでトコトコ走っていったのを見て、その思いはさらに強くなっていった……だが!

 第2走者のマシンがスタートを切った瞬間、メディアセンターの中がどよめいた。

 は、速い!! まだメインストレート上を進んでいた第1走者のマシンを一瞬で抜き去ると、そのマシンは矢のようなスピードで第1コーナーへと突っ込んでいく。あわててサーキットカメラの映像を追ってみると、S字からダンロップにかけての急勾配をわずか二呼吸ほどの時間で駆け抜けたそのマシンは、デグナーを見事なライン取りでクリア。車体があまりに小さいために、カメラが切り替わってもすぐには見つけられない。最初は画面上の埃かと思ってしまったくらいだ。

 バックストレートのスピードは、あきらかに昨日まで見ていたソーラーカーよりも速い。後から聞いてみると、今回の最高速度は110km/hを少し超えるくらいだったそうだが、車体が小さいだけにものすごいスピード感だ。本当にこれが単三電池40本のパワーだけで、人間を乗せて走っているのか!?

駆動輪の左側にはバッテリーの電圧・電流計が並べられている

ステアリングバー。普通のクルマで言うアクセルにあたるのが左側の黒いダイヤルで、ここに左手親指を添えてモーターの回転数を上下する。右側の赤いボタンは回生ブレーキ。通常のブレーキもついているがコースの9割以上はこれを使って減速するという

コクピット左側、金庫のダイヤルに見えるのは、電池からキャパシタへの電流量を調節するダイヤルだ。アタック中はこれを細かく調節しながら、電池の消耗を最小限に抑える

さらにその後方には、電池の直列と並列を切り替えるトグルスイッチがある。普段は並列に合わせ、ここぞというときだけ直列に切り替えて一気に加速するのだ

コクピット右側にはメインスイッチと、電池へ接続するカプラーがある。背中の辺りに搭載した電池から伸びた配線をここに接続する

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