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電波をキャッチして充電する未来が来る!?

2013年08月23日 07時00分更新

文● 寺田祐子(Terada Yuko)/アスキークラウド編集部

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キャパシタ

電気二重層キャパシタモジュール

 「キャパシタ」が、未来の蓄電デバイスとして注目を集めている。一般的な電池がエネルギーを化学的に蓄えるのに対して、キャパシタは電気を電荷のまま蓄積する。電池ほど多くの電気はためられないものの、キャパシタは瞬時に大きなエネルギーを扱え、短時間で充電が可能、また劣化しにくいなど、多くの項目で電池よりも優れた特性を発揮する。

 日本ケミコンの玉光賢次基礎研究センター長は、「電池は電気をたくさんためられるが、瞬時に出せる電力が小さい。キャパシタは逆で、鉄道のように高出力を求められる用途に向いている。ただし、難点はエネルギーが低すぎること。もう少し、エネルギー密度を上げなければならないと言われている。もっとエネルギー密度が上がれば、理想的な蓄電デバイスになる」と説明する。また太陽光や振動、ユニークなところでは外を飛び交っている電波からも充電できるので、リモコンやセンサーといった消費電力の少ないデバイスなら、電池を入れ替えることなく半永久的に使用できると期待されている。

比較

キャパシタと電池の比較

 そのキャパシタを、次の成長産業に育てようとしているのが、電子部品メーカーの日本ケミコンだ。マツダの「アテンザ」の減速エネルギー回生システムに、同社が開発した「電気二重層キャパシタ」が採用されるなど、話題となっている。このシステムは、自動車が減速する時に発生する大きなエネルギーを電気エネルギーに変換して瞬時に充電し、エアコンやカーナビなどの電装機器の電力として再利用し、自動車の燃費を向上させる仕組みだ。低コストで燃費向上に貢献するキャパシタを同システムに採用しているのはマツダのみだが、今後、他の自動車メーカーにも同じようなシステムが広がっていく可能性は高い。

 「減速エネルギーをキャッチアップするのに電池よりも優れており、燃費効率が格段に向上する。燃費のいい自動車は、大きい電池を積むのでそれだけコストが高くなる。だから国内でも比較的高額所得者や、世界の富裕層しか購入できない。だからこそ、コンパクトなシステムで、より燃費のいいクルマが求められる」(同)。二酸化炭素の排出規制がグローバルに強化される中、キャパシタの存在感が高まっているのだ。

 同社では、このキャパシタの技術開発を進めており、2006年から新産学連携システムとして、東京農工大学と組んで様々な材料開発を行なってきた。最先端の「ナノハイブリッドキャパシタ」は、商品化の手前まできており、どのように供給するかといった事業化を社内で検討中だという。

玉光賢次

日本ケミコンの玉光賢次基礎研究センター長

 とはいえ、電池の技術自体も向上しており、電池からキャパシタに簡単に置き換えが起きるというわけではない。実は同社では、電池の性能をアップさせる「ナノハイブリッド技術」も開発している。これはナノハイブリッドキャパシタを研究する途上で生まれた技術で、さまざまな電池材料を小さな粒子状のナノカーボンと複合化(コンポジット)させるというもの。「これまでは、小さな粒子をすり鉢で擦って、数十ナノ単位のサイズのカーボンと混ぜても添着できなかった。これは『凝集』と呼ばれるものだが、自然の摂理として小さい粒子は集まりたがり、大きな粒子になってしまう性質があるため。我々の技術だと小さい粒子のカーボンを均一に分散させられる」(同)。

 この複合化させたナノコンポジット活物質は、電気を通す役割を果たす。電気を通さない活物質の間に詰めるのだが、これまで使用されていた導電性カーボンよりも密に詰まってコンパクトになるため、同じ電極厚にすれば1.5倍の蓄電が可能。また、充電効率もこれまでとさほど遜色がなく、「コスト的に少しくらい高くても、受け入れられる程度」(同)という。メーカーにはサンプルをすでに出荷しており、1〜2年後には量産化の目処を立てたいとしている。

 

 キャパシタと電池。このふたつの技術革新が進んでいけば、「スマホを数十秒で充電」「飛んでいる電波をキャッチして充電」といった、夢のような未来が待っているのかもしれない。


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