在宅勤務の課題とは?
ここで、在宅勤務のデメリットも考えてみよう。制度のユーザーのデメリットとしては、以下のようなものがある。
- 上司、同僚とのコミュニケーションが不足する
- 上司の目が届かないため気が緩んで生産性が下がることがある
- 業務に集中でき、終電を気にする必要がないため、長時間労働になることがある
- 人事評価が勤務態度より仕事の成果物に偏重しがちになる
- 子供や家族に仕事の邪魔をされることがある
- オフィス勤務者との間で不公平感が生じる
デメリットのほとんどが、人事的な側面に集中していることがわかる。
制度を導入する企業の立場では、情報漏えい対策などのセキュリティ面でのコスト、勤務時間の把握や計測の手間が挙げられる。特に個人情報保護法の施行から後は、個人情報漏えいやデータ改ざんといった不祥事を防止するために、職場外に持ち出すPCのセキュリティ対策には万全の注意が求められる。それは在宅勤務でも同様である。
サービス残業が問題となっている企業では、労働基準監督署から、社員の実勤務時間を正確に把握することを厳しく要求される。このような企業で在宅勤務制度を導入すると、労働基準監督署から「会社で残業させられないから、自宅に仕事を持ち帰らせているのではないか?」という疑いをかけられる。そのため、在宅勤務システムのログから利用時間を把握してレポートを作成する、1日あたりの延べ利用時間に制限をかける、といった仕組みを必要とするケースもある。
在宅勤務で必要な製品、サービス
先に説明した通り、在宅勤務者とは「在宅型テレワーカー」であり、そのテレワーカーとは「IT(情報技術)を活用して、場所や時間にとらわれない柔軟な働き方を週8時間以上している人」を指す。すなわち、在宅勤務を実現するには、ITの活用が必須となる。在宅勤務のために必要なITは、大きく分けて「リモートアクセス」「テレ(遠隔)コミュニケーション」「セキュリティ対策」の3つである。
最初に必要なのが、自宅から勤務先の企業内ネットワークにアクセスするための仕組み、すなわちリモートアクセスだ。リモートアクセスにより、ファイルサーバーに保管されたデータを閲覧したり、業務システムを利用できれば、あたかも会社にいるかのように仕事をすることが可能になる。
次に、在宅勤務では上司や同僚とのフェイスツーフェイスのコミュニケーションがなくなるため、それを補う仕組みが必要になる。まずはメールや電話での連絡が主体になるが、職場にかかってくる電話を自宅に転送したり、伝言をデジタルデータ化したボイスメッセージにするといった「ユニファイド・コミュニケーション」の活用が進むだろう。
また、多人数でのリアルタイムの会議・打ち合わせが必要な場合には、Skypeなどのインターネット電話のカンファレンス機能や、Web会議サービスを利用する。さらに、在宅勤務者を交えたチームで協働するには、スケジュール管理やプロジェクト進捗管理のツールが必要だ。専用のソフトを使ってもいいが、汎用のグループウェアでも十分な場合が多く、今後はクラウドにも対応したグループウェアも利用されるだろう。
最後に、在宅勤務では会社の機密情報を、社員の自宅というオフィス外の場所に持ち出すことになるため、情報漏えい対策にも工夫が必要になる。たとえば、リモートアクセスの仕組みの中には、盗聴や改ざんを防止するための暗号化機能は必須である。また、自宅でPCを使う場合には、PC内のデータの暗号化やPCの操作者を制限するツールなどが、情報漏えい対策として必要だろう。PCを使うことで生じる弊害やコストをなくすために、シンクライアントのシステムを採用するケースも多い。また、PCをシンクライアント化するツールも、よく利用されている。
次パートからは、これらの在宅勤務で必要な製品、サービスについて詳しく説明していく。
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