このページの本文へ

前へ 1 2 次へ

在宅勤務で失敗しない方法第1回

ますます導入が進む在宅勤務の基礎を把握する

震災で注目される在宅勤務のメリットと実態、その課題

2011年08月29日 09時00分更新

文● 伊藤玄蕃

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

東日本大震災や政府による電力使用制限令の影響で、多くの企業が節電対策に取り組んでいる。輪番休日やサマータイムなどと並んで、在宅勤務制度を導入する企業が増え、社員のワークスタイルが大きく変わろうとしている。特に、在宅勤務は今夏だけ変化ではなく、普及の流れは今後さらに進んでいくだろう。

在宅勤務のメリットを再確認する

 そもそも、在宅勤務にはどのようなメリットがあるのだろうか。まずは、多くの企業で採用する在宅勤務制度について、それを利用する側のメリットを挙げてみよう。

  • 通勤に割く時間や体力を、フルに仕事に充当することができる
  • 子供や家族と過ごす時間が増える
  • 上司、同僚の電話や私語に邪魔されず、自分の業務に集中できる
  • 時差のある海外との仕事でも、柔軟に対応できる

 また、在宅勤務制度を導入する企業の側にも、生産性の向上、通勤時間の削減による社員の疲労緩和、優秀な人材の確保と定着、といったメリットがある。

 日本では、育児や介護の必要に迫られた社員を前提に、在宅勤務制度を導入する企業が多かった。保育園や介護施設への送り迎えだけでなく、役所や金融機関への諸手続きなどは、会社へ定時に通勤することとの両立が難しいからである。今後は特に、高齢化社会の進展により、介護が必要な家族を抱える社員が増えるのは確実だ。その時、在宅勤務や出勤時間のシフト/フレックス制度があれば、「老親の介護と仕事との両立が難しい」という理由で退職する社員を減らすことができるだろう。

 また、企業の「事業継続(BC: Business Continuity)」の面でも、在宅勤務は有用である。災害時にオフィスが損傷したり、あるいは交通機関が途絶するなどして、社員が会社に出勤できなくなった場合を考えてみよう。全社員がオフィスに出勤することを前提にした業務活動は、完全に止まってしまう。一方、在宅勤務が導入されていれば、リスクの分散になる。

 東日本大震災の影響により、在宅勤務は災害対策の面が強いようだ。しかし、2009年の新型インフルエンザ騒動の時には、「パンデミック(感染症の大流行)対策」のメリットが強調されていた。感染者が大量に発生して、保健所の指導などによりオフィスを閉鎖せざるを得ない事態になると、災害時のオフィスの損傷と同様のリスクが生じる。よって、この場合でも、在宅勤務が導入されていれば、リスクの分散になる。また、在宅勤務者はほかの社員とオフィスで顔を合わせる機会が少なく、感染リスクも少なくなる。

在宅勤務を可能にする条件

 上記のように在宅勤務にはメリットが多いが、適した業務・不向きな業務もある。当然だが、自動車の組み立て工場の生産現場のワーカーは在宅勤務に向かない。顧客や同僚などとの対人コミュニケーションをひんぱんに必要とする仕事も、基本的には不向きである。在宅勤務に適しているのは、1人で完結して、特殊な設備を必要としない仕事だ。

 そうなると、在宅勤務はデスクワークが主体の研究職・企画職などのホワイトカラーが対象だと思うかもしれない。しかし、必ずしもそうではない。ある住設機器のメンテナンス会社では、ユーザー宅を巡回点検するメンテナンス担当者にも在宅勤務制度を導入した。担当者が会社に寄ることなく自宅から直接出向き、巡回記録・補修報告書を自宅で作成する。これにより、担当者一人あたりの巡回件数が増えたにもかかわらず、担当者の拘束時間が削減したという。

 仕事(業務)面だけでなく、社員の側にも在宅勤務に適した人・向いてない人がいる。そこで、在宅勤務を希望する社員に対し、「自己管理能力はあるか」「時間管理能力はあるか」「自宅に個室があるなど、家族に邪魔されず仕事ができる環境があるか」といった適格性を判定するアセスメント(事前評価)を課す企業もある。

 在宅勤務には、「毎日、自宅で働く」「出社するのは月に数回程度」というイメージを思い浮かべる人がいるが、必ずしもそうではない。企業に所属する社員の場合、そのような「完全在宅勤務」はきわめて少なく、在宅勤務は週1回程度というのが一般的だ。それ以上出社する頻度が減ると、本人が疎外感を覚えたり、職場で「浮いてしまう」可能性が生じやすくなるからだ。

 では実際に、在宅勤務はどのくらい普及しているのだろうか。

 日本では、国土交通省が「テレワーク人口実態調査」というレポートを毎年公表している。これによると、全就業者に占める在宅勤務者(厳密には「在宅型テレワーカー」)は、2010年度で約4.9%(約320万人)と推計されている(表1)

表1 在宅型テレワーカー率とテレワーカー数の推移

 ちなみに、この調査では、「ふだん収入を伴う仕事を行なっている人の中で、仕事でIT(情報技術)を利用している人、かつ自分の所属する部署のある場所以外で、ITを利用できる環境において仕事を行なう時間が1週間あたり8時間以上である人」を「狭義のテレワーカー」と呼び、このうち自宅で少しでも(週1分以上)仕事をしている人を「在宅型テレワーカー」と呼んでいる。この在宅型テレワーカーが、おおむね在宅勤務者に該当すると考えてよい。

 なお、「テレワーク人口実態調査」には、テレワーカーに向けた「自宅でテレワークするための条件」というアンケートの結果も掲載されている(図1)。意見の多かったものから順に、「在宅勤務などの働き方を認めた会社の制度」、「自身のパソコン(PC)などの仕事のスキル」、「PC・コピー・FAXなどのIT機器の充実」、「仕事に必要なデータ・資料の完備」となっている。

図1 テレワーク実態調査:自宅でテレワークするための条件(複数回答)

(次ページ、在宅勤務の課題とは? )


 

前へ 1 2 次へ

カテゴリートップへ

この連載の記事
ピックアップ