安定性のなさがVL Busの寿命を縮める
もっとも、この簡単な仕様が逆にVL Busの命取りともなった。VL Busの寿命を縮めたのは、端的に言えば「安定性のなさ」である。VL Busは一応間にバスバッファは入るものの、拡張カードがCPUにそのまま直結される形になる。問題なのは、CPUには多数のデバイスを駆動できるほどの駆動力がないことであった。
一応VL Busの仕様書では、最大3つまでのVL Busスロットを設けられるとしていながらも、以下のような推奨ガイドラインが設けられてた。
バスの周波数 | バッファなし | バッファあり |
---|---|---|
33MHz以下 | スロット2つ/デバイス2つ | スロット3つ/デバイス3つ |
40MHz | スロット1つ/デバイス2つ | 推奨せず |
50MHz以上 | スロットなし/デバイス2つ | 推奨せず |
50MHz以上の「スロットなし/デバイス2つ」というのは、「VL Busデバイスをマザーボード上に2つ搭載するのはアリだけど、VL Busスロット経由ではなく直接実装しましょう」という意味である。
しかし実際の製品はと言うと、「バッファなしで40MHz駆動、スロット3つ」とか、「50MHz駆動でスロット2つ」など、推奨ガイドラインに沿っていない製品が山ほど登場した。また実際に33MHzで動かした場合でも、VL Busカード1枚目(大抵はグラフィックスカード)はちゃんと動くのに、2枚目(SCSIカードもしくはIDEカード)を差した瞬間に、動かなくなったり動きがおかしくなるという具合だった。
また前々回でも少し触れたが、486からPentiumにマーケットが移行すると、CPUから64bit幅でデータが出てくるようになった。そのためにVL Busでは、途中でチップセットを介して64bitと32bitを変換する必要が出てきた。これではCPUに直結していた486世代と比較すると、大幅にオーバーヘッドが増えてしまい、性能が悪化することにもなった。
こうした問題は、規格化した業界団体「VESA」が厳密に仕様を策定し、それを製品ベンダーに強制できていれば、状況は異なったかもしれない。それによるオーバーヘッドはともかく、安定性に関しては多少マシになり、VL Busの寿命も延びたのかもしれない。
だが逆に、そうした場合はVL Busが普及しなかった可能性もある。このあたりは、EISAで厳密に仕様を守らせた結果として普及が進まなかったという事例に懲りて、わざと厳密にしなかった可能性もある。いずれにしても、こうしてEISAとVL Busは、最終的に「PCI」に取って代わられることになった。次回はそのPCIについて説明しよう。
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