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SP1までわかる!Windows Server 2008 R2入門 第5回

ライブマイグレーション対応でVMwareに追いつく?

バージョンアップしたHyper-V 2.0の実力を知ろう

2011年06月15日 06時00分更新

文● 横山哲也/グローバルナレッジネットワーク

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Windows Server 2008 R2の特徴の1つが、サーバー仮想化機能「Hyper-V 2.0」の搭載だ。Hyper-V 2.0は前バージョンからどのように変わったのか。そして、先行他社の製品となにが違うのだろうか。

R2は仮想化インフラを充実

 Windows Server 2008に搭載されたハイパーバイザー型のサーバー仮想化機能「Hyper-V」は、Windows Server 2008 R2でHyper-V 2.0となった(画面1)。このHyper-V 2.0では、物理サーバーの計画停止時でも仮想サーバーを停止しない「ライブマイグレーション」に対応したほか、性能面での強化も行なわれている。

画面1 機能が強化されたHyper-V 2.0

 またWindows Server 2008 R2では、プレゼンテーション仮想化製品である「ターミナルサービス」が「リモートデスクトップサービス」と名称を変更。こちらも機能強化がなされている。そのうえで、両者を組み合わせた新機能「VDI(Virtual Desktop Infrastructure)」が追加された。これらの新機能について、Hyper-Vから順に見ていこう。

Hyper-V 2.0とライブマイグレーション

 サーバー仮想化におけるマイクロソフト最大の競合製品が、米ヴイエムウェアの「VMware ESX」だ。このVMware ESXが以前より搭載している機能の1つに、ライブマイグレーションに相当する機能「VMotion」がある。

 ライブマイグレーションは、仮想マシンの状態をネットワーク経由で別の物理サーバーに送りながら、仮想マシンを切り替える技術だ(図1)。厳密には数ミリ秒程度の遅延が発生するが、TCPタイムアウト時間よりも短く、セッションが完全に保持されるため、事実上ノンストップと考えられる。

図1 ライブマイグレーション

図2 クイックマイグレーション

 これに対し、Windows Server 2008が搭載していたHyper-V 1.0では、「クイックマイグレーション」と呼ぶ機能しか利用できなかった。これは、仮想マシンの状態をいったんディスクに退避してから物理サーバーを切り替える機能だ(図2)。クイックマイグレーションでは切り替えには十数秒必要となるため、仮想マシンは一時停止してしまう

 マイクロソフトは、「中断がいっさい許されないケースは多くない」、「クイックマイグレーションはOSの標準機能で実装できるが、VMotionを実装するのはVMwareの管理製品が必要となる。そのため、VMwareでライブマイグレーションを使うには高額なコストが必要となる」と主張してきたが、機能面での差は明らかだった。

 そしてついに、Windows Server 2008 R2のHyper-V 2.0でライブマイグレーションを実装する。ようやく、VMware ESXと同等レベルのサービスが可能となったわけだ。なお、VMotionが別売りの管理製品を必要とするのに対して、Hyper-V 2.0のライブマイグレーションはWindows Server 2008 R2 Enterprise以上に標準搭載された「フェイルオーバークラスター」があれば利用できる。

 そのため、仮想サーバー管理製品を必要としない場合、価格面ではHyper-Vのほうが有利といえる。

ライブマイグレーションを使うには

 ライブマイグレーションを実現するため、フェイルオーバークラスターには新たな機能としてクラスターノード間でディスクを共有する「クラスター共有ボリューム」が追加された。

 通常のクラスターは、クラスターを構成するサーバー(ノード)の両方からアクセス可能なディスクを使う。ただし、このディスク(クラスターディスク)は、ある時点ではどれか1台のノードが占有的にアクセスし(このノードを「所有者」と呼ぶ)、所有者以外のノードからはアクセスできない(図3)。

図3 従来のクラスターボリューム

 一方、Windows Server 2008 R2のクラスター共有ボリュームは、どのノードからも同時にクラスターディスクにアクセス可能となる。ただし、内部的には所有者が存在し、ディスクアクセスはドライバーレベルで所有者に切り替えられている(図4)。この切り替えを、「リダイレクト」と呼ぶ。

図4 クラスター共有ボリューム

 現時点で、クラスター共有ボリュームはHyper-Vのみが利用しており、ほかのサービスでは使えない。そのため、クラスター共有ボリュームの設定をしたディスク装置は、Hyper-V仮想マシンを配置するための専用ディスクとなる。

 なお、このクラスター共有ボリュームの搭載により、クイックマイグレーションの機能も強化された。従来は仮想マシンごとに論理ディスク装置(LUN)を必要としていたが、Windows Server 2008 R2では単一ディスク装置に複数の仮想マシンを配置できる。

マイグレーションの限界

 ただし、クイックマイグレーション、ライブマイグレーションともに、仮想マシンの停止を回避できるのは計画停止のみであり、計画外停止では仮想マシンの再起動(コールドリスタート)が発生する。なぜなら、マイグレーションはホストとなっている物理サーバーがシャットダウンする際に作業を行なうが、突然シャットダウンが生じる計画外停止では、マイグレーションの作業を実行する猶予がないためだ。

 Hyper-Vのライブマイグレーションとフェイルオーバークラスターの組み合わせは、VMware HA(High Availability)とVMotionの組み合わせに相当する。いずれも、物理マシンの計画外停止で仮想マシンを無停止でマイグレーションすることはできない。ただしVMwareは、複数の物理マシンで同じ仮想マシンを同期動作させる「VMware FT(Fault Tolerant)」を利用することで物理サーバーの計画外停止に対応する。現時点では、Hyper-VにはFTに相当する機能はない。

 計画外停止以外に、Hyper-V 2.0のマイグレーションの限界として、異なるCPUを搭載する物理サーバー間での移動制限がある。そもそもHyper-V 1.0では、CPUリビジョンの異なる物理マシンへの動作中のマイグレーション(クイックマイグレーション、ライブマイグレーション、動作中の仮想マシンを保存した状態でのエクスポートとインポート)は禁止されていた。

 しかしHyper-V 2.0ではこの制限が緩和され、異なるリビジョンのCPUへの移行が可能になった(画面2)。ただし、この設定は最新CPUの拡張命令の実行が禁止されてしまい、動作速度が低下する場合がある。また、インテル製CPUとAMD製CPUとをまたがった移行はサポートされない。

画面2 リビジョンが異なるCPUへのマイグレーションオプション

筆者紹介:横山哲也

グローバルナレッジネットワーク株式会社
マイクロソフト認定トレーナ/マイクロソフトMVP
1994年からSEおよびプログラマー向けにWindowsのサーバーの教育を担当。1996年、グローバルナレッジネットワーク設立とともに同社に移籍。2003年より「マイクロソフトMVP(Directory Services)」


 本記事は、月刊アスキードットテクノロジーズ2009年12月号の特集2「Windows Server 2008 R2の強化点」を再編集し、Service Pack 1に関する情報を追加したものです。

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