たとえば図1のように、メモリーコントローラーのピンとDRAMのピンが一直線に並んでいれば、配線を均等にするのは容易だ。ところが、例えばDRAMを図2のような省パッケージのものにした瞬間に、配線長は大きく変わることになる。図2で赤の配線は、青のもののほぼ倍近くになっているのがわかるはずだ。
こうした場合に、配線長をそろえるためにはどうするか? そのひとつが「短い配線を一番長い配線にあわせて伸ばす」という方法だ(図3)。下の写真は実際のDDR3の配線の一部であるが、むりやりジグザグに配線を引き回すことでトータルの配線長を調整しているのがわかる。
遅延を入れてズレを調整
FlexPhaseの仕組み
一方でFlexPhaseは、図4のようにメモリーコントローラーの最後に入る。FlexPhaseは電源投入時に(必要ならシステム稼働中も動的に)メモリーコントローラーとDRAMチップの間の遅延時間を測定し、ズレを調整する仕組みだ。
メモリー読み込みの場合、各ピンからの信号が配線遅延の影響でズレて届くのを、FlexPhaseが個別に受け取ってタイミング調整してから、まとめてメモリーコントローラーに送り出す。逆にメモリー書き込みの場合、配線遅延をあらかじめ考慮して、配線距離が短いピンはその分遅延を入れてから送り出す。もちろん、無尽蔵にタイミングを調整できるわけではないが、最大で±2クロック分の範囲で、データレート3.2GHzでは2.5ps(ピコ秒、1ns=1000ps)刻みで調整可能とされている。
お詫びと訂正:掲載当初、psとnsを逆に記載しておりました。ここに訂正するとともに、お詫びいたします。(2011年6月2日)
FlexPhaseを使えば、DDRなどの等長配線に比べて配線をはるかに簡素化できる。さらにFlexPhaseの優れている点は、単に配線長だけでなく温度変化などの要因に起因するズレも補正してくれることだ。システムの稼働中にも、動的に遅延を変化させることが可能となっている。
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