天候は回復したものの……
天候が徐々に回復し、路面は急速に乾燥を始めた。だが、掘り返されたままの路面が堅く締まったために路面からの突き上げは激しくなり、ついにメロン号のボディが悲鳴を上げ始める。フレームに歪みが生じたためにボンネットのキャッチが外れ、もう少しで全開となるところだったという。
眞貝選手「特にSS11は、今回のラリーで一番車を痛めつけたステージの2回目。上りで比較的グリップも安定しているステージだったので、ちょっとプッシュしてみようと田中さんからの指示もあった中での走行でした。こりゃどうすりゃいいの、というところに岩盤がむき出しになったような固い凹凸があり、真正面からギャップに突っ込むことが数回。『あーこりゃクルマがダメになっちゃうよなー』、とベソをかきながら走り切りました……」
JN-3クラスの死闘は、ここに来て最高潮を迎える。デイ2から強烈な追い上げを見せるLUCKインテグラが、SS11でインギングセリカをかわしてついにトップを奪還したのだ。そして、満身創痍で必死に4番手を守るメロン号と、5番手の宇田圭祐選手/石川恭啓選手組CSSPインテグラの差は、SS12の終了時点でわずか3.4秒。残るSSは、たったの2本。この約8kmの行程で、ほんの一呼吸ほどしかないタイム差をメロン号は守りきれるか!?
SS13「大谷支線Ⅲ」、約2km地点。それは、一瞬のドライビングミスだった。
眞貝選手「このステージの後半セクション、今回のラリーで唯一の“いい道”という感じのセクターが、私にとっては一番どうにもならないものでした。浮砂利の乗った柔らかい地面に、走行ごとに深くなっていく轍の組み合わせ。まさに暗中模索のドライビングとなってしまいましたね。なんとか浮砂利が掃けた部分をトレースし、ロングコーナーでは轍にしっかり入れて、と走っていましたが、少しだけ「エイッ」と頑張って入ってしまった左のショートコーナーで……」
「メロン号、SS13にて走行不能となりリタイヤ」。その知らせをクルーから直接受け取ったのは、すべての作業が終わってサービスブースの撤収準備を始めた、まさにその時だった。あと、たったの2本のSSを走りきれば良いだけ。そこにわずかな油断があったのかもしれない。悲願の“グラベルイベント完走”は、またもや成就の目前で、スルリとわれわれの手から逃げていったのである……。
幸いにしてメロン号の損傷は軽い。左フロントの外装パーツの一部を損傷したほかは、目立ったトラブルはない。リタイヤ直後にはバックギヤにしか入らなくなってしまったミッションも、原因は排気管の一部が変形して、シフト機構に干渉していたためで、排気管を曲げ直すと元通りシフト操作ができるようになった。まさに不幸中の幸いというべきだろう。
初参戦初完走を目指して走行を続けていたCJRTの1号車、明治/漆戸組サトリアネオは、無事にJN-3クラス7位で完走した。2号車がリタイヤして「絶対完走」の至上命令を与えられた1号車は、途中で後部をヒットしてリヤバンパーを失う危機に見舞われたものの、まずはその大役を果たすことができたのである。今回はミッションその他がノーマルだったが故にスピードで魅せることはできなかったが、一方でCUSCO本隊から出場していたフルスペックのサトリアネオ(牟田周平選手/保井隆宏選手組)はJN-3クラス5位入賞を果たしている。これからモディファイが進めば、怖い存在になっていくのは間違いない。
次戦は今週末5月20~22日に開催される「HIMUKA RALLY 2011」。山深い宮崎県美郷町の山岳路を舞台として、全行程約350㎞で争われる伝統のグラベルイベントだ。このイベントで難しいのは、どのようなイベントなのか一切のデータがチームにないこと。これまでチーム関係者の誰一人としてこのイベントに出場したことはなく、ネットにアップロードされているインカー動画や人づての情報をもとにして、基本となるセッティングを決めなければならないのである。
MRCの「グラベルイベント完走」という命題は次戦に持ち越しとなってしまったが、イベントに関するデータを何ひとつ持っていないことで、その悲願の成就は想像以上に高く、険しい。しかも、われわれにとってただ完走するだけでは意味がないのだ。2年連続のシリーズ入賞という今年の目標を達成するには、1点でも多くのイベントポイントを獲得するために全力で戦わなければならない。久万高原をリタイヤで終わっただけに、次の宮崎戦では必ず上位で入賞しなければならないだろう。
徐々に混迷の度を深めはじめた、2011年全日本ラリー選手権JN-3クラス。グラベルイベント完走、しかも上位での入賞という、ある意味で矛盾する命題をかかえたメロンブックスラリーチャレンジ“チーム2011”は、この週末、未知のフィールドである宮崎へと旅立つ。
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