トライゲートの価値は
製品設計の自由度があがること
トライゲート・トランジスターはまた、複数構成が作りやすいというメリットもある。下のスライドは32nmの従来型トランジスターと22nmのトライゲートの比較であるが、22nmのほうの中心部は、6つのトランジスターをまとめて構成しているのがわかる。一方で左の32nmは、より大きな面積を使いながらやっと2つのトランジスターがまとまっているだけ。単にプロセスを微細化するのみならず、三次元構造とすることでサイズの節約になっていることが見て取れる。
では、トライゲート・トランジスター電気的特性はどうか? まずサブスレッショルドリーク電流の結果がこちらである。
ゲート電圧が0Vの場合の漏れ電流が、32nmのケースと比較しておおむね10分の1になっている。そのため、例えばリーク電流を32nmと同じレベルまで許容すれば、ゲートのしきい値電圧(Threshold Voltage、オン/オフの境目となる電圧)を0.1V程度引き下げられる。逆にしきい値電圧を32nmと同じレベルに保つと、リーク電流を最大90%削減できる。これはどちらも省電力につながる。
またチャネルの遅延に関しては、こちらも電圧によって変化する。32nmで1.0Vの場合の遅延を「1.0」とした場合、22nmの平面型は同条件で「0.9」と、1割ほど高速なことも確認されている。
ではトライゲートでは? と言うと、18~37%高速であることが今回の発表で示された。電圧が1.0Vのままでもそれなりの改善があるが、それよりも0.7Vでの改善幅は非常に大きいのがわかる。
この余裕をどう使うのかと言うと、選択肢はいろいろある。例えば1.0Vのままであれば、32nmの場合より18%高速に動作する。逆に32nmと同じ速度で動作させるのであれば、電圧を0.2V下げられる計算だ。そうした設計の自由度が高まることが、トライゲートの一番重要なポイントだろう。
このトライゲート・トランジスターを最初に搭載するプロセッサーは、2011年中に発表が予定されている「Ivy Bridge」になる。またAtom系列に関しても、第4世代では22nmプロセスを採用して、より省電力な製品が投入されることも明らかにされている。来年の今頃には、トライゲートを搭載するCPUも珍しいものではなくなっているだろう。

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