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古田雄介の“顔の見えるインターネット” 第93回

探検コムの「広く浅く」が深すぎる!

2011年05月11日 12時00分更新

文● 古田雄介(@yskfuruta

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読者からの間違いの指摘は
本当にありがたい

―― やはり、読者からの反応がモチベーションのカギになっているんですね。内容が客観的で詰まっているから叩かれにくいと思いますが、反論をもらうこともありますか?

探検コム たまに間違いがあって指摘をもらうことはありますよ。もう「やっばい俺!」って焦るけど、同時に「本当にありがとう。こんな指摘してくれて、すげーな」と思う。やっぱり俺は広く浅くなんだけど、浅くといっても、普通に読んで納得できるくらいの深さがあると自負してて。そこから間違いを見つけて教えてくれる人は、すごく深いわけじゃん。それもすごく貴重な出会いで嬉しいんだよね。だって、普通は間違いがあっても気付かないじゃん。ちょっと引っかかっても「そういうもんか」と流したりさ。

仕事でも部下からの指摘や提案を渇望しているという。「間違いを指摘されて、俺やべぇ!ってなって、自分自身、必死で勉強したい。それで(部下が成長して)、俺にないものを提示するようになったら最高」と、酔いどれながらも語っていた


―― いちいち精査するのは面倒ですからね。だから、震災のときもデマが大量に拡散しまって。問題視されたことで、状況が改善されたらいいなと思いますけどね。

探検コム う~ん、どうかな。変わらないと思うよ、皆。地震のときに色んなデマが流れたけど、デマだったかどうかを検証していない人のほうが多い気もするし。たとえば、千葉の沿岸でタンクが爆発したときに毒の雨が降るってデマが流れたけど、多くの人にとっては話の種になる一過性のものでしかなかったわけじゃん? デマであっても警戒するに越したことはなかったわけだし。それで何もなかったら、デマかどうかの検証なんてせずに、ただ忘れていくだけ。それでいいという人が多い気がする。

 ネットってそういう情報がわんさか流れるじゃん。正直、ネットはものすごくて、出版側がどうやって対抗していくか分からないくらいだし。


―― どう対抗していこうと思いますか? 深さと正確さで情報の価値を高める方向ですか?

探検コム いや、ダメなんだよね。ネットなんか全部ウソでもデマでも、盛り上がればいいというところがあって。そこは忸怩たる思いがありますよ。

 俺が「マスコミ系やばいじゃん」と思ったのは、酒鬼薔薇事件のとき。1997年ね。あのとき、FOCUS(雑誌)が酒鬼薔薇の実名を掲載したんだよ。近い仕事だから分かるけど、未成年の犯人の実名を載せるなんて、大問題になることを覚悟して相当いろいろな検証をしたはずだよね。それでやっぱり大問題になったわけだけど、ネットでは「実名報道された」ってことだけが広がっちゃって、「ねぇ知ってる? 酒鬼薔薇の本名って◎◎なんだよ!」と、思いきり間違った名前で盛り上がっているところがたくさんあったの。つまり話の種があれば何でもいいんだよ。それまでは、皆本当のことが知りたいと思っていると思っていたけど、別にそうでもなかった。俺はそのときそう感じて、衝撃を受けたね。

 だから、言ってみれば、皆の興味を引くようなウソ情報を意図的に流して、プロパガンダ的な方向に持っていくこともできるわけ。ネットだったらやろうと思えば絶対できちゃう。


―― そう考えると、間違いを指摘する人は本当に貴重ですね。

探検コム 本当にそう思う。言いたくないけど、正直今のネットを見ているとレベルが低いと感じちゃうんだよ。無知からくるデマはどうでもよくて、意図的なのが怖いよね。

 モチベーションとは別のものかもしれないけど、そのなかで俺はちゃんとした情報を出したいというのはあるんだよね。情報を偏らせて煽るのは簡単だけど、そうじゃなくて、じっくり読んできっちり世の中が分かるような情報を出していきたい。単に面白さを求めたら簡単なんだけどさ。だから、いろんな意味で読者に期待しているところはあるかな。

(次ページに続く)

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