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西田 宗千佳のBeyond the Mobile 第68回

Sandy Brigde世代の「X」 ThinkPad X220の価値は?

2011年04月28日 12時00分更新

文● 西田 宗千佳

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バッテリー駆動時間はとにかく長い!
ソフトの完成度が「安心感」を産む

 発熱とバッテリー駆動時間もチェックしていこう。まず発熱だが、Core i5を搭載しているので、フルパワーで動作するとそれなりに熱は出る。だが本体後部の放熱口を触らなければ、不快な熱を感じることはあまりない印象だ。

各部の温度 放射温度計による測定、室温は21度。フルパワー時はH.264動画エンコード状態

 そもそもこれはX220に限らず、今時のCore i5以上を採用した製品の特徴でもあるが、「フルパワー」状態にはなかなかならない。だから発熱の問題を大きく考える必要はない。特にX220の場合、ボディーが樹脂系であることもあって手の平などには熱が伝わりにくく、操作感は快適だ。

 バッテリー駆動時間も「立派」の一言である。試用した4290-RW4は6セルのバッテリーが搭載されているが、カタログ値で最大8.9時間、恒例の「BBench」による実測では、5時間20分弱から6時間20分というところだから、満足できる値だ。

試用機は下にやや出っ張る6セルタイプのバッテリーを装備。駆動時間は満足できるレベル

BBenchによるバッテリー駆動時間テスト
フルパワー設定 省電力設定
約5時間16分 約6時間20分

 オプションの9セルバッテリー(カタログ値15時間動作)ならば、計算上は通信をしながらでも、10時間程度動作することになる。さらに外付けバッテリーパックを併用すれば、カタログ値で最大23時間もの動作が可能となる。

 ここでポイントとなるのが、ThinkPad付属の「省電力ユーティリティ」の分かりやすさと優秀さだ。ThinkPad共通のツールでX220独自のものではないが、消費電力と性能の変化が一目で理解できて、多くの人にとって使いやすい。なにかと話題のピークシフト機能も搭載している。使い始めてしまえばあまりいじることのない部分ではあるが、やはり安心感につながる部分である。

「Lenovo省電力ユーティリティ3」。表示も設定方法もわかりやすい。もちろん、設定項目をひとつずつ細かく調整していくこともできる

省電力ユーティリティによるピークシフト設定画面。設定した時間はバッテリーでの動作に自動的に切り替わる。時間などは手動設定

 ThinkPadの価値は「ソフトにある」と言われることは少なくないが、X220に触れるとそのことを強く感じる。実に細かい工夫がなされているのだ。「Caps lock」などのオンスクリーン表示が、ディスプレー中央でなく右側に、「目立つが邪魔にならないように」表示されたり、内蔵マイクの調整機能が充実していて、タイプ音ノイズの軽減や複数話者対応が楽であったりと、とにかく「使っている人が作っているのだな」という印象を受ける。

Caps Lock時に表示されるオンスクリーン表示。作業を邪魔しないよう、画面右にオフセットして表示されるのがニクい

内蔵マイクの設定。ビデオ会議などの用途を想定したものだが、キータイプ音ノイズの軽減や話者数による特性の変更など、細かなチューニングがわかりやすく並んでいる

 なお本来X220は、カスタマイズによってOSのブート時間を短縮する「Lenovo Enhanced Experience 2.0 for Windows 7」対応機種なのだが、4290-RW4はHDDモデルであるため、その恩恵がはっきりとは感じられない。電源オンからのブート時間は、実測で40秒から45秒というところだ。SSDモデルならば、ブート時間が10秒程度になるということなので、予算に余裕がある人にはお勧めだ。

 結局X220をお勧めするか否かは「予算」につきる。Lenovoダイレクトのキャンペーン価格を活用するとかなり安価にはなるが、試用機の4290-RW4の場合、実売価格は19万円程度になる。長期間使うと考えれば納得いく価格だし、それだけの内実は備えていると思う。

 他方で、同じ性能・同じバッテリー駆動時間が欲しいだけなら、もっと安価な製品もある。「本気で2、3年仕事に使える」製品として、投資する形で買うべき物だと感じる。その際できるなら、多少予算がアップしてもSSDを選んでおくことをお勧めする。

お勧めする人
・安心して長く仕事に使えるモバイルノートが欲しい人
・いざという時は「超長時間駆動」を実現したい人
ThinkPad X220(4290-RW4)の主な仕様
CPU Core i5-2520M(2.50GHz)
メモリー 4GB
グラフィックス CPU内蔵
ディスプレー 12.5型ワイド 1366×768ドット
ストレージ HDD 320GB
光学ドライブ 搭載せず
無線通信機能 IEEE 802.11a/b/g/n、Bluetooth 3.0
サイズ 幅305.0×奥行き206.5×高さ19~26.6mm
質量 約1.46kg
バッテリー駆動時間 約8.9時間
OS Windows 7 Professional 32bit版
直販価格 19万6350円

■Amazon.co.jpで購入

筆者紹介─西田 宗千佳

1971年福井県生まれ。フリージャーナリスト。得意ジャンルは、パソコン・デジタルAV・家電、そしてネットワーク関連など「電気かデータが流れるもの全般」。主に取材記事と個人向け解説記事を担当。朝日新聞、読売新聞、アエラ、週刊東洋経済、月刊宝島、PCfan、YOMIURI PC、AVWatch、マイコミジャーナルなどに寄稿するほか、テレビ番組・雑誌などの監修も手がける。近著に、「美学vs.実利『チーム久夛良木』対任天堂の総力戦15年史」(講談社)、「クラウド・コンピューティング仕事術」「iPhone仕事術!」(朝日新聞出版)、「iPad vs.キンドル」(エンターブレイン)、「メイドインジャパンとiPad、どこが違う? 世界で勝てるデジタル家電」(朝日新聞出版)、「知らないとヤバイ! クラウドとプラットフォームでいま何が起きているのか?」(共著、徳間書店)。「電子書籍革命の真実 未来の本 本のミライ」(エンターブレイン)。

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