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古田雄介の“顔の見えるインターネット”第91回

「計画断水」知ってる? ネットで日本の昭和を振り返る

2011年04月13日 12時00分更新

文● 古田雄介(@yskfuruta

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「鉄腕アトム」が変えた日本のものづくり

―― インターネットはかなり初期の頃から利用していたんですか?

富沢 はい。鉄道模型をやるとき、情報収集に使っていました。PCもそうですね。PCソフトを活用した、「鉄道モデラーのためのデジタルクラフト入門講座」(1999年)という本も出しています。塗装部分を精巧に作る方法や、「シールを作るにはどこのプリンターがいい」といったことをまとめたもので、当時は斬新な本だと評価をいただきました。

 最近は「鉄ちゃん」と言われて、ネットとの親和性も高くなっていますが、鉄道ファンはもともとリアル志向といいますか、実物対象だったんです。だから、当時はヴァーチャルなものであるパソコンやネットにお金をかけずに、乗車や撮影、模型に資金をつぎ込むのが当たり前だったんですよ。

 でも、みんな目を向けないだけで、ネットはやはり便利でした。模型の風景をリアルに再現するための資料を探すということもよくやっていましたから。その過程で「60年代通信」に出会ったわけです。

主婦の友社発行の「鉄道モデラーのためのデジタルクラフト入門講座」。パソコンで鉄道模型をいかにリアルに作るかという徹底した視点のもの。富沢氏は「今でこそ普通のことなんですけど、たった10年前は斬新な切り口だったんですよ」と当時を振り返る

―― ライフワークがもうひとつのライフワークを見つけた感じですか。

富沢 私の中ではサイトも鉄道模型も真ん中のところは同じなんですよ。どちらも「作ること」なので。それも鉄道だけでなく、60年代の情景を再現したくて街並みも作ります。これも作り込むと、さっきの話にあった「入り口」になるんですね。

 たとえば、60年代の渋谷駅周辺の模型を作るとき、色々なところから撮った写真を集めて、ビルや街路樹を置いたりしています。模型を眺めたとき、「確かにここからあのビルはこう見えた」と、当時の自分が渋谷を歩いた記憶を呼び覚ましたりするわけです。

 他の人からも「ここ違うよ。たしか背の低いビルだった」と言ってもらうことで、手直ししてより精度の高いものになっていく。そうやって周りの人から話を聞いて手直ししながら成長できるのは、模型もサイトも同じです。


―― そういう視点で見ると面白いですね。しかし、模型も本当に緻密で驚きます。履歴を読ませていただくと、中学生の頃からスピーカーを自作されていますし、工作に関しても本物志向といいますか。

富沢 いえ、私が特別というわけじゃないんです。60年代の子供は、自分の力で何かを作るのが当たり前だったんですよ。

 テレビ番組のヒーローごっこをするにしても、今みたいに仮面ライダーの変身ベルトが売っているなんてことはない。風呂敷をマントにして、メガネをサングラス代わりに付けて「月光仮面だ!」と言っても、皆ちゃんと納得するんです。

 そういう感じがなくなってきたのは1963年頃でした。ちょうど「鉄腕アトム」のアニメが始まった時期で、おもちゃ屋さんにアトムの人形が並ぶようになったんです。キャラクタービジネスの走りですよね。

 アトムを境に、自分で作らなくてもお金さえ出せば与えられるようになっていった。子供の意識もだんだん変わっていって、自分でヒーローのアイテムを作ったりすると「この子はなんだろうな?」と見られるようになっていきました。たぶん、それが70~80年代だと思います。大量生産と高度経済成長の時代です。


―― そのあたり、富沢さんが60年代を重視するキーになっていそうですね。

富沢 原点みたいなところです。子供の頃に60年代を経験した世代は、生まれたときにテレビがなくて、クルマを持っている家庭もクラスに1~2人という感じでした。

 自分で色々立ち上げて発展するしかない、みたいな感じがあったんですよ。テレビが登場してから、皆の楽しみが規律化されちゃう感じはあって。作る側からすれば、同じジャンルで1番になったら(シェアが)3~4割取れるという計算が成り立つようになりました。

 「自分で特別なものを見つける」という考えが、メジャーでなくなっていった感はあったんです。

 もちろん、60年代が最高で今がダメというわけではないです。今の人たちも技術や方法が変わっているだけで、実は「作る」という根本は同じじゃないかなとも思うんですよ。彼らに「お前このマイコン作れるか?」みたいなことを言うのは違うと思いますし、その必要もないですよね。

冒頭にも掲載した模型は2002年に制作した。2004年に東急百貨店の開業70周年大創業祭に展示されたほか、2010年に日本テレビ「ぶらり途中下車の旅」でも紹介された

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