次世代ブラウザーではトレンドの
「行動追跡防止機能」も搭載
また、新たにプライバシーを保護する機能として、「行動追跡防止機能」が搭載された。さまざまなウェブサイトを見ていると、ユーザーがどのようなページを見たり、興味を持っているのかなどが履歴として蓄積されていく。現在のインターネット広告では、こうした情報をウェブブラウザーからあの手この手で取得して、ユーザーが興味のあると思われる広告をピンポイントで表示するようになってきている。いわゆる「行動ターゲティング広告」という手法だ。
しかしこうした手法による行動追跡は、ユーザーのプライバシーを不当に侵害しているとの声もあり、最近では大きく問題視されるようになってきた。そこでマイクロソフトはIE9に、どんなページを見たかなどの情報をトラッキングされないようにする行動追跡防止機能(トラッキングプロテクション)を導入した。
ただし、この機能をオンにすると行動追跡に基づいたウェブページのコンテンツが表示されなくなる。そのため、デフォルトではオフになっている。必要性を感じるユーザーは、オプションメニューから設定することになる。なお、行動追跡防止機能はIE9だけでなく、ChromeやFirefoxの次期バージョンでも採用される予定になっている。
ウェブ標準との互換性やレンダリング性能が向上
IE9βの時点では、CSS互換性テスト「Acid3」のスコアが95%と、100%の互換性にはまだ足りなかった。また最新のHTML5や、ベクターグラフィックス標準仕様である「SVG1.1」などの互換性も100%とはいかなかった。特に最新規格であるHTML5やSVG1.1などは、IE9βがリリースされた頃にはまだ互換性テストのためのウェブページやスクリプトなどが用意されておらず、どの程度仕様を満たしているのか、ユーザー側ではまったくわからなかった。
しかしIE9βがリリースされた後に、HTML5やSVGの互換性テストが整備されてきた。それにともない、IE9のウェブ標準に対する互換性も一層向上してきた。IE9 RCではHTML5が「99%」とされているが、SVGやCSS3、DOM、JavaScriptなどの互換性テストでは「100%」をクリアしている。これはIE9のライバルとなるChromeやFirefoxと比較しても、非常に高い互換性を持つウェブブラウザーといえる。
レンダリング性能に関しては、IE9βでGPUサポートやJavaScriptのマルチコア対応などが実装されたことで高速化されていた。IE9 RCではチューニングが進められたほか、HTML5やSVGでのGPUサポートを拡大することで、さらに性能が向上している。なお、ベンチマークテストに関しては、次回でChromeやFirefoxなどと比較して行なう予定である。
正式リリースは4月の「MIX11」か?
IE9 RCがリリースされたことで、次はいよいよ正式版のリリースとなる。現時点の予想では、4月11日から米国ラスベガスで開催されるマイクロソフトのウェブ開発者向けのイベント「MIX11」で、正式版が公開されるのではと言われている。
またIE9関連のトピックとしては、2月14日からスペインのバルセロナで開かれた携帯電話関連展示会「Mobile World Congress 2011」の基調講演にて、マイクロソフトCEOのスティーブ・バルマー氏が、Windows Phone 7にIE9を移植すると発表している(関連記事)。
Windows Phone 7用のIE9は単なるサブセットではなく、GPU機能などをすべて備えたフルセット版になるという。これにより、スマートフォンでのウェブブラウジングも、表示性能が大幅に向上するだろう。移植はすでに開始されており、年内にもWindows Phone 7版IE9がリリースされる予定になっている。
このように、IE9はマイクロソフトにとって重要な戦略プラットフォームとなっている。今後は、HTML5で高度なリッチコンテンツを表示できるIE9が、インターネットだけでなく、スマートフォンをも大きく変革させていくかもしれない。

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