Silverlightは死なず? Version 5が発表
2010年12月に米国のマイクロソフト本社で開催された、RIA(リッチ・インターネット・アプリケーション)プラグイン「Silverlight」関連のイベント「Silverlight FireStarter」にて、次バージョンとなる「Silverlight 5」が発表された。
発表と言っても、正式版はおろかβ版さえ現時点ではリリースされていない。そんな時期に発表したのには、Internet Explorer 9(以下IE9)がHTML5に対応したり、JavaScriptの性能向上やウェブブラウザー自体のGPU対応を進めるなどにより、Silverlightがカバーしている分野と重複してきたことが背景にある。そのため開発者などから、「HTML5が普及すれば、Silverlightはなくなるのでは」と噂されていたからだ。
このイベントではこうした噂を払拭し、マイクロソフトが今後もSilverlightに継続的に投資をしていくことを明らかにした。マイクロソフト開発部門担当副社長のスコット・ガスリー氏は、このイベントで以下のように述べている。
ガスリー氏「SilverlightとHTML5は競合するものではなく、互いに補完していくと思います。確かにHTML5は、SVG(ベクターグラフィック)やCanvas、ビデオ再生など、Silverlightと同じような機能をサポートしています。また、HTML5をサポートしたIE9では、GPUアクセラレーション機能により、性能も大幅に向上しています」
「しかし、HTML5だけでは実現できない機能もあります。例えば有料のビデオストリーミングは、DRM(Digital Rights Management)によって、コンテンツを保護する必要があります。SilverlightにはDRM機能が用意されているため、きちんとコンテンツを保護できます。しかし、HTML5ではビデオタグがサポートされているだけで、ウェブブラウザー上でビデオ再生はできますが、DRM機能はサポートされていません。これでは多くのコンテンツ制作者は、HTML5ベースでビデオ配信ビジネスを行なおうとは思わないでしょう」
Silverlight 5の新機能は?
ビデオ関連機能の改良が目を引く
Silverlight 5の新しいビデオ関連機能としては、H.264のHDビデオ再生時におけるGPU利用が挙げられている。この機能により、パソコンではHDビデオの再生が、CPUパワーをほとんど使わずに可能となる。
また現在のSilverlightでは、ビデオ再生時の倍速再生機能などはサポートされていない。しかしSilverlight 5では、自動的に音声ピッチを修正する機能(トリックプレー)をサポートすることで、倍速再生時でも音声がきちんと聞き取れるようになるという。
これ以外にも、Silverlightでのビデオ再生中に、スクリーンセーバーが起動したり、パソコンが自動的にスリープに入ることを禁止できるようになる。これにより、映画などのコンテンツを見ているときに、勝手にスクリーンセーバーが動いて鑑賞を中断するはめになることもなくなる。また新しく、リモートコントロール機能がサポートされた。この機能はリモコンデバイスを使って、Silverlightのビデオ再生をコントロールすることが可能になる。
こうして新しく追加されるビデオ関連機能を見てみると、将来的にSilverlightをフレームワークとして利用する、デジタル家電などを計画しているのかもしれないと思えてくる。例えば、Apple TVやGoogle TVに対抗する製品を考えているのかもしれない。

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