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西田 宗千佳のBeyond the Mobile 第60回

iPadに始まりMacBookに終わる? 2010年のモバイルPC

2010年12月16日 12時00分更新

文● 西田 宗千佳

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性能充実のメインストリーム
Sandy Bridgeでさらに進化か

Core i7/i5の登場は、モバイルノートの快適さを大きく進化させた。左は「Let'snote S9」、右が「VAIO Z」

 他方で、メインストリームのモバイルノートでは、「Core iシリーズへの移行本格化」がポイントだろう。

 特に、Core i7/i5がメインストリーム・モバイルに搭載されたことで、バッテリー駆動時間と処理能力のバランスが大きく変わった。「Let'snote S9」や「VAIO Z」などは、パワーがあるのにバッテリーも長持ち、という「メインでバリバリ使えるモバイルノート」に進化している。Core 2 Duo全盛の時代に比べると、明らかにスピードと消費電力の両面で改善が見られ、技術刷新の度合いをはっきりと感じられた。

 そして2011年は、1月に「Sandy Bridge」系の新アーキテクチャーCPUが登場する。Sandy Bridgeでは内蔵GPUが大きく進化することと、3次キャッシュがより活用できるアーキテクチャーへと変更されることから、メインストリーム・モバイルのプラットフォームも大きく様変わりすることだろう。

 2010年のメインストリーム・モバイルノートは、非常に満足度の高い製品が多かった。だがそれは「モバイルノート」の範疇で見た場合だ。特にGPU性能を含めた「パソコン全体としての評価」では「もうひと声速度が欲しい」と思うのも事実だった。それがSandy Bridge系になってどう変わるかが気になる。

 逆にいえば、グラフィック性能の面で不満を感じることが少ないビジネスモバイルにおいては、実効性能やバッテリー駆動時間といった「製品セットとしての進化」をどこまで感じられるものになるかに、注目したいところである。

ネットブックは退潮
差別化ポイントは「性能以外」に

 満足度の高いメインストリーム・モバイル機が多かった一方で、いまひとつ元気がなかったのが、低価格帯の製品だ。特にネットブックは、2009年に比べてはっきりと退潮傾向にあったといえる。連載で取り扱った製品が減ったこともあるが、本質的な性能面での進化が乏しかったのも気になる。2010年後半にAtomはデュアルコアCPUへと変わったが、それによる性能向上は限定的なもので、既存のネットブックの粋を出るものではなかった。

 「VAIO P」のように完成度を高めた製品も中にはあったが、日本メーカーの作るネットブックは今ひとつピリっとしなかった。他方でASUSTeKのネットブックは、「パソコンは性能ではなくファッション性で選ぶ人」に商品性を絞った印象があり、キャラクターがはっきりしていた印象が強い。製品のクオリティーも高く、低価格製品でも「所有欲」を強く刺激する。「Eee PC VX6」はその象徴的製品であったといえる。

ASUSTeKは、低価格ながらも所有欲をそそるネットブックをリリースしてきた。「Eee PC VX6」はその好例

 2011年も、ネットブックの価格帯の製品に需要があることは間違いない。はたしてどんな進化を見せてくれるだろうか。

MacBook Airで常識が変わるか?
作り込み重視の製品登場を期待

MacBook Air

2010年を代表する低価格モバイルと言えば、「MacBook Air」こそが真打ちであろう

 低価格なモバイルノートというジャンルでは、最後の最後に登場してすべてを持って行った感があるのが「MacBook Air」だ。

 フラッシュメモリーに特化した設計であることを除けば、CPU性能にも特質すべきところはない。だが、バッテリー駆動時間的にも動作速度的にも、より上位にあるメインストリーム・モバイル機に負けない快適さを備えていた。

 おそらく、高速なSSDを備えたメインストリーム・モバイル機ならば、MacBook Airに負けない快適さを実現することは可能だろう。だが、ちょっとしたドライバーやOSの最適化の差が、「8万8800円でも満足感の高いハードウェア」を作り上げられることを証明した。

 フラッシュメモリーの価格が下落傾向にあるうえ、MacBook Airがひとつのコンセプトを示したこともあって、おそらく2011年には、SSD搭載機がより多くなることだろう。元々、超小型機や高性能機ではSSD搭載率が高かったが、その流れは比較的安価で販売数量の多い製品にも広がっていくことだろう。

 「作り込みによる高速化」はMacBook Airだけの専売特許ではない。Let's noteでは起動時間短縮のためにブートプロセスを見直す設計が行なわれているし、同様のアプローチを導入している企業はほかにもあるようだ(関連記事)。

 2011年は、CPUやチップセットなどのプラットフォームがガラリと変わる年でもある。だが、モバイルノートの価値向上のために、細かく設計を見直す時期にもなるのではないだろうか。高いパソコンはなかなか売れにくくなっている。価格を抑えつつ速度を上げることにも、設計見直しによる体感速度・バッテリー駆動時間の最適化は有効だろう。その結果、アップルに負けない日本企業らしいモバイルノートが登場することになれば、うれしいのだけれど。

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