10日、シャープは満を持してメディアタブレット「GALAPAGOS」を発売した。電車内で電子書籍などを読むのにぴったりな新書サイズの5.5型モバイルモデルと、見開きで雑誌を読むこともできる10.8型ホームモデルという2種類のラインアップ。日本の電子書籍業界に新たな価値を投じる製品として、大きな注目を浴びている。
一方でシャープといえば、1990年代に登場し、電子手帳・PDAの市場を大いに盛り上げた「ザウルス」シリーズを思い浮かべる読者も多いはず。GALAPAGOSシリーズでも使用するXMDF(電子書籍用フォーマット)はこのザウルスで培われたものであった。GALAPAGOSには、そんなザウルスの経験が多く盛り込まれているに違いない。
そこで編集部では、緊急座談会を企画した。参加メンバーはまず、PDAの歴史を長く見てきて、しかも電子書籍に関するパネルディスカッションや委員会に数多く出席しているアスキー総合研究所所長の遠藤諭。加えて、ニフティのPDAフォーラム管理人として歴代のザウルスを愛用してきた藤田実氏(通称:みのたん)。さらにザウルスチームの一員として、かつてシャープで「スペースタウン」などのコンテンツ企画運営を担当してきた鎌田慶一氏(現在はウェブでシャープ製品のPRを担当、みのたん氏とは10年以上前からの旧知の仲)という3名だ。
そうして座談会を進めると、GALAPAGOSの源流にザウルスの姿が見えてきた。
10年以上前にあったGALAPAGOSのコンセプト?
── まずは電子書籍端末の現状について簡単に振り返ってみたいと思います。
遠藤 デジタルコンテンツというと、今までは動画や音楽にスポットライトが当たっていたでしょ? こういったコンテンツの中でもリッチなものが一巡して、最後に来たのが電子書籍。単に紙がディスプレーに置き換わっただけじゃないかという人もいるけど、僕は「そうじゃない、歴史的な転換期が来た」と考えています。
もちろん文字のデジタル化はウェブサイトとして伸びているけど、それは従来の出版物とは違います。フローというか、日々更新されていくものですから。
例えば、グーグル、アップル、アマゾンという米国のIT業界で一番フックの効いた会社がいずれも電子書籍にフォーカスを当てている。それぐらい電子書籍は注目されている。この注目度の高さはすごく意外で、ショックを受けている。
藤田 僕は最初にGALAPAGOSの話を聞いたとき、昔(1995年ごろに)シャープが制作したプロモーション映像のことが頭に浮かんだんです。当時、幕張のシャープのショールームにザウルスのファンが集まってオフ会をやりました。そのときに液晶の未来像として流されたものの1シーンです。
内容は確かおじいさんと孫娘がタブレット端末で新聞を見ていて、大きな画面に指で触れたりしながら、紙面の写真をダイナミックに動かすというものなんですが、それがずっと印象に残っています。
その後、映画『ハリーポッター』でも、似たような新聞の写真が動くようなシーンが登場しました。そして「シャープがあのとき考えた世界が、映像表現にも入ってきてるんだな」って感じたのです。GALAPAGOSが感銘深いのは、その未来像が「現実社会にもようやくやってきた」という実感があるからです。