シンプルだが「進化する端末」を目指す
── そんなGALAPAGOSですが、仕様を見た限り、電子書籍に注力し、ほかのスレート型端末に比べるとかなり機能が絞られている印象を受けますが……。
遠藤 そこに関して僕はちょっと違う感想を持っていますね。今のケータイやスマートフォンは「あれもこれもできる」をやってるけれど、読書端末はあえて逆の方向を狙ったほうがいいんじゃないかとさえ思っています。情報端末の役割は彼らに任せて、読書と手帳ぐらいに絞ってみるというのもアリかなと。
特に5.5型の方は、手帳を置き換えるチャンスがあるような気がする。現状でも薄いですが、これから世代を重ねるごとにどんどん薄くなって、紙の手帳とボリュームが逆転するときが来る。素材も普通の手帳に近いものを選べばいい。つまりデジタルモードに頭を変えなくても触ることができる、ITに関係ないオジサンとかでも使える、より一般性を持った端末が生まれる可能性があるわけです。
藤田 今日ココで実物を触ってみると、サイズがいいと思いました。5.5型は上着に入れるのにちょうどいい大きさです。あと海外製だと忘れられがちな、ストラップホールも付いてる。
遠藤 僕は5.5型の方に付いてるトラックボールが気に入った。これで日本語のフリック入力ができるといった進化があってもいいですね。常にボールの場所が固定されているので、タッチパネルより覚えやすいと思います。
鎌田 本体サイズはGALAPAGOS開発チームがこだわった部分です。それこそ100種類ぐらいサンプルを用意して最適なものに絞り込みをしたと聞いています。
機能に関しては、商品を企画する上で「あれもこれもできる」は止めて、電子書籍に絞ろうと考えました。ただ、最初はシンプルでも「進化する」端末を目指した。アップデートでユーザーニーズに応えていきたい。端末の方向性は、メーカーだけで決めていくのではなく、ユーザーと一緒に踏み固めていきたいんです。
藤田 個人的には「ザウルスのエミュレーターが欲しいな」なんて思ってしまいます(笑)。ザウルスのスケジュール機能やメモ機能は今でも十分に通用すると思うし、あれ以上のものを探すのは難しい。昔のソフトで権利的にもOKなものが動作するなら、ザウルスユーザーが飛び付くと思いますよ。
遠藤 ザウルスの匂いや、遊び心を入れて欲しいな。GALAPAGOSは、もちろんシャープのワールドワイドな戦略商品だけれど、日本人が作っている端末なので、ユーザーからの叱咤激励をしっかり受けて努力して進化させてほしいと心から願います。
電子書籍のルーツはザウルスにアリ
── GALAPAGOSの企画はいつぐらいから始められたんでしょうか? 奈良のザウルス開発部隊からも多くの方が参加していると聞いていますが。
鎌田 およそ2年前にスタートしています。今回、端末作りを指揮したのは、ザウルスの「MI-E1」で商品企画を担当した松本氏(現在GALAPAGOS開発チーフ)です。ちなみに開発コードは二宮金次郎からとった「Kinjiro」といいます。
藤田 MI-E1といえば、2000年の発売で、縦持ちで使えるハードウェアキーボードが付いていたアレですよね(関連記事)。動画が見れて、音楽も聞けるという、今のスマートフォンの姿を、当時から実現していた。
── ザウルスは早くからカラー液晶や通信機能を備えて、動画や音楽などにも積極的に取り組んでいた印象がありますね。
藤田 海外製に比べれば、ずいぶんと先に行ってた印象がありますね。通信はもちろんだけど、動画の対応も早かった。MI-E1と一緒に発売されたMPEG-4レコーダーなんかは、世間が「MPEG-4って何?」って話していた時期に、独自のコーデックで他社に先駆けて製品化されたものですよね。今でもサイトからコーデックを落とせば、Windows Media Playerで再生できますけど。
鎌田 シャープにMPEG-4の研究開発をしていた方が入社したことで、ザウルス部隊以外からも、インターネットビューカムといった製品が登場したんです。ドコモが発売した「eggy」もシャープが作ったものでした。発売当時、開発した部隊にいる人間たちは「これからは動画投稿の時代がくる」と言っていて、動画投稿サイトを作るんだと意気込んでいたんです。そして、気付いたらそういう時代が来てしまった。
遠藤 シャープは昔から「液晶を未来の紙にしたい」ということを言ってたよね。「薄く」「軽く」「きれいに」と突き詰めていった先のひとつに、電子書籍があるという考え方。文字をきれいに見せるということにもこだわっていて、解像度を低い中で読みやすくするために、液晶表示用の「LCフォント」を独自に開発した。これは他社の携帯電話にも採用されて、高い評価を受けたわけだけれど。