アマゾンが提供する「元祖」パブリッククラウド
進化を続けるAmazon Web Services
2010年09月30日 06時00分更新
アマゾン・ドットコムが提供するAmazon Web Servicesは、現在注目を集めているパブリッククラウドサービスの代表的な事例の1つだ。仮想的なCPUやストレージなどの計算機リソースをベースに、ビジネスに必要な情報サービスからなる複合的なクラウド事業を展開しており、現在も次々に新しい機能やサービスを追加している。
※この記事は弊社刊行「ASCII.technologies」2010年6月号の特集1「クラウドへの扉」の一部を抜粋したもので、2010年4月の時点の情報に基づいています。なお、最新のASCII.technologiesはオンラインショップおよびお近くの書店でお求め下さい。
Amazon Web Servicesの歴史と概要
ご存じのとおり、アマゾンは書籍や雑誌をはじめとする、さまざまな商品をオンラインで取り扱うeコマース企業である。いまではオンラインショップ最大手となったアマゾンだが、同社はSaaS(Software as a Service)やクラウドコンピューティングが注目を集める前からWebサービスやAPIを提供していた。
アマゾンがオンラインで販売している商品情報へのアクセスをWebサービス化し、第三者にサービスを提供しはじめたのは2002年のことである。Webサービスのメッセージングプロトコル標準であるSOAP(Simple Object Access Protocol)や、HTTPをベースとした軽量なプロトコルREST(Representational State Transfer)のインターフェイスが公開された。
これらのサービスは「Amazon Web Services(AWS)」と名づけられ、開発者や企業に対してWebサービスのプラットフォームとして提供されるようになった。以来、サービスは拡充され続けており、現在は表1に示す各種サービスとAPIから構成されている。なお2010年1月には、AWSの日本法人「アマゾンデータサービシズジャパン」も活動を開始している。
AWSを中心とするエコシステム
多くのサービスのなかでAWSの中核的な部分を担っているのは、大容量のデータストレージ環境を提供する「Amazon S3」、データベースサービスである「Amazon SimpleDB」、仮想的なサーバー環境を提供する「Amazon EC2」だ。これらは、ネットワーク上に存在するストレージや計算機リソースを、その物理的な場所に関知することなく必要な量と必要な時間だけ使えるという、クラウドコンピューティングの特徴を端的に示すサービスである。
また、新興企業やほかの通販業者の企業活動に有用な支払い・課金、eコマースに関するサービスや有料サポートも提供されている。これらも含め、AWSでは図1に示すような多くのサービスと計算機リソースを提供する。さらに、毎月のように新サービスや機能拡張のアナウンスが行なわれている。
AWSの大きな特徴の1つは、こうした多様なサービスをベースとして、さらに付加的なサービスを提供するベンダーが多数存在し、一種の「エコシステム」が形成されている点にある。そして、それらのベンダーが提供している機能を逆にAWSが採り込む形で機能拡張がなされているのだ。
AWSのサービスは適用分野ごとに、以下のように分類することができる。
- 計算機リソース
- ストレージ
- データベース
- メッセージング
- コンテンツ配信
- 仮想プライベート
- クラウド運用管理
本稿では、この分類にしたがってAWSの各サービスの概要と技術的な特徴を解説していくことにしよう。
(次ページ、柔軟性に富んだ計算機リソースの提供)

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