CPUを世代交代
バッテリー動作時間はそれでも「10時間オーバー」
さて、今回のS9の最大の特徴は「CPU」と「バッテリー動作時間」の関係だ。以前紹介したS8は、レッツノートとしては初めて「通常電圧版」のCPUを採用した製品、ということで大きな価値を持っていた。S9世代ではCPUが、Core 2系からCore i系に進化している。店頭販売モデル「CF-S9LYFEDR」の場合、CPUにはCore i5-560M(2.66GHz)を搭載、今回試用したマイレッツ倶楽部モデルでは、さらに上位のCPUであるCore i7-640M(2.80GHz)を搭載している。
動作に関しては、もはやモバイルというレベルではなく、完全にメインマシンの域だ。Windowsエクペリエンスインデックスの値は「3.5」ではあるが、これはグラフィックスが劣っているため。プロセッサーは「7.0」とかなり高い。Windows 7における最高値は「7.9」だから、もうすぐ天井だ。実作業中の速度でも、不満を感じることはほとんどなかった。
発熱も感じにくい。元々SシリーズはS8の時点でも、排気口に直接手を触れない限り、動作時の熱を不快に感じることはほとんどなかった。その伝統は、CPUプラットフォームが変わったS9にも受け継がれている。実際、若干S8から数値の変化はあったものの、発熱の傾向や位置はほとんど変わらず、このモデルの基本設計が非常に優れている、という証拠ともいえる。
他方、大きく変化したのがバッテリー動作時間である。今回、カタログスペック上では「約14.5時間」となっている。S8から唯一低下した値である。だが、最初にCore-i5を採用したS9夏モデルでは、バッテリー動作時間が「約13時間」だった。それが、バッテリー容量を増やすことなく、設計の最適化で14.5時間まで延ばした、ということのようである。
いつものごとく、「BBench」を使ったバッテリーベンチマークテストを行なった。さすがに最長動作時間では、S8より若干落ちる印象があったが、それでも無線LAN動作時で約11時間近く動くというのは、驚愕の値だ。S8のテストとは違い、あえて消費電力の大きい「プレゼンテーション」設定でもテストしているが、こちらでも9時間を超えている。S9はモバイルWiMAX内蔵なので、UQ WiMAX回線を使ってテストしたのだが、「WAN利用下でも8時間以上動く」というのはやはりすばらしい。
BBenchによるバッテリー駆動時間テスト(いずれもパナソニック推奨設定) | ||
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省電力+WiFi | プレゼンテーション+WiFi | プレゼンテーション+WiMAX |
約10時間54分 | 約9時間25分 | 約8時間38分 |
このくらいの長さになると、パソコンの使い方は完全に変わる。少々のことではバッテリーが減らないので、ガンガンと気軽に利用するようになる。携帯電話などの外部機器の充電にまで使うようになるほどだ。実際筆者は、VAIO XやiPadのような「通信しても8時間オーバーのIT機器」で、そういう体験をしている。S9はその環境がローパワーなCPUではなく、フル機能・フルパワーのCPUであるCore i5/i7でも使える、というところに意味がある。
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